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時評 チョコレートと児童労働の問題

*2月14日のバレタイン・デー、そして返礼としてのホワイト・デーがあります。いつも製菓業者を潤すだけの悪習だと思っているのですが。
チョコレート展2
 2月14日というのは3世紀、ローマ皇帝の迫害で殉教した聖ウァレンティンヌス(バレンタイン)に因むといわれています。もっとも現在のローマ法王庁はこの殉教は史実ではないとして聖人たちの典礼暦から取り除いています。その殉教ですが当時、ローマ皇帝が禁止していた兵士の結婚を密かにつかさどったことで捕らえられ処刑されたと伝えられたわけです。それが愛を結ぶ日として19世紀後半、イギリスでチョコレートを贈りものにしたというのが今日のバレンタイン・デーの起源だと思います。宗教的な色彩はなく俗化した習慣となったということです。その意味ではキリスト教と縁遠い日本で定着するのも仕方ないといえばいえるかも知れません。
 さきほど製菓業者が儲かるだけと言いましたが、日本でバレンタイン・デーとチョコレートを結びつけたのは戦前の神戸に店を構えていたモロゾフ社とか、戦後は森永製菓、伊勢丹であるとか諸説あって確証はないようですが、クリスマス同様、まったく宗教性を取り除いて日本に“土着化”したことは確かでしょう。返礼のホワイト・デーなどは日本で商業的につくられたものですから、バレンタイン・デーの商業性では日本は世界一の先進国というわけですね。

*チョコレートの原料となるカカオはみんな輸入品であるわけですが、いったいどこから来るのですか?

 チョコレートの起源はスペインの征服者エルナン・コルテスによって滅ぼされたアステカ帝国(現在のメキシコ)の貴族たちが薬用として愛飲していた液状のものが起源です。現在でもメキシコでは街頭で売っています。これがスペインを通じてヨーロッパに入り、やがて固形化されて今日、世界中で好まれる嗜好品となったわけです。
しかし、現在のカカオの生産の主力はメキシコではなく西アフリカの沿岸諸国です。日本に入ってくるカカオの80%はガーナ原産です。日本のチョコレートに「ガーナ」と冠したものがありますが、象徴的ですね。第2位は南米のベネズエラとなっていますが、その量は10%に過ぎませんから、日本のチョコレートはガーナによって支えられているといって過言ではありません。
もっとも、最大のカカオ生産国はおなじ西アフリカのコートジヴォアールで世界の40%を生産しているといわれます。カカオの生産に特化したモノカルチャー経済の国ですね。サッカー強国のカメルーンも同じような情況です。そして、旧宗主国もフランスです。そうしたイビツな経済構造は植民地時代に押し付けられたものです。ですからチョコレートが高級な嗜好品としてフランスで発展したのは当然ですね。ガーナもバレンタイン・デーにチョコレートを普及させたイギリスの植民地でした。それとチョコレートには大量の砂糖が必要です。その砂糖の一大生産地がカリブ海のキューバでありハイチ、南米のブラジルなどです。つまり、チョコレートとはコロンブスの“発見”によってはじまる大航海時代の産物というわけです。アメリカ大陸やアフリカの大半がイギリスやフランスなど西欧の植民地となったためモノカルチャーが横行し、それぞれの栽培農作物が廉価になったためにチョコレートは世界に流布できたわけです。

*モノカルチャー経済というなら、その生産国はどこも経済的に自立していないということですね。

 そうです。一番の問題はカカオ栽培が現在、多くの子どもたちの労働によって支えられていることです。
一昨年でしたか東京・六本木ヒルズの美術館でチョコレートをテーマに展覧会がありました。そこに西アフリカのカカオ林で収穫に従事する少年たちの劣悪な労働実態を告発した写真が圧倒的な迫力をもっていました。その写真に添えられた少年のひとりの言葉が印象に残っています。「一度、チョコレートというものをぼくは食べてみたい」というものでした。西アフリカのカカオはほとんど輸出に回り、チョコレートなって逆輸入されたときは高価になって貧しい子どもたちにとって高嶺の花になってしまうのです。それがモノカルチャーに苦しむ途上国の哀しい姿です。
 カカオ栽培地を拓くところから収穫まであらゆる場面で子どもたちが働いています。西アフリカ諸国では約30万の子どもが一日12時間以上の長時間労働に苦しんでいると国際労働機関(ILO)は報告しています。当然、そうした子どもたちの多くが教育を受けられない。そうして貧困は固定化され世代を渡って継続していくのです。
貧困という負の連鎖を生み出しているのが紛れもなく西アフリカ諸国ではチョコレートであるわけです。子どもたちの労働のなかでいちばん苛酷だと思われ、後遺症も心配されるのが栽培の過程でつかわれる害虫駆除のための強力な殺虫剤です。殺虫剤を散布するとき、子どもたちはほとんど防具用になにも身につけないといわれることです。そうした子ども労働者の数は15万以上ともいわれています。
殺虫剤散布にあたって防護措置がとられていないのはアフリカのカカオ栽培地だけでなく、南米のコーヒー栽培地やバナナ栽培地で見られる常態的な光景です。米国でもメキシコから不法越境してきた労働者が働く綿花やイチゴ畑でもおなじようなことが行なわれています。労働者たちの無知をよいことに経営者は害を知りながら平気で散布するのです。
 アムネスティなど国際的な人権組織は、西アフリカのカカオ農場で働く少年たちは奴隷労働であり、その労働力を確保するために人身売買も行なわれていると告発しています。今年は昨年、世界各地のカカオ栽培地で水害があり価格が上昇しています。例年より「義理チョコ」の価格が高い、と思ったらどうかカカオと砂糖の生産国で苛酷な労働を強いられている子どもたちのことを思い出して欲しいと思います。チョコレート価格の上昇で潤うのは生産農家ではなく、世界のカカオ貿易の83%を握るというたった三つの多国籍企業なのです。
 *2010年2月記

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