スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

インタビュー キャリー・ジョージ・フクナガ監督中米から米国入りする移民たちの悲哀をリアルに描く~映画『闇の列車、光の旅』

 昨年、中米諸国のオピニオン紙のホームページを読んでいるとき、幾度も本作が話題になっていることを知った。配給会社提供の予告編も観ていた。ホンジュラスから米国へ不法越境する少女とメキシコ南部を縄張りとするギャング団の少年の逃避行を描いた、いわゆる社会派映画。それから数ヵ月後、機会に恵まれ監督にインタビューすることになった。秀作である。
フクナガmini
(写真:上野清士)
 原題はSin Nombre。名無し、姓名不詳といった意味だがメキシコや中米でそれをいうとき市民たちがまず最初に思い出すのは米墨国境、それも南のメキシコ側にたつ無数の墓標だろう。米国に不法越境しようとして命を落とした中南米人、彼・彼女、子どもも多い…たちは本姓を示す書類などいっさい持たず非業の死を遂げた。したがって遺族はその死すら知らない。「行方不明」としか言えない存在のまま何時しか家族の記憶すらあいまいになり、やがて消滅する。
 「私がメキシコ側の国境でそれをみたときはショックでした。姓名不詳者の多さに愕然とした。それがこの映画を撮ろうと思った原点です」
 ホンジュラスの首都テグシガルパに住む少女サイラ(パウリナ・ガイタン)は米国へ不法越境して入国した後、強制送還された父と一緒に困難で危険な旅にでる。グァテマラの国境の町からメキシコ側のタパチュラヘ。そこから貨物列車の天井に乗ってひたすら北上をつづけるのだ。メキシコは日本の五倍強の国土を持つ、その長旅を振り落とされないように越境者たちは身体を寄せ合い助け合いながら炎天下、あるいはスコールに打たれながら北上するのだ。
 「私自身、映画のために実際に列車の屋根に乗って旅をしました。そこで多くの越境者と知り合うことができましたし、サイラのような少女とも出合いました」
 監督の体当たり的な取材は映画にドキュメンタリーな臨場感を与えている。撮影も困難だったことは想像に余りある。
「そう、一度で決め撮りしなければいけないことが幾度もありました。その分、緊迫したシーンを撮れたと思っていますし、俳優さんたちも期待に応えてくれました」
 少女サイラに絡むのがタパチュラのギャング団の下っ端カスペル(エドガー・フロレス)。映画では具体的な年齢は示されないが20歳前後という設定だろう。学歴はもとより手に技術もない青年がまともに仕事にありつくことなどできないのがメキシコ社会の現実。それでも生きてゆかねばならない。まとまった金が欲しければ悪の道に踏み込むしかない。カスペルはそうして落ちていく。しかし、根は悪人ではない。人殺しを止むなくするとき、彼は自分も傷つき荒廃してゆく。そんなナイーブさもあわせもつ。カスペルの陰影はかつて70年代の米国のニューシネマにさかんに描かれた病める青年像のラティーノ版という気もしてくる。そのカスペルを演じたのはホンジュラスのエドガー・フロレスで本作に関わるまで演技というものを学んだことはなかった。
 「カスペルは映画をカナメのような存在でしたから最後の最後まで誰に演じてもらうか悩んだ。最終的にエドガーを選らんのですが、彼はよく私の意図を理解して素晴らしい演技をしたと思っています」
 撮影終了後、エドガーは母国ホンジュラスのテレビ界ですぐ活躍しはじめたという。
 「米国では不法越境者のことを知っていてもどういう経路で国境を越えるかしりません。国境の川を渡ってくるとか、砂漠を横切ってくるといったイメージがほとんどで、それまでのドラマというのを知らない。私は米国の映画人として、そこをきちんと描きたいと思ったのです」
 それは成功した思う。エドガーもサイラと一緒に国境の川を越そうとするが非業の死を遂げる。かれもまた国境地帯に果てた「姓名不詳者」の末尾に記載されるだけだ。 こうした現実はいま世界各地で実際に起きていることだ。
 「列車で移動する越境者を取材する過程でホンジュラスから来た少女二人と知り合った。列車では危険だからとバスに乗せました。そのひとりはいま、米国への越境に成功し美容師として働いてます。そうした越境者と話をしていて知ったのですが、米国での生活も甘くない。米国入りに成功しても思い通りの生活なんてそうそうできるわけがないと醒めた目でみています。それでも国を捨てていかなければならない母国の苛酷な現実があるということです」
 映画で具体的に語られるわけではない。しかし、列車の屋根に群れなす中米出身者の存在そのものが現代のラテンアメリカ社会を批評しているだろうし、そこにグロバリゼーションの矛盾といったことを象徴してみることも可能だろう。
 「いまチアパスの鉄道はハリケーンの被害で不通になった。それでも越境者たちは後を絶たない。なんとか北上し、メキシコ市まで出てバスを乗り継ぎ、さらに北上をつづけるというコースになっています」
 それは逮捕されることの多い越境者にとってリスクの多い〈旅〉だが、やらざる得ない。
 ハイチ、アルゼンチンの大震災でまた越境者は増えてゆくに違いない。いまハリウッドもメキシコも、あるいは西欧諸国の映画も越境者を主人公にした作品がとても多くなった。国境が溶解しているのではなく、原稿の経済システムの矛盾が途上国にもっとも辛くしわ寄せされているからだ。 
闇の列車、光の旅m

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

上野清士

Author:上野清士
店長の最新著書

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。