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映画 アフリカを描く イタリア映画「海と大陸」 エマヌエーレ・クリアレーゼ監督

映画「海と大陸」エマヌエーレ・クリアレーゼ監督
海と大陸

 自分自身が体験した壮絶な出来事。それも生死の境いを行きつ戻りする神にすべてを委ねたような時間。自力ではどうしようもい過酷な状況。自分の周囲では次々と溺死してゆく。それを再び(演技とはいえ)再現しようとする行為とはいかなるものなのだろう。
 本作の舞台は地中海に浮かぶイタリアの離れ小島リノーサと、その周辺の海。直線距離ではイタリア本土より、北アフリカのチュニジア、リビアに近い。この海域はローマ帝国創設前からさまざまな理由で難民が行き交う。
 いま、イタリアの沿岸漁業は漁獲量が減り、漁業で立ち行かなくなったところが多いようだ。リノーサ島の漁業も不振を極め、陽光きらめく自然を活かして観光で生き延びようとしている。そして北欧諸国からの観光客でそこそこにぎわっている。ただ、アフリカにあまりにも近いため南からロクな装備ももたないボロ船に北アフリカ、中東諸国の難民を乗せて島の周囲を回航している。経済的な不況といえば南欧も同じだが、しかし、さらに南の諸国では飢餓が這う。
 多くの不法越境者を乗せた難民船はしばしば海難にあう。運よく島に上陸できたものもすぐ拘束されてしまう。無事に入国できるものはほんの一握りなのだが、越境者の群れはなくならないどころか増える一方だ。これは欧州だけの問題ではない。南にメキシコと長大な国境をもち、カリブ海に突き出た半島をもつ米国が抱える問題でもある。それが今日の現実だ。
 現在、ということでいえば、キューバ=米国国交回復の潮流のなかで、キューバ沿岸から駆け込むようにフロリダ半島を目指すキューバ人が族生している。国交が正式に恢復すれば、米国はキューバ難民の受け入れをいまのように許容しなくなるだろうという思いからだ。今なら、他の中南米諸国からの難民よりキューバ人は、反カストロ政策の一環として米国は優遇しているからだ。また、「イスラム国」の台頭で隣接した諸国も難民の流入に困惑している。
 そういう国際状況を直截的に反映しているのが本作だ。
 冒頭に記した体験の持ちぬしエチオピア出身の女優ティムニット・Tというが、彼女は本作で出産を間近に控えた急死に一生を得たサラという役で出演しているのだ。むろん、女優体験はいままでにないわけだが、本作では初演とは思えない内に憂愁と諦念を抱えた女性を演じきっていた。
 イタリアでは難民に便宜を与えていけない。発見したら警察に通報しないと罪に問われる、ことになっている。それは非情なものだが、不法越境者の流入に悩む欧州諸国では必要悪だろう。難民対策のために厖大な予算を計上し、国内での社会福祉予算を削らなければならないとしたら、政権維持のためにも参政権をもたない難民を切るしかない。それが現実だろう。
 映画は、サラを匿(かくま)い、出産の手助けをする貧しい漁民家族の話なのだ。その日常のドラマに名もない民衆の法に縛られない人道・博愛・・・といった言葉では語りきれない感情の機微、人としての道、というような人間の原初的な発露を淡々と描いて、胃の腑におちてくる比重の確かさを感じさせる。秀作である。        

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