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宇多滋樹さんと、その喫茶店

宇多滋樹さんと、その喫茶店
宇多滋樹
(写真・上野清士)

 先月、久しぶりに奈良に行った。取材旅行だったが、その際、付き合ってくれた人が、「おもしろい喫茶店に連れて行っていく」というので誘いを受けた。
 長屋風の民家をほとんど手入れせず、ソノママという感じで喫茶店にしたところで屋号を「ちちろ」といった。玄関があって履物を脱ぎ、畳もそのままの和式の部屋、そこが店なのだ。店主は白髪の宇多滋樹さん、である。
 その名を聞いて映画『殯(もがり)の森』を思い出す読者がいたら、かなりの映画通だ。カンヌ映画祭で上映された直後、会場はなりやまぬスタンディグオーベーションに包まれた。グランプリを獲得した。その感動をもたらしたのは一にも二にも認知症の初老の男性を見事に演じきった宇多滋樹さんだった。映画に出演した頃、宇多さんは出版もときどき手がける古書店主であった。俳優体験は後にも先に『殯の森』一編のみ。その一作で世界の映画史に記載されることになった。
 「河瀬監督にはずいぶん、しごかれました。お陰で、映画の出演料で店の改築資金が出て、こんな妙な店をやってます」というが改築されたのははたしてどこだろう、という感じである。たしかにヘンな店で和室のまわりに古ぼけた木製の書棚があって、埃を被った本が並んでいる。でも商品である。古書店を兼ねるのである。座卓が無造作に並んでいて、気ままにくつろいでください、といった雰囲気。おもわず寝転がりたくなった。二階もあるというので上がってみるとコタツがあった。
 「ときどきカップルが来て二階にトントンと上がって、コタツでしんみり話しはじめると、うっかりじゃまできないようなイケナイ気配を感じて、降りてくるまで上がれない感じなんだ」と商売気が希薄。
 「映画の影響は大きいですね。店に入るなり、『あぁ、しげき(役名)さん、しげきさんだ』とひとしき僕を指さし騒ぎまくって、そのまま帰ってしまうおばちゃんたち……なんやケッタイな、アホか……と思えば、店に上がって僕の顔を見ながら泣きはじめる人も……認知症の父親を亡くした人らしいですけど。僕によりそってくる気色の悪いおばちゃんとか……。有名税というんでしょう。おもろい儲からない体験をさせられました」
 この宇多さん、かつて日本社会党の党員だったこともある。奈良県本部の専従書記であったのだ。多才多芸、というのか、器用貧乏というのか、小説も書けばルポルタージュも手がけ、自費出版の企画・編集もこなす。しかし、どうも一極集中して持続的に事を成す、というタイプではなさそうだ。
 「夏の奈良は暑いですから、秋にでもまた」と見送られたが、はたして奈良盆地が紅葉で色づく頃、この人、なにをしているんかいな……。
宇多さんの店

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