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旧作映画・備忘録 D

旧作映画・備忘録 D


▽『トンネル』ローランド・スゾ・リヒター監督
eiga トンネル

 ひとつの時代が終わると、その“近”過去の時代を、今だから話せる形式の映画がしばらく制作される。

 「ベルリンの壁」が崩壊してからの後、東ベルリン及び東ドイツの過去の“真実”を描く、あるいはじっさいにあった事件などに取材して劇映画がドイツで何本も制作された。日本に輸入されなかった作品もふくめれば相当な数があるのだろう。本作も、2001年にドイツで制作された実話をもとにした作品。

 「ベルリンの壁」の下に145メートルのトンネルを作り、東ベルリン市民を西側へ脱出させた1961年の“事件”から取材されている。ここで描かれるのは東の圧制であり、市民の自由が奪われた社会主義の“悪”だ。冷戦を象徴した“壁”は多くの市民が犠牲となった。トンネルの存在を知らず、壁を超えようとして射殺される青年。東の悪を描きながらも、監督の 目は、任務として“不法越境”するものを問答無用で射殺せよ、と命令を受けている東の若い兵士の苦悩もまた、きちんと描いている。

 よくできたドラマで、トンネルを掘って脱出を図るという話は、たとえば、スティーブ・マックイーンの出世作『大脱走』という傑作を生み出しているが、トンネルはいまも現実である。米墨国境地帯にはおそらく現在も何本も貫通しているはずで、米国側で一つがつぶされれば、どこかに2本計画されるだろう。イスラエル当局の監視をくぐってパレスチナからエジプトに貫通させたトンネルもあった。

 政治が妨げる国境も、それを越えようと求める人が存在する限り、それは何時の時代でも作られるのだ。
 日本も無縁ではない。ペルーの首都リマの日本大使公邸が反政府武装組織ツパック・アマルに占拠されたとき、ペルー治安部隊はトンネルを掘って特殊部隊を潜入させたのだった。*ドイツ*167分。


▽『ダンス・オブ・テロリスト』 ジョン・マルコヴィッチ監督
映画 ダンス・オブ・テロリスト

 名優マルコヴィッチの初作品映画。
 本作はメキシコで最初に観た。その後、日本でVHSで再見することになった。
 ペルーの首都リマを舞台に、反政府武装組織センデロ・ルミノソ(輝ける道)のカリスマ的指導者アビエル・グスマンと、そのシンパたちを追い詰める治安警察の刑事の物語。この刑事役を、ハビエル・バルデムが好演。ただし、監督の視線はペルーの貧困、階級差別あるいは先住民への抑圧状況といったことへは、ほとんど配慮していない。毛沢東主義を信奉したといわれる「輝ける道」の狂信的ともおもえるテロリズムの陰惨さを、映像は独自の不気味なイメージで提出している。これをメキシコでみたとき、グスマン逮捕からさほど年月が経っていないということもあって、強い印象を受けた。しかし、映画は「輝ける道」を政治集団ではなく、なにか武装した狂信的な密教集団というイメージに練り上げられているようにも思い、違和感を覚えたことを書いてこう。

 ドラマとしての面白さ、原作を忠実に追ったといえば、それまでだが、指導者グスマンより、グスマンを自宅 に住まわせているバレー教師の美女と、グスマンを追う刑事との触れ合いに重きをおいて進行するドラマとなっている。実際に逮捕された「輝ける道」の指導部の女性たちは知的階級の美女であった。

 「輝ける道」は現在、ほぼ壊滅したといわれるが、ときどき残党と思えるゲリラが散発的に活動を行なっているようだ、というニュースは入ってくる。グスマンはじめ指導部は現在、軍刑務所で重禁固の身だが、その処遇はどうなっているのだろう。まったく聞かない。
 マルコヴィッチの初監督作品がペルー映画といってよい作品であったことは、この才人の底の深さを感じた。沈うつな映画であるが、記憶に残る。2000年・127分。


▽『クルーシブル』 ニコラス・ハイトナー監督
映画 クルーシブル

 米国独立前、植民地時代の歴史的実話に取材した映画。
 本作の内容を知らず、主演が米国で最高の男優と(私は)評価するダニエル・デイ・ルイス、という理由で観た。
 観て驚いた・・・米国で最大の魔女狩りとなった「セイラム魔女裁判」を真正面から取り上げた映画であったからだ。という意味では、「あなたが欲しくて体が疼く・・」というキャッチコピーはないだろう、あんまりではないか、と思う。

 その魔女裁判は、米国独立前の混沌とした人口希薄な辺境の入植地でおこった事件だが、後年、北米地区で最大の犠牲者を出したものとして記憶される。
 良く映画化したものだ。娯楽要素も巧みに織り込んでドラマとした手わざはさすがハリウッドと思うし、やはりデイ・ルイスの説得力ある演技が、この宗教的なファナチックな題材にリアリティを与えている。
 実際のところ、この裁判の真相は、「魔女裁判」という性格上、無実の罪で処刑された人の体験は天国まで持って行ってしまったのでどこまで資料通りかは分からない。という意味では事件は脚色しやすく、そこにメイドの少女アビゲル(ウィノナ・ライダー)が恋心を寄せる妻子あるジョン(デイ・ルイス)、その不倫関係の打開が、不要の告発へと繋がるという展開、そして、魔女狩りを誘発することになるという話のあらすじは描きやすいことだ。

 日本人にはなじみのない「魔女裁判」、かつてカトリック社会に吹き荒れた、おぞましい陰惨な歴史的事項が、こうした映画によってわかり易く説かれるのは、それなりに価値があることだろう。

▽『アンダー・ファイアー』 ロジャー・スポティスウッド監督
映画 アンダーファイアー
 ニカラグア内戦を描いた映画にケン・ローチ監督の『カルラの歌』という佳作があった。
 ニカラグアではじめて制作された『アルシノとコンドル』という映画もあった。ニカラグア映画だけど、監督はチリのミゲル・リッテンだった。生硬な作品で、いかにも岩波ホールで上映されるにふさわしいという感じだった。主張先行、ドラマ性希薄といった感じ。他にも、ホンジュラスからニカラグアに攻め込む米軍にスペイン語ができるということで配属されたヒスパニック兵士を描いた『ラティーノ』という作品があったが、ほとんど話題にならなかった。

 本作は、ニック・ノルティ、ジーン・ハックマン、そして、フランスの名優ジャン=ルイ・トランティニアン、本作当時、まだ上昇中であったエド・ハリスが独裁政権下の雇われ軍人という“悪役”を好演している、といった出演陣ということで公開当時、中米ニカラグアが舞台というにも関わらず、それなりに話題を集めていたと思う。

 1983年の映画だから、私自身が後年、幾度かニカラグアへ取材で赴くことなどまったく想定していない時期に観たわけだ。
 ニカラグアの自然、町の佇まいとは、このようなものであるかと映画で感得していたわけだが、実際に現地に訪れてみれば、ずいぶんと様相が違うのだった。映画はメキシコで撮影されたらしい。中米を舞台にした映画の多くがメキシコで撮影 されている。中米紛争時代もいまも、それは変わらない。オリバー・ストーン監督の『サルバドール』もそうだった。その点、ケン・ローチ監督は撮影条件の劣悪さも納得してニカラグア現地で撮影しているのは、このリアリスト監督のこだわりといえそうだ。

 メキシコで撮影されることが多いのはラテンアメリカの映画大国であり俳優も技術陣も充実していることと、その自然の多様さが中米らしく撮影できるからだ。かつてハリウッド映画の「ターザン」もメキシコ市郊外で撮影されていた時代があった。

 さて本作、サンディスタ革命が成立する直前にニカラグア入りしたカメラマン(ニック・ノルテ)が、民衆の英雄となっているゲリラの指導者を求めて奥地へ旅をするという縦筋の前後左右に、内戦下の諸相を描いたものだ。ラジオ・キャスター(ジョアンナ・キャシディ)との恋愛挿話も挟みこみながら飽きさせないシナリオはいかにもハリウッド映画。
 当時のソモサ独裁政権を米国は支援していたわけだが、本作はゲリラ側に立った視点から撮られている。

 ニカラグアという国は中米にあって、パナマと並ぶ野球国で、少年たちはサッカーより野球に夢中になっている国だ。そんな大リーガーを夢見る投手志望の若者が内戦下にあっては、手榴弾を遠投するゲリラ兵士となっていること、そして、それが禍して戦死するといった挿話なども適宜配され、ニカラグアという国へのリサーチはそれなりに消化されている。
 音楽は誰が書いたか知らないが、ケーナ、サンポージャを巧み使っているのが印象に残った。128分。

 *後年、名優としての評価を勝ち得た時代になってからエド・ハリスはニカラグアを武力制圧し、大統領に就任し独裁映画 ウォーカー
を布いた実在の米国人弁護士ウォーカーを演じた評伝映画『ウォーカー』に主演する。米国の国民文学といえそうな『風と共に去りぬ』の最終巻にも登場するウィリアム・ウォーカーである。日本ではまったく無名の人種差別主義者の弁護士だが、中米史では米国の“悪”を象徴するグリンゴとして良く知られる。

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