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2010年代はブラジルの時代  サッカーW杯大会、そして南米初のオリンピック開催地  国際的なビックイベントを支えるブラジルの国力は

 2010年代はブラジルの時代となるのかも知れない。2016年のオリンピック開催地にブラジルのリオデジャネイロが北半球の有力3都市を押しのけ南米で初の開催地に決定した。14年にはサッカーW杯大会もブラジルで行なわれる。巨大イベントをつづけて開催できるのは、それだけの経済力と政治の安定が自他ともに認められたからだ。そのブラジル経済と政治について紙幅の許すかぎり語りたいと思う。
ブラジル3
▼リオの友人
リオデジャネイロ開催が決定した1ヵ月ほど後、同地で小さな会社を立ち上げた友人と東京で再会した。
 東京の音楽雑誌で編集者として働いていた彼は、ブラジル音楽に入れ込んでいたこともあるが、なにより無限大にビジネス・チャンスがあるとみて移住したのだ。
現在ではリオで唯一、日本語でビジネスができる音楽プロモート会社として信用を築きつつある。ブラジル音楽家の日本公演の折衝や、日本のマスコミ関係者の取材斡旋など多方面のビジネスを展開中だ。読者のなかにもオリンピック開催地決定の模様を実況中継したテレビをみた方も多いだろう。東京が二回目の投票で落選した後、実況中継はリオとマドリッドに絞られた。その華やいだリオの会場の映像は彼の会社が準備したものだ。
 「日本では候補地リオデジャネイロの弱みは南米最大のスラム地区ファヴェーラなどの治安問題だろうといわれていたけど、現地に暮らしていてどう思った」と聞くと、
 「いや、ここ数年の改善ぶりはすごいですよ。前はとても近づけなかったところにもいけますからね」と言った。
 ブラジルのオリンピック招致委員会は選定に携わる委員たちにスラムを隠すのではなく、むしろ積極的に案内して改善状況と開催までの具体的な計画も明らかにした。それも評価されてのリオ決定であった。W杯、そしてオリンピック事業を推進していくなかでスラムの住人の少なくない部分も関連事業の労働力として定収入を得るようになるだろうし、必然的に生活改善も行なわれる。それも掛け替えのないオリンピック効果である。
 リオ決定直後、日本で編集・発行されている唯一のポルトガル語・スペイン語新聞『インターナショナル・プレス』では当然、オリンピックの小特集号とした。
 ポルトガル語版の読者はほとんど日系ブラジル人、御祝儀記事が出るのは当然だが、読者の大半がペルーからの出稼ぎ者、そして他のスペイン語諸国人という西語版でも特集ページを作成、祝賀した。その特集ページは色刷り4ページで各競技場の完成予定図なども掲載していた。もちろん、オリンピック前の計画だから建設はこれからだ。しかし、紙面は、わがブラジルはかくも準備怠りなく、こんな立派な施設を用意しているのだという論調で紹介した。それらの競技場建設だけで多くの就業機会を提供することになり失業率を下げるだろう。
 日本のマスコミは「東京」の動向を追うばかりで、有力候補地リオの準備状況を正確に伝えていなかったと思う。日本で発行されている新聞でありながら日本語新聞とは温度差が相当ちがっていた。
 リオ在住の友人は、「これから僕の仕事も確実に増えていきますよ。今回も仕事の打ち合わせで東京に来たのですが、明後日にはリオに帰る」と語った。
 友人はリオに赴くとは言わず「帰る」と言った。かつて多くの日本人移民を受け入れたブラジルだが、友人のような起業家にも大きな壁を設けていないようだ。
 中南米ではオリンピックよりサッカーのW杯の方が認知度が高い。そのW杯が2014年にブラジルで行なわれ、2年後にオリンピックを迎える。ということでもラテンアメリカ諸国の人たちはブラジルのオリンピック運営をなんら心配はしていない。
 落選した東京をはじめ他の候補三都市はブラジルの治安を問題にしたが、これまで二回のW杯大会を成功させてきた実績のある国ということを忘れている。したがって候補地選定には「治安問題」は大したマイナス要因にはならなかったはずだ。サッカーの熱狂的で、ときに暴力的なファンをフリーガンという。そのフリーガンはオリンピックには存在しない。W杯から比べればオリンピックの規模は確かに大きいが、治安面ではむしろ組みやすしとブラジルは思っているはずだ。

▼債務国から債権国へ
 オリンピックのリオ開催決定直後、ブラジル政府は国際通貨基金(IМF)が発行する特別引出権(SDR)建て債券を100億ドル購入することを発表した。IМFの巨額の債務を抱えていた時代からすれば夢のような話で、いかに経済状況が改善されたかわかる。債務国から債権国に劇的にギャチェンジしたのだった。
 この債券購入のニュースは開催地決定という華やかな報道の陰に隠れてしまった。ブラジルの歴史においても大きな出来事である。この経済面でのエポックメーキングな出来事は開催地決定の前に当然、ブラジル政府は決定していたはずだ。したがって、債券購入の発表を開催地決定前に出せたはずだ。そうすれば開催地選定に際してのデモストレーションとして好材料として作用したはずだが、それをやらなかった。理由は不明だが、他の候補地が思っている以上にブラジルはリオ選定に自信があったのだ。
 ブラジルを「21世紀の大国」というからにはそれなりの理由がある。要約して語るしかないが、経済面から少しみてみよう。
 もともと大きな潜在力があったブラジルだが冷戦時代、他のラテンアメリカ諸国とどうように政治的な混迷がつづき六〇年代半ばから約二〇年、軍事独裁政権がつづいた。この間、有能な人材が国外に亡命するなどして、ブラジルの国力は総体的に落ちたことは確かだ。政治の不安定は必然的に財政面にも深刻な影響を与えた。場当たり主義的な大衆迎合的な人気取り運営がつづき、ハイパーインフレーションのなかで疲弊した。
 しかし、軍政から民政に移管した八〇年代半ばから九〇年代前半のあいだも経済的な混迷は政権の腐敗などにより改善されることはなかったが、イタマル・フランコ大統領時代の一九九三年、財務大臣に就任したフェルナンド・エンリケ・カルドーゾによって劇的な経済改革がはじまった。これをレアル・プランという。
 その成果による国民の支持によって九四年に大統領に就任したカルドーゾはレアル・プランをさらに推進し、慢性的なインフレが断たれ、通貨価値の信頼性が高まった。新通貨レアルに切り替えた後、経済体質は安定期を迎え今日に至っている。そのあいだに欧米、あるいは東アジア諸国からの直接投資が促進され、外貨準備高も増加した。今日のブラジル政治・経済の安定情況はカルドーゾ大統領2期8年における成果である。
 ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ現大統領は、カルドーゾ前大統領に比べるとより左に位置する政治家だが経済政策はおだやかに前政権を引き継いだ。カルドーゾ前大統領も軍政時代の六〇年代に大学教授の座を追われ、亡命を余儀なくされた社会民主主義者であった。

▼エタノール生産で世界一
 ブラジルというと日本人にはサントスの銘柄で象徴されるようにコーヒーを思い出す人が多いはずだ。しかし、農産物に限ってみてもコーヒーが占める位置は低い。輸出総額でいえば大豆及び大豆関係製品が一位、つづいて食肉、林産品、砂糖・エタノールとつづき、コーヒーが稼ぎ出す外貨は総体的にさほど大きくない。近年は砂糖を原糧とするエタノールの生産で世界一、その豊富なバイオ燃料をベースにしたエタノール自動車の商用ベースでの生産に成功し、その技術力は日本の自動車メーカーも無視できなくなっている。また、エタノール技術そのものを諸外国に移植させ、やがて自動車燃料のスタンダード化しようという遠大な計画ももっている。そのセールス・ポイントはいうまでもなくガソリンに比べるとはるかに環境にやさしい燃料であるということだ。
 昨一一月一三日、ブラジル政府は二〇二〇年時点の温室効果ガス排出量を当初予測より最大三八・九%を削減するという自主目標を公表した。それは先進諸国も目を見張る大きな数字で危ぶむ声もあることは確かだが、国際公約した意味は大きい。
 ブラジルは、バイオエタノールの活用範囲の政策的な増大、アマゾン熱帯雨林での森林伐採削減などによって充分可能だとしている。このブラジルの削減目標は今後、欧米諸国や日本、そしてブラジルも主導国として参加するBRICs(ブリックス)でも考慮されるものとなるだろう。
 環境問題は今世紀前半のカナメであって、この分野で主導権を握ることは政治的な発言力も増すことを意味する。また、排出量の削減目標そのものを、ブラジルで特化するガソリン・エタノール併用のフレックス車の世界標準化、輸出拡大、それに必然的にともなうエタノール燃料の輸出といった総合的な経済政策の一環として受け止めてよいだろう。現にブラジルは風土的な類似性にあるインドでのエタノール需要を伸ばすよう技術譲渡もふくめ緊密化をはかるため両国間外交は促進されているし、また栽培適地の多いアフリカ諸国への技術譲渡も資金援助を含めて検討されてる。
 すでにブラジルでは全国のガソリン・スタンドでバイオエタノール燃料の販売を義務づけている。他国からみるとブラジルの温室効果ガス排出量の削減目標はずいぶん過大とみえるものだろうが、ブラジルはじゅうぶん成算ありと踏んでいるのだ。
 しかし、バイオエタノールをかくも普及させた技術力はブラジル工業界で突出したものではない。
 ブラジルの最大の輸出企業はエンブラエル、航空機メーカーである。中・小型ジェット旅客機の生産では群を抜く実績をもっている。現在、航空機製造メーカーとして世界第四位のシエアを誇り、おそらく二〇一四年のサッカーW杯を待たずして、カナダのボンバル
ディアを抜いて第三位となることは確実だろう。ブラジル空軍が運用する機体の五〇%がエンブラエルで生産されたもので、その軍用機はオーストラリア空軍をはじめ世界二〇ヵ国以上で使用されている。
 ブラジルからおおぜいの日系人が出稼ぎ労働者としてやってくる。そのため日本人の多くはまだブラジルを貧しい途上国として扱い、その視点から眺望しているように思える。しかし、実際の経済・技術力は思っている以上に大きく、高いのだ。いずれ出稼ぎ労働者も本国へ回帰するようになるだろう。
 軍用機を自前開発し普及させた高い技術力は当然、他の軍事面にも応用される。現に核兵器開発を自前で行なえる力がある。現在はその計画はないが、潜水艦も生産する国だから政府がその気になればたちまち軍事力でも世界有数の軍事大国になる潜在的能力を秘めている。また、ブラジルは南米20カ国・地域と国境を接している。国境を共有していないのはチリとボリビアだけだ。その意味でもブラジルの地政学的な意味は大きく、地域大国としての責任は重い。経済力だけなく軍事的な技術力でもBRICsのロシア・中国・インド三国のなかにあっても、いささかも怯むことのない矜持がある。
 こうしたブラジルの国力を示す数字はいくらでもあげられるが、ここでは象徴的な分野だけに留めた。こうした経済的な裏打ちがあってサッカーW大会、オリンピックの連続開催の意欲と自信があったのだ。
 そう、W杯南アフリカ大会が開催中であるから、ペレを生んだサッカー大国ブラジルを経済的な側面から語っておくのはよい機会だ。
 ブラジルのサッカーは途方もない巨大産業だ。
 国内には約八〇〇ほどのプロのクラブがある。各クラブが支配下登録している選手の総数は約一三〇〇〇人といわれる。このスケールからみれば日本のJリーグはヒヨっ子にみえてくる。日本のプロスポーツで最大の組織である野球と比較してもブラジルのそれがいかに巨大な存在であるかは一目瞭然だ。
 しかし、ブラジルの国内リーグのレベルは規模に比して高くない。理由はしごく物理的なものだ、優秀選手はみな待遇の良いヨーロッパのクラブに移籍してしまうからだ。そして、ヨーロッパの一流リーグで“旬”を終えた選手は、まだ高給を提供してくれる日本やオイルマネーの潤沢な中東のクラブに移籍して稼ぎつづける。
 ブラジルで一流選手が次つぎとヨーロッパへ一本釣りされてもクラブの運営はまったく支障をきたさない。理由は、選手の移籍にともなう人的保証金が入るからだ。この金額がとほうもない巨額。最近の移籍金として大きな話題をあつめたのはFCサントスからスペインのレアル・マドリッドに移ったロビーニョ選手で、移籍金だけでFCサントスは三五億円(推定)を獲得したいわれる。そのロビーニョ移籍金を含め、ブラジルサッカー協会が発表した二〇〇六年の移籍総額は約二二〇億円にのぼった。ちなみに日本サッカー協会の年間予算は二〇〇九年度で総額一二六億円に過ぎない。ブラジルは移籍金だけで日本の年間予算の倍も稼ぎ出すのだ。

▼光が強ければ影もまた大きい
 これまでブラジルの光の部分に当ててきた。むろん、光が強ければ陰もまた濃くなる。最後に「影」も語っておかねばならないと思う。ブラジルが緊急に取り組まなければ問題であるし、それは地球規模の環境にも大きな影響を及ぼすものだ。
 先にブラジル政府は地球温暖化ガスの排出量を大幅に引き下げると、削減目標を発表したと書いた。実現可能の理由としてアマゾン熱帯雨林の減少を食い止めることをあげていた。アマゾンは“地球の肺”といわれる。アマゾンの緑が失われことは地球全体の環境に重大な影響を及ぼし、人類の存亡にも関わる問題なのだ。
 そのアマゾンは無人の地ではない。太古から自然と共生して生きてきた先住民諸部族が暮らす地である。現在、アマゾン先住民諸部族は内務省直轄の「国立インディオ基金(FUNAI)」で人権が保護されていることになっている。しかし、広大なアマゾンではガリンペイロと呼ばれる金採掘業者による先住民居住区での土地収奪、開発業者による乱開発、放牧地確保のための森林伐採などによって先住民たちの生存が著しく脅かされている。
 ブラジル政府が温暖化ガス排出量の削減目標を高らかに謳いあげた直後にも先住民居住地域を呑みこむ水力発電所計画が明らかにされて、首都ブラジリアで英国のロック歌手スティングが先住民人権活動家ともに計画反対宣言を行ない、「世界はもっとアマゾン先住民の人権問題に関心を払うべきだ」と訴えた。
 アマゾン先住民の居住区を守ることは、そのまま地球環境の保全に直結する。ブラジル政府はアマゾンの経済的開発を停止するとは言っていない。今後も森林伐採はつづく。しかし、それは確実に先住民居住地を狭めることになるのだ。
 ブラジルの著名な人類学者で長年、アマゾン先住民の人権問題に関わってきたダルシー・リペイロによれば、「二〇世紀初頭、アマゾンには二三〇の部族がそれぞれの文化を育んでいた。しかし、七〇年代後半には一五〇部族に激減した」と言う。現在、ブラジル領アマゾン流域には二五万人前後の先住民が暮らすといわれる。アマゾン流域五カ国全体では約五〇万といのが概算である。
 ヨーロッパ人がアマゾンに足を踏み入れた一六世紀には五〇〇万前後の先住民が暮らしていたといわれる。もとより根拠も希薄な数字だが、コロンブス以来五〇〇年の歳月における「開発」によっておびただしい人命と自然が損なわれたことは疑いようのない事実だ。
 ブラジル政府は経済発展のためになおアマゾンの開発は必要との立場だ。節度を持って計画的に行なうとしており、先住民居住地の保全には充分、考慮するとしているが、スティングもはせ参じたずさんな水力発電計画などをみれば、その公約も怪しい。
 かつてブラジル政府は先進国からのアマゾン乱開発批判に対し、「自国土の開発に対して外国からとやかく言われる立場にない」と反撥した時期もあった。
 「地球の環境を今日まで損なったのは先進国の経済活動であって、ブラジルのせいではない」とも言っていた。しかし、国際社会においてブラジルの影響力が増大するにつれ、ブラジルもアマゾン開発に慎重にならざるえない。「21世紀の大国」の要件は環境大国でもあらねばならないからだ。
 無尽蔵の資源が眠るといわれるアマゾンだが、その経済的な活用と環境保護という二律離反する政策に今後、ブラジル政府はどう折り合いをつけてゆくのか注視しなければいけないし、国際社会もアマゾン問題に関しては国境の壁を超えて叡智を出し合っていかねばならないだろう。その意味でもブラジルは「21世紀」の主役なのだ。      

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