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『千年の旅の民』を書いた木村聡さん

『千年の旅の民』を書いた木村聡さん
   ~ロマ(ジプシー)をカメラとペンで追い続け
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 『千年』とは、ロマ族(ジプシー)の流浪の歳月を指す。
 彼らの祖先はインド北西部で遊牧生活を送っていた。そのなかの一群がなんらかの理由で西へ向かって旅に出た。それから一千年を月日が流れた。
 しかし、その流浪の旅路を足跡をつまびらかに知るものは誰もいない。彼らは文字をもたず自分たちの歴史を遺すこともなかった。そんなロマに木村さんは興味を持った。
 「90年代にボスニア内戦の取材をしているなかでロマの窮状を知り、内戦を取材するとき彼らの視点も必要ではないかと思った。そしてロマの集落に入り、彼らの言葉を学んでゆくうちに取材対象が広がった」     
 本書の主要部は旧ユーゴスラビア連邦の崩壊によって生まれたバルカン諸国、そしてかつて東欧と呼ばれた国に住むロマに捧げられている。これまでボスニア内戦の悲惨な状況は多くのルポや写真よって詳細に語られてきたし、内戦を描いた映画は何本も公開されている。内戦で心身に傷を負った人たちの〈現在〉を追う映画も制作されている。しかし、その地に住んでいるはずのロマは無視されてきた。旧ユーゴには約80万のロマが暮らしていた。
 「ロマは内戦の当事者ではない。しかし、彼らはどこでも迫害された。知られていない事実だが、徴兵されたロマの男たちも多い。自分たちに関わりない民族紛争で戦い、死んでいった者もいるということだ」
 現在、ロマは全世界に1500万から2000万が暮すといわれるが実数は不明だ。非定住の民族だから行政の手が届きにくい。ロマたちも行政機関を信用せず、その束縛を受けたいとは思っていない。
 「ロマの流浪の一千年とは、人間は国を持たずとも生きていける、ということの証明です。民族のプライドも損なわれていない。そういう強さをもっている。国益とか国境紛争といったことに無縁に生きることは平和なことで、それを身をもって体現する。ヨーロッパ人はそうしたロマを密かに怖れ、その反動として差別したのではないか。そして、したたかなロマは、その差別を逆手にとって稼ぎ生きてゆく」
 本書のなかに、こんなシーンがある。
 〈いつもは質素で小ぎれいな格好をしているのに、今日は見た目にみすぼらしい衣服に彼女は着替えた。(中略)「このほうが町で歩きやすいし、買い物をしやすい」から〉
 私自身、スペインやコーカサス諸国、中央アジアで、あるいはメキシコで物乞いのロマの婦人、子どもたちにあった。みな服装はみすぼらしかったが、あれも「衣装」かも知れない。みな立ち振るまいが自然で、さもしさというものには無縁だった。
「あなたは自分の国からここ来た。そんな旅ができるほどお金をもっている。私に小銭出すのは当然だ」といわんばかりの堂々とした態度は説明しようがない。
木村さんは写真家である。まず写真ありきだ。
 「この本は、収録されている写真の長い解説だと思ってください。だから、写真一枚一枚に説明はありません」と。そう最初に言っておかねばいけなかった。写真が素晴らしい。印刷のクオリティもすこぶる高い。 *新泉社刊。2500円。
 

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