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ペネロペ・クルス命

ペネロペ・クルス命
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ペネロペ・クルスは現在、日本でもっとも知られたスペイン女性だろう。おそらくスペイン統一の女傑イサベル女王と、その認知度では肩を並べるか、それ以上の知名度をもつはずだ。イサベル女王と並べるのはおかしいと頭の硬い御仁もいるかと思う。それは仕方ない。人の価値観は多様だから。
 ひとつだけペネロぺの社会活動の一端を。インドの貧しい少女たちの生活・教育支援活動でしられるサベラ基金の有力な協力者と知られることを。将来、彼女がどのような人生を展開してゆくか判らない。すでにオスカーをはじめ国際的な映画祭で多くの賞を受賞している女優として名を残すのかも知れないし、政界に進出してもおかしくない。彼女はまだ発展途上にある。
 筆者にとってペネロペは、個性的な少女として、たとえば『ベルエポック』(1992)などで印象を刻みつけられた。その後、硬軟混ぜこぜの女優活動を展開していった。大西洋と地中海を飛び回って多くの映画に主演した。まぁ、たいていの映画を観ている。別にペネロペの映画を観たいと思って観たわけではない。
 イタリアで撮った『赤いアモーレ』もそうした流れのなかで観た。そして、まずしいアルバニア出稼ぎ労働者を演じ切った彼女を観て、はじめてアーティストとしての女優を意識した。演技力を再確認したということだ。
 そして、今年、『ある愛へと続く旅』を観て、さらに見直すことになった。今春、ボスニアへ旅をした、という個人的な感慨もあったが、それで映画の感興は左右されなかった。
 ボスニア内戦をまたいで約20年間の女の精神的ゆらぎを演じ切った彼女に敬服した。本作でも彼女の役はスペイン女ではなく、米国男性を愛し結婚し、内戦のなかで夫を失うイタリア女を演じていた。ボスニア・ムスリム女性を代理母として、愛する夫の子を育てた不妊症の女性という至難の役柄だ。
 『赤い~』、『ある愛~』もソ連崩壊後に政治的・経済的に激変した東欧の混迷を背景にしている。『ある愛~』では旧ユーゴスラビア時代、冬季オリンピックを前に華やぐサラエボが描かれ、同じ町が廃墟と化してゆく内戦下、そして和平の復興期という短い期間に激しく変異した季節を描く。
 イタリアは海を挟んで旧ユーゴ諸国、アルバニア、あるいは地中海の南の沿岸諸国と緊密な関係にあり、対岸の政変でその都度、さまざまな影響を受けてきた。
 二作ともセルジオ・カステリット監督作品。彼女の演技力をもっとも引き出している監督と思える。
 スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督作品でも好演、スペイン史に材をとった『裸のマハ』といった作品でも主演していて、母国でも尊重されていることは重々承知でいうのだが、カステリット監督のように彼女を採用して心奥の傷を抉り出すような女性を演じさせる才能はまだスペインには出ていない。
 フランコ体制崩壊後、活況をみるに至ったスペイン映画だが、素材的にはスペインを舞台にしても描ける『赤い~』『ある愛~』のような映画が出てきていないことに一抹の寂しさをおぼえる。無論、スペインからコソボに派遣され国連軍兵士となって活動するスペイン軍の苦悩を描いた映画などもあることを承知のうえで書いている。
 現在、スペイン映画界を象徴するアルモドバルの才気は異彩のものだ。スペイン映画芸術のスタンダードではないと思う。
 大戦後、表現の自由を得てイタリアやフランス、あるいはポーランドにモノクロームのリアリズムの傑作が生まれ、やがて、そうした映画作家がヨーロッパ映画を背負ってゆくことになる。しかし、大戦下も生き延びたフランコ独裁体制は、芸術活動にそうした自由を与えなかった。リアリズムの不在のまま自由を獲得したとき、スペイン映画界はたちまち世紀末を迎え、アルモドバルの諧謔が好まれてしまったように思う。
 ペネロペは、イベリア半島の対岸のイタリアで、スペイン映画に欠ける仕事を十全にこなしてきた。彼女は、その演技力で母国の映画界に何かを示唆しているように思われてならない。 

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