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パコ・デ・ルシアの死

パコ・デ・ルシア、カンクンで死去
パコ・デ・ルシア

 2月26日、フラメンコの枠を超えて20世紀後期のギター音楽の世界を拡張しつづけたギターリスト、
パコ・デ・ルシアが毎年、乾季の滞在地ろ決めているメキシコ・ユカタン半島の景勝地プライヤ・デ・カ
ルメンの病院で心臓発作のため死去した。享年66歳。
 すでに遺体は故郷のスペイン・アンダルシア州のアルヘシラスに戻った。
 「世界の芸術とアンダルシアにとって埋めようのない損失だ。彼を追悼するため町では喪に服すことに
した」と地元首長が言明するなかでの物言わぬ帰還であった。
 スペインでは当然の反応であろうが長年、メキシコの代表的なリゾート地に住んでいたためメキシコで
も惜しむ声は連日、マスコミを賑わした。特にパコ・デ・ルシアと同郷の詩人エンリケ・モンティエルが
訃報に接して、「メキシコは彼にとってはもう一つの祖国であり、母なる大地であった」と語ったことも
注目された。
 メキシコの自然、そして豊かな音楽土壌から滋養と慰安を得たことは確かだが、それに留まらず広くラテ
ンアメリカの音楽世界を虚心に聴き、触れフラメンコ音楽の活性を貢献しつづけた。現代フラメンコは音楽
ともにパコのギターとともにアルチザンの芸からアートの領域に入ったのだ。
 ブラジルからボサノバのエッセンスを吸収し、今ではフラメンコ音楽の定番になっているカホンをペルー
のコスタ地方から導入した功績はひとりパコのものだ。
 メキシコ出身、米国でギター1本でロック・ギターでロックをアートにしてみせたカルロス・サンタナは
同じステージで競演した体験を回想しながら、「豊かなイマジネーションの汲めどもつきない才能にあふれ
た真に偉大な音楽家であった」と語り、キューバのヌエバ・トローバの大御所シルビオ・ロドリゲスは、
「哀しいことだが、彼には新しい生が与えられた。それは天国にとって新たなフィエスタのはじまりなのだ」
と吟遊詩人らしい表現で追悼した。キューバのラテン・ジャズ界の大御所ロス・バンバンのリーダーもまた、
アイロニーに満ちた言葉を送っている。かつて、“ギターをもったゲリラ”と畏敬されたニカラグアの国民
的な歌手ルイス・エンリケ・メヒア・ゴドイは、「彼の音楽はスペインを出て欧州の国境を越え、ラテンア
メリカに甚大な影響を与えた」と語った。
 こうして書き出したら切がない。リッキー・マルティンなどポップス系のアーティストもツィターにそれ
ぞれ惜別の言葉を書いている。また、中南米諸国の文化省周辺からも公式コメントが発表されている。
 20世紀後半の大衆音楽はロックを筆頭にギターが主流になった時代だった。
 多くの才能が輩出したが、音楽の領界を越えて多大な影響を行使しつづけた音楽家となると、それほど多
いわけではない。パコ・デ・ルシアはわずかな高峰の一峰、名峰そのものであった。

 ここで余談をゆるしてもらえば筆者がメキシコ滞在中だった1900年代後半、日本のフラメンコ雑誌か
らパコにインタビュー取材できないかという依頼があった。メキシコDFからカンクンまでの飛行機代も出
るというありがたい仕事だった。伝を頼って連絡はできたが、本人とは直接交渉できず、秘書であっただろ
うか、「カンクンにいるあいだは仕事はせず、純粋に休暇に充てている」ともっともらしい理由で婉曲に断
れたことを思い出す。当時、パコがメキシコで1年のうち数ヶ月をすごしビーチサッカーに興じる日々を過
ごしていることは広く知られていなかった。だから、何故、日本人が知っているのか、といぶかしくも思わ
れただろう。しかし、惜しい機会であった。パコから取材を断れた数ヶ月後、カンクンまで行き客船に乗船
、船上講師を務めるという仕事が舞い込んだ。このとき、押しかけてみようか、ふとと思った。某音楽雑誌
の編集長がパコの友人であったから、そこから手を回すかと思った。しかし、それもくだんの編集長が海外
出張中で連絡が取れず、計画倒れになってしまった。いまは手元にある半ダースほどのCDアルバムが筆者
にとってパコのすべてであった。


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