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富める国のユタカな矛盾、貧しい国で生命が脅かされる矛盾「リアル! 未公開映画祭」

「リアル! 未公開映画祭」
~富める国のユタカな矛盾、貧しい国で生命が脅かされる矛盾

≪昨年の暮れに書いたものだが、内容は“現代”を鮮やかにルポルタージュされた作品ばかりだった。すべて、DVDでも発売されているので、その紹介にもなるのでブログに採録することにしました。≫


 ドキュメント・フィルムが商業館のスクリーンになじまないのは仕方がない。志をもつ館主といえどもカスミを喰ってはいけない、従業員の生活がかかっている。集客がのぞめないフィルムはいつしか上映される機会もなくオクラ入りしてゆく。今回、「未公開映画祭」で紹介される作品9本はみな現代社会の雄弁な照り返しだ。「リアル!」と冠詞があるように、これが「旬」だと主催者は自負する。世界の現実、直視せよ、と提出した。
上映9作のうち7本が2008、09年に制作された新作といっていい。とても全作を詳細に語るスペースはないので筆者の関心にそって紹介したと思う。
まず本誌(月刊『ラティーナ』)の関心領域に沿って取り上げれば筆頭は、南米エクアドルのアマゾン地帯における油田の開発、生産によってもたらされた大規模な環境汚染を告発した『クルード~アマゾンの原油流出パニック』(ジョー・バリンジャー監督/2009年)となるだろう。
「アマゾン・チェルノブイリ」と呼ばれるほど大規模な環境破壊を米国の石油メジャー・シェブロンが引き起こした。シェブロンはむろん、自社の操業は環境を汚染しないように万全の態勢で取り組んだと主張し、アマゾンに住む先住民たちの告発を一蹴する。その先住民の先頭に立って闘うエクアドル人弁護士パブロ・ファルハルドを通し、訴訟の推移を追いながら環境汚染の実態を語ってゆく。9作のなかでもっとも地に這い、数年に渡って取材が試みられ、取材地域も広範におよび誠実さにあふれている。もっともシェブロン社は敗訴しても〈ねつ造〉というだろうが。110128Crude_filmstill.jpg

貧しく法律にも無知な先住民たちは汚染地域に住みつづけ、その子どもたちは病んで死んでいった。彼らには汚染と死の因果関係を調査する能力はない。泣き寝入りしつづけた。そこに地元出身で、かつてシェブロンの油田で働いたことのあるファルハルドは、このままほっておくことは良心が傷つくと一念発起、不退転の決意で刻苦勉励し働きながら大学に進み、法律を学び、弁護士の資格を取った。そして、シェブロンを告発するため先住民に対して啓蒙活動を開始し、集団訴訟を起こす。ファルハルドの物語として語っても説得力のあるフィルムは出来上がっただろう。しかし、これ以上の環境汚染、先住民の健康被害を拡大させないという第一義の目的がファルハルドの物語をサブ扱いにするが、その存在の重さは作品に奥行きを与えている。
多国籍企業の大半は商業的に利すると考えなければ、辺境になど進出し操業することはありえない。そして、より多くの利潤を生み出すため、その地の環境・文化など無視する。法で規制されたギリギリのことしか履行しない。不正を隠ぺいできるなら、法の網の目を潜り抜ける。この映画では経済活動のグロバリゼーションの矛盾を見出し、その典型的な多国籍企業の“犯罪”として、「アマゾン・チェルノブイリ」の現状を告発する。
『フロウ~水が大企業に独占される!』(イレーナ・サリーナ監督/2008年)もまた有限の水資源を独占しようともくろむ多国籍企業の横暴を告発する。
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ここでいう水とは「淡水」、飲料にできる人間の生存に欠かせない唯一無二の存在である。地球は水におおわれた「水球」だ。しかし、飲料に適した水はわずか3%に過ぎない。のこり97%は海水である。その3%を独占しようという水メジャーの横暴を告発した映画だ。
本作に先行する映画に『ブルー・ゴールド』があった。その直系の弟子ともいえる作品だ。水問題をめぐっては今後も世界各地から深刻な状況が報告されることになると思う。それだけ水をめぐる状況は地球温暖化ばかりでなく、有限であり人間の生活に必需という“商品価値”を有するためいま企業は地球大に利潤活動を展開している。その行為を追ったドキュメントだ。
 国境をまたいで企業活動を展開する資本は北の先進国に集中する。その先兵が米国資本ということなる。そのため米国経済は疲弊しているといわれながらも、基本的な物質生活そのものはまだまだ豊かだ。けれど、その豊かさをもってしても、心は安らいでいない。多くの市民が心の慰安を求め、救済されることを待っている。それも真実なのだ。そうした米国社会の寂寞たる状況はマイケル・ムーアのブラックユーモア的な巧妙な語り口で描かれつづけている。
もうけのためなら消費者の健康など無視する荒廃した実態をみつめた作品もある。
医療が「仁術」から「錬金術」になった現状を「出産」を通して告発する『ビーイング・ボーン~驚異のアメリカ出産ビジネス』(アビー・エスプタイン監督/2008年)などは背筋が寒くなる作品だ。
『ステロイド合衆国 ~スポーツ大国の副作用』(クリス・ベル監督/2008年)。筋肉増強剤として知られるステロイドが氾濫、使用が野放図に広がっている危機的状況を検証し、さらに即物的な「強者」のイメージづくりが目的化して、いつしか米国人が目指すべき理想像として奉(たてまつ)るようになり、それが対外政策にも影響を与えているのではないか、と考える。ステロイドだけでなく、さまざまな薬物が野放しになっている現状も語る。アフガニスタンやイラクで展開する米軍兵士のあいだに覚せい剤や、恐怖を緩和するために服用する薬物の話題には事欠かない。steroido.jpg

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キリスト教右派として大きな影響力をもつ米国の福音派教団はブッシュ前大統領の有力な支援組織だったが、その宗教的なドグマをひとつの福音派宣教会が主催した子どもためのサマーキャンプを通して描いた『ジーザス・キャンプ~アメリカを動かすキリスト教原理主義』(ハイディ・ユーイング他共同監督/2006年)は必見だ。こうした教団の内側に入り込んで撮影されたフィルムは貴重だ。原理主義を悪いとも良いとも語っていない。事実をそのまま提出する。考えるのはあなた方だ、という態度だ。それが本作を陳腐な説教臭いものから救い出す。
 他に、脱北者たちの証言を通して北朝鮮の現状が語る『金正日花/ジョンギリア』(N.C.ハイケン監督/2009年)、ウガンダ内戦で6歳のとき少年兵として徴兵され、人殺しの道具として使われ幼くして地獄をみた体験をもつボクサー、カシム・オウマ(IBFジュニア・ミドル級チャンピオン)を追った『カシム・ザ・ドリーム~チャンピオンになった少年兵』(キーフ・デヴィッドソン監督/2009年)も見逃せない。
他に、世界一の巨大軍隊組織がいまもって拘束できない“悪漢”オサマ・ビン・ラディンを、個人的な思いつきから探しだそうと実際に行動を移しカメラをまわしたドン・キホーテ的な愚直かつ真摯な『ビン・ラディンを探せ! ~スパーロックがテロ最前線に突撃!』(モーガン・スパーロック監督/2008年)がある。かつてマクドナルドで食事しつづけると大変なことになるぞ、と自分自身を被験者として告発したドキュメントで一躍有名になった監督の作品だ。イスラム諸国を遍歴しながら、母国の“聖戦”の実態をあぶりだそうとした労作といえるだろう。    
 ▼各DVDは、アップリンクから発売されている。

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