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把瑠都の優勝を祝って

把瑠都の優勝を祝って

バルト
 大相撲一月場所で優勝した把瑠都関。この四股名、漢字の組み合わせはなかなか重量感があっていかにも強そうだ。
 日本人は昔からカタカナ、ひらがなを使ってきたにも関わらず外国の国名、地名を漢字で表記してきた。カタカナで表記することが当たり前になったのは、そんな昔のことではない。現在も字数を節約するとき、米・英・仏・独・伊・蘭・露……と表示してもたいていの日本人は分かる。わがラテンアメリカの国名は、新井白石の『西洋紀聞』のなかで漢字で表記されたのがはじまりのようだ。そのなかで今日まで伝えられ、広く通用しているのはメキシコの「墨」に過ぎない。もっともこれも米国との関連で、「米墨国境地帯」などと表記される機会が多いからだと思う。
 把瑠都関の四股名の由来は当然、母国エストニアがバルト海に面しているからだ。ブルガリア出身の琴欧洲関に次ぐヨーロッパ勢二人目の優勝である。琴欧州という四股名にブルガリアらしさは希薄だが、全欧州を代表する風情ありで立派なものだ。ならば横綱になって欲しいところだが、大関に昇進後、生彩を欠き物足りない。横綱昇進も把瑠都関が先行しそうだ。
 現在、十両以上の外国生まれの関取は17人もいる(一月場所番付)。ブラジル出身の幕内、魁聖関を除く16関はみなユーラシア大陸諸国の出身だ。しかも、ソ連邦解体後に、計画経済から市場経済に劇的に変化した国ばかりだ。モンゴル勢を旗頭に、ロシア、グルジア、ブルガリア、エストニア、チェコといった具合いだ。横綱及び三役の関取は現在10関、その内、半数がソ連邦崩壊とともに政治的な激変に襲われた国の出身者ばかりだ。
 もともと身体能力の高かった彼らは母国では掴みようのない大金を求めて異郷の“国技”に飛び込んだ。ハングリー精神である。彼らがいかに本気であったか……スピード昇進と日本語を早期習得していることで了解できるだろう。
 一頃、目立ったロシア勢が現在、十両の阿夢露関、ただひとりとなってしまった。豊富なガス、石油の輸出を背景に経済力が回復してきたロシアのいまと関係がありそうな気がする。とすれば、ユーロ圏で疲弊するハンガリーやスロバキアといった中欧諸国からあたらしい才能が出てきてもおかしくない情勢だが……。

 ソ連邦崩壊によって引き起こされた才能の海外流出はアイスホッケー、バスケット・ボール、サッカーなどでも起きたが、芸術面での流出も大きかった。バレエ、クラッシック音楽界でそれは顕著だった。それもプーチン前大統領(現首相)がロシアナショナリズムを隠さず強権的主導で“強いロシア”を目指すようになってから事情が変わった。プーチンの肝いりで結成されたオーケストラがあった。才能の流出を防ごうという狙いがあって結成されたオケと噂されたものだ。その日本での公演をサントリー・ホールで聴いたが、そのショスタコーヴィチの演奏は素晴らしかった。圧倒されたといってもいい。
 大きな音楽システムとしてのオーケストラの機能が熟成というような時間とは無縁であったはずだったが、それを克服する個々の能力の高さ、その集積の力、それを統率・制御する指揮者の才能。ショスタコーヴィチを扱いなれたロシア人指揮者と演奏家という存在の確かさを感じさせるものだった。こんな演奏は歳月を積み重ねた日本のオケにも真似できないと思った。これがロシアの伝統の力だ、実力だと感じ入ったものだ。
 ソ連邦の成立はロシア革命によってロマノフ王朝が倒れたことで実現した。そして多くのロシア及びスラブ系人たちが革命政府の追及を逃れ、あるいは嫌って日本に流れてきた。当時、日本はロシア国境とは陸続きであった。樺太と朝鮮である。日本に流れ着いたロシア人とウクライナ人から日本のスポーツ史に永久に名を残すことになる二つ巨星があらわれる。ひとりは日本プロ野球草創期にジャイアンツのエースとして活躍したスタルヒン投手、そして大相撲の大鵬関である。大鵬関の父はウクライナ人のコサックであった。
 スタルヒンは通算303勝を上げ、数々の大記録を残したが、いまだに記録ホルダーとなっているのが通算完封勝利83勝。現役でもっとも多くの完封勝利をあげているのが山本昌投手(中日)の30勝だから、スタルヒンの記録は今後数10年は安泰である。大鵬の幕内優勝32回も最高記録であり、これも当分、破られる気配はない。
 日本のスポーツ界でロシア及び旧ソ連邦圏出身の才能がかくも表舞台で活躍している事実は文化史的に考察してみる必要があると思う。 

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八年前の出版ですが

はじめておじゃましたものです。先日、南のポリティカを入手しまして、たいへんに楽しく拝読しております。まだ読んでいる途中ですが、米墨戦争中のアイルランド人部隊の話など実に興味深い。映画、ワン・マンズ・ヒーローでも描かれていましたが。

これを機に、上野先生のほかの著作にも目を通してみるつもりです。

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Author:上野清士
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