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映画『イップ・マン』 ウィルソン・イップ監督 ブルース・リーの唯一の師を描く

映画『イップ・マン』 ウィルソン・イップ監督 ブルース・リーの唯一の師を描く

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 ブルース・リーの人気の凄さは20年ほど前、中米グァテマラで暮らしはじめ、取材で先住民共同体を訪ねたりしたときに思い知らされたものだ。日銭稼ぎの露天にブルース・リーがプリントされたTシャツが並び、「あんたはクンフーを知っているか?」と聞かれたりしたものだ。
グァテマラ人に限らず中米、いやラテンアメリカ全域にいえることだが、この地のごくごく平均的な庶民は東アジア人はみな同じ民族と思われている。みな同じ言葉を話し、複雑怪奇で得体のしれぬ漢字を扱うフシギ民族と。たぶん、ブルース・リーが出現前も後も大して事情はかわらない、東アジア人の認識はその程度のものだが、リーの活躍において少なくとも東アジア人に対して「尊重」しても良いか、というぐらいの“劇的”な変化をもたらしてくれた。それはソニーやトヨタ、あるいはニンテンドウなどが長年掛ってできなかったことを数編の映画によって実現してくれた。
 武勇者の伝説は無限のエネルギーを自ら作り、へラクルスにもなれば牛若丸にもなって永遠の若さを保つ。夭折したブルース・リーは、ラテンアメリカではチェ・ゲバラの変種としてヒーローになっているように思った。
 ブルース・リーが強いなら、その師はより高きところに鎮座してもらいたい。精神性においてもわがヒーローを超越していなければならない、と外野の勝手な思いは増幅する。はたして、師たるイップ・マン(詠春拳)は……事実、強かった、そして品格も優れていたと語るのが本作である。
イップ・マンは中国南部の広州仏山の出。町の中心に中華風庭園のある寺院を中心にして増殖した町だ。一度、訪れたことがある。その時はまさかブルース・リーの師匠の出身地とは知らなかったから、大した感慨も抱かずに通り過ぎた。なんだかもったいないような思いを、この映画をみておぼえた。
この武術イップ・マンという達人はいかなる場であっても沈着冷静、静かなたたずまいのなかに無限の活力を秘めた格闘家であった、と本作は力説する。しかし、そのたたずまいは耐えて自重し、それ以上、耐え忍べば人間の本性まで侵されると感得したときに解き放つ怒りの暴放というリー映画のパターンを踏襲しているようで、そのあたりはハテ真実か、と疑いもする。
リー映画は静から動へ、暴放から沈静~終息へ、との変奏に様式美をもっていた。その対極がジャッキー・チェンである。彼のサービス精神は動から動へと目まぐるしく軽快に軽妙に、ときにドジで笑わせる。香港映画はこの二人の個性によって大いに潤うことができた。
イップ・マンを演じたドニー・イェンもまたリーの感化を得て、その師に近づこうと役作りをしたように思う。格闘家というより書生といった風貌、あるいはシニカルな経綸家といった風情で、いささかも厳(いか)つくない。それもまたリーに似ている。
 映画でリーの武術がイップ・マンから出ていることをはじめて知ったが、なんでもリーが唯一、弟子入りしたいと門を叩いた師匠ということで、その修業時代の写真も登場する。
 イップ・マンの評伝映画にちがいないが、そこはクンフーを食材としているからアクション・シーンに大いなる魅せ場を用意している。ジャッキー・チェンの映画もそうだが、香港・中国のその手の映画の殺陣はまったく見事。なにが見事といえば、よくまぁこれだけ途切れずアイデアが出てくるものだという感嘆である。次から次へと新種のアクションを考案するものだという感服である。それはもう畏敬の念というものに近い。最近はタイの映画界も伝統武芸をスクリーンに展開させ、かなり頑張っている。その伝でいえば、日本映画はやっぱり剣劇、チャンバラで魅せないとダメなのだ! やはりクロサワはその意味では天才であったのだ。『七人の侍』を超す大殺陣をクライマックスとする映画はまだない。
でクンフー・アクションを魅せ場として構成すれば、ドラマの部分はいささか凡庸になってしまうのが、この手の映画の欠点だが、さりとて活劇シーンが冴えないと批評にもならない。という意味において及第点をあげたい。
 イップ・マンの修業時代は日本軍が中国大陸各地に侵攻し、蛮行を繰り返していた時代だ。その犯罪が祖父世代の蛮行であったとしても、やはり日本人として「罪障感」が疼く。それは中国映画をみるときに強いられる税金のようなものだ。韓国や台湾、フィリピンの映画にはその手の描写は少ない。そういうところはやはり社会情勢が反映するものなのだろう。思えば、クンフー映画はリー健在の頃から日本人はいっかんして悪役である。イップ・マンからブルース・リーの世代に引き継がれ、いまも野太く連鎖している中国人の日本観であることに気づく。歴史は変えられない。

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