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書評 『ユートピアの崩壊 ~ナウル共和国』

書評 『ユートピアの崩壊 ~ナウル共和国』
   リュック・フォリエ箸/林昌宏・訳
ナウル共和国

 南太平洋の小さな島国ナウル。国連加盟国としてモナコ公国についで小さく、共和国では世界最小とか……。
 車で30分もあれば一周できる国土面積、人口は約1万人。そんな国が世界で一番の富裕国だった時代がある。しかも、その豊かさは尋常ではなかった。常軌を逸していた。1970年代から90年代前半のわずか20年のこと。おとぎ話のような“栄華”があったが、あまりにもはかないものだった。その顛末記が本書のタテ筋。
 主役は、この島国の唯一の資源リン鉱石。太古の昔からサンゴの死骸の上に海鳥が飛来して糞をし、その長大な時間がつくりだした糞の堆積がリン鉱となった。こうした島はペルー、リマ沖にもあって同国経済を大いに潤した
歴史がある。
 ナウルのリンも純度の高い良質鉱、これに目を付けた先進国は当然、資源の独占を巡って覇を競う。
 1968年の独立後、英連邦の構成国と留まった。その関係から、隣国オーストラリアは農業の肥料にと投資を開始する。ナウルのリンがいちばん収益を上げたのは70年代初頭の第一次オイルショックの時代で、年間9000万~1億2000万ドルの可処分収入があった。人口が1万足らずの国にさばき切れない外貨があふれた。政府は島民に、いや国民に大盤ふるまいをはじめた。
 無税、教育・医療費はただ。国外留学費も国費負担。国民は金の使い道に困って、必要もないのに高級外車を輸入し乗り回し、少し調子が悪くなれば買い換える。その車で中国人が経営するレストランに乗りつけ食事をする。国民の大半は自分で調理することも放棄し、伝統食も忘れられた。ナウルは飽食によって国民の多くが糖尿病に蝕まれた。家の掃除まで国が面倒をみるという過度な「福祉」は国民を怠惰の極みに落とし込んだ。そんなことが連綿と報告される。みな事実だから怖い。
 リン鉱という有益な資源が国際市場で高値で取引され、極小国もグロバリゼーションの翻弄されたのだ。ありあまる外貨を適正に、そして資源が枯渇したあとの時代に備えての準備する政治がなかった。独立とどうじにリン鉱
バブルがはじまり、政治が成熟する前に金だけあふれた。政治は腐敗した。それを糊塗するため国民を金で愚弄したのだ。
 現在、ナウルは外国の援助なしではやっていけない国になった。かつて高級外車を満たしたガソリンも、いまは欠乏状態で、停電は常態化。リン鉱の開発で土地はめちゃくちゃにされ農産物の栽培もままにならず、国民は岸辺
で魚を獲って飢えを凌ぐようになった。銀行には金がなく、国民は貨幣の介在しない物々交換で暮らしをやりくりさせるようになった。糖尿病の治療に不可欠な節制が、国の貧困とともに否応なくやってきた。
▼新泉社刊。1800円。
 

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