スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

映画 アフリカを描く 『ケープタウン』 ジェローム・サル監督

映画『ケープタウン』ジェローム・サル監督
349078_003.jpg

 17世紀、海上貿易の拠点としてオランダによって港湾が整備された南アフリカ共和国有数の都市ケープ
タウン。アフリカでもひときわ富が集散する地だ。その富に巣食う犯罪組織、貧困問題は港湾都市の属性だ
ろう。いわゆるサスペンス・アクション映画のステージとして、港は多くの映画で立地条件の良い場所として
選ばれてきた。南アのケープタウンではこれにアパルトヘイトの苦味が添加される。
 本作で指弾されるのは化学兵器に転用可能な薬物の研究・開発で巨万の富を得ようとする犯罪組織だが、
その組織の成り立ちはアパルトヘイト時代に発している。映画では黒人人口の激減を画策した白人政権によ
って密かに開発が進められたプロジェクトに端を発すると解かれる。
 しかし、1994年、アパルトヘイトが廃止され、マンデラ大統領の政権ができる前に開発は中断され放棄さ
れた、はずだった。しかし、計画に携わった研究者たちは金になる木として根を残し裏ビジネスとして計画の
完成を急いだ。
 この犯罪組織の摘発に身体を張って乗り出すズール族出身のアリ・ソケーラ刑事(フォレスト・ウィテカー)
自身、その少年期、アパルトヘイト時代に心身に傷を負った犠牲者のひとりだ。
 マンデラ政権が誕生し、国旗も国歌もこの国の主要人口であるズール族を象徴するものに変わり、W杯ラク
ビー大会、W杯フットボールを開催し、国のイメージを変えることに成功しているように思える。しかし、人の心は
“革命”で血が入れ替わるわけではない。
 1945年8月15日は確かに日本を変えた。今日の経済的繁栄は8・15をターニングポイントとするが、そ
の日をまたいで過ごす人の心性まで変わるわけではない。アパルトヘイト時代、制度的に貧困を強いられた
黒人層がいきなり豊かになれるわけはない。ソケーラ刑事の母親は相変わらずスラム街に住みボランティア
活動に献身している。
新型の薬物を開発する組織は被験者にスラムの子どもたちを利用する。スラムの子どもが数人行方不明に
なったところで誰も気にはしない、という現実もある。アフリカの貧困者を被験者とする欧米の製薬会社の罪
を問い、暴いた映画にジョン・ル・カレルの長編を原作とした映画『ナイロビの蜂』という力作があったことを思
い出す。
 本作で暴かれる犯罪組織の幹部はアパルトヘイトに巣食った高級軍人であり、黒人の命を羽毛の軽さに
しかみなかった化学者たちだ。
 マンデラ政権は新しい国づくりの出発において「国民和解」を説いた。そして、実行した。それは讃えるべ
き高邁な理念の実施であった。
 しかし、旧悪は問わない、という政策によって、黒人への弾圧を常態化していた警察も軍隊も罪に問われ
なかった。矛盾のある国民和解でもあったが、国際社会は賞賛した。しかし、傷を負った生身の人間の心の
支えにならない。 ソケーラ刑事が所属する警察の署長はかつてスラムのソケーラ少年たちを追い回してい
た。それを知っていても水に流せ、とマンデラ政権は主張したのだ。そして、南アフリカ共和国という国は赤
道 以南のアフリカ諸国のなかで有数の経済大国になった。
 本作にはアクション映画の小気味よいリズムもなければカタルシスもない。重く不快な現実を直視しろと
迫ってくる。ダークサスペンス。映画だから、やがて犯罪組織は壊滅することになる、ソケーラ刑事の生命
と引き換えとして。結局、同刑事の命はアパルトヘイトの残滓によって奪われた。南アの現実を垣間見たよ
うに思った。
 ソケーラ刑事を演じたフォレスト・ウィテカーは、かつてジャズ・サックス奏者チャーリー・パーカーの短い生
涯を演じた映画『バード』で名を上げた米国俳優だが、本作でもアパルトヘイトの傷を引きずる黒人刑事役を
渾身の役作りで好演していた。  

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

上野清士

Author:上野清士
店長の最新著書

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。