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映画『ハンター』 オーストラリア

映画『ハンター』
 ダニエル・ネットハイム監督
ハンター

 オーストラリア東部に位置するタスマニア島といえばテレビのバラエティー番組などで、しばしば珍獣・珍種の植物の宝庫として紹介される。地場産業は観光、そして豊かな森林に支えられた林業だが、そのため開発で荒れた場所も少ないないようだ。当然、社会の趨勢として環境保護派が台頭し、「開発を阻止!」を糾合する。それに対し、林業労働者は生活権をタテに対抗する。テレビは、そうしたタスマニアのせめぎ合う現実をすっぽり捨てて“娯楽”を提供する。
 本作の主役はタスマニアの豊かな自然、その象徴として、すでに絶滅したといわれるタスマニア・タイガーがその重役を担う。
 絶滅したのだから生体が映画に登場することはできない。最後の一頭というタイガーが資料映像のなかで動くだけだ。しかし、それでは映画にはならないのでスピルバーグ監督のヒット作「ジュラシック・パーク」的にCGで造形化して雄弁な演技をさせている。それがまず違和感なく映像化されている。技術スタッフのテクニックとアート性を評価したい。
 絶滅種だから画面に頻繁に登場するわけにはいかない。かつ限られた登場シーンは印象深く雄弁でなければならない。最後のタイガーとしての孤独、寂寥といった雰囲気までただよわせたい、と演出側の要請に見事に応えている。まず、それを賞賛したい。
 このタイガーを追う孤高のハンター、マーティン役を、ウィレム・デフォーが演じる。これが完璧にはまっている。
 デフォーという俳優の存在が世界的に認識されたのは1986年、ベトナム戦争の実相をはじめて描いたといわれた『プラトーン』に出演してからだ。ベトナムに偵察兵として従軍したオリーバー・ストーン監督の実体験をもとにシナリオが書かれた映画だが、そこにデフォーは一軍曹役として出演しオスカーにノミネートされた。主演でも助演でもなかったデフォーの圧倒的な存在感に主演陣が喰れた。以後、さまざまな映画に出演するが『プラトーン』を超えるには至らなかった。
 若い映画ファンには『スパイダーマン』の印象的な悪役と認識されているだけだろう。そんなデフォーにとって本作のハンターは適役、間違いなく彼の代表作になるだろう。
 19世紀まで自然と、その恵みで暮らす人との関係はもちつもたれずのバランスの取れた良好な関係にあった。しかし、その自然が育んだ動植物、埋蔵鉱床が金になることを知った企業・資本が国境を超えて「開発」をはじめた。それから人と自然のバランスは狂いはじめた。公害の多発だ。
 日本の法隆寺と薬師寺は、奈良の山に自生していた檜で建てられた。山の北側で育った木材は、寺院建築でも北側に用いられていた。しかし、昭和の再建、修復では使える檜は奈良はもとより日本になく、台湾の山に入って切り出してきた。
 日本の山は明治以来、儲かる樹木ばかり植えて荒れ、その後、廉価な輸入材に圧され林業は衰退した。そういうことが世界規模で起きている。経済のグローバル化とはそういうことだ。
 デフォーが演じるハンターは、そうした経済のグローバリズムの矛盾を象徴する存在だろう。
 彼にタイガーを捕獲させ、血液など生体サンプルを採取しろ、と密かに仕事を依頼するのは多国籍の医薬品メーカーだ。ハンターは過酷な大自然のなかでも生きながらえる術を身につけた狩猟のプロだ。プロである限り、企業の要請には応えなければならない。そうして生きてきた。
 希少種の禽獣も射殺してきたかも知れない。そういう影を背負う男だ。
 ひとを寄せ付けない排他的な風貌、孤独な印象が生得のものになっているような雰囲気、身体からにじみ出すように演じ切ることができる俳優でなければ、この役は務まらない。デフォーはこれに適役だった。
 環境保護グループ、林業労働者、医薬品メーカーなどの思惑などを描きながら巧みに話は構成され、やがてハンターはタイガーと遭遇する大円団を迎える。そのシーンには触れない。触れれば、評者は持論を書くことになり、読者へのおしつけとなるだろう。
 そこで示すハンターの決断を是とするか否とすか……それは貴方が決めることだ。

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