スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

フランスの「海外県」という植民地政策を告発する ~映画『裏切りの戦場』

フランスの「海外県」という植民地政策を告発する
 ~映画『裏切りの戦場』(マチュー・カソヴィッツ監督)
裏切りの戦場

 フランス海外領土ニューカレド二ア諸島で1988年4月、島の先住民カナック族の独立派が、独立国家「カナキー」の樹立を標榜、フランス憲兵隊宿舎を襲撃、武装闘争が開始された。その顛末を描いた映画だが、この作品を通しながらフランス植民地主義、海外領土の実態が窺えるように思う。
 日本では1966年にエッセイストの森村桂さんが旅行記として書いた『天国にいちばん近い島』の発表から一部で認識されたらしいが、一躍、注目をあつめたのは当時、アイドルとして人気の高かった原田知世主演で同名の映画が1984年に撮られ、ヒット作となってからだろう。旅行記から18年の歳月が経っている。森村さんがみなかった独立闘争が顕在化している時期だったが、映画には直接、取り上げられることはなかった。しかし、大林信彦監督は、島の政情は無視できず、スクリーンに流血の衝突が起きていることを報道する新聞をさりげなく映し出すようにしたようだが、日本の観客にはまったく気づかなかったようだ。それが証拠に、映画のヒットで「天国にいちばん近い島」で行きたいと思う人が族生、映画のロケが行われた島にリゾートホテルが建てられたようだ。日本での認識はそういうものであった、と知ってもらうために大林監督の映画に触れてみた。

  1988年4月、フランス国内では大統領選挙と地方選挙を控え、現職の社会党のミッテラン大統領と、国民運動連合のシラク首相がつばぜり合いを演じていた。そんななかフランス本土から遠く離れた仏領ニューカレド二アで起きた武力衝突が起きた。武装した独立派はフランス国軍憲兵隊宿舎を襲い、4名を殺害し、30名を誘拐してジャングルのアジトに隠れた。独立派は人質の生命と引き換えに島の風習・伝統を守るため、独立を繋がる自治権の強化を求めた。
 この事件の解決のためパリ・ヴェルサイユにある国家憲兵隊治安部隊のフィリップ・ルゴルジュ大尉が任命され、部下50名を連れて長足、南太平洋に飛んだ。
 フランスの社会党、といよりこの国の「自由・平等・博愛」というものは自国に収斂するもので、外ではみごとに無視される。それはフランス革命以来の“国粋主義”だ。ミッテラン大統領時代にも国際的な批判を浴びながら南太平洋で核爆弾の実験を強行している。南太平洋の核実験場が作られる前は独立前のアルジェリアで行われていた。と、フランスが国外で武力をもって行使してきた帝国主義そのもの蛮行を、あえて日本に引き寄せていえば傀儡「満州国」の存在など些事に過ぎない。

 先住民の独立派は、しかし、一枚岩ではなかった。同大尉の治安部隊が現地に到着し た頃、二手に分かれてアジトに逃げた一方の勢力は村の族長の説得で人質は無条件で解放され、強硬派に囚われた人質の救出が求められた。同大尉は独立派との接触に成功し、人質を解放させるためにフランス政府当局と仲介役を務めることを約束した。しかし、同大尉の部隊とは別にフランス政府は、事件の早期解決のためにヴィダル将軍指揮下の陸軍300名を島に送っていた。同将軍は武力制圧で望む方針だった。フランス政府は一歩も譲歩しないとみた同大尉は独り奔走し、最悪の事態を回避しようと努力する。
 しかし、フランス当局は交渉の時間切れを理由に制圧を開始、独立派19名、軍兵士2名が戦闘中に死んだ。事件は、それで終わらなかった。アジトを制圧後、降伏し無抵抗の独立派の青年5名を暴行のうえ射殺していたことが判明したのだ。すべて実際に起きた事件だった。

 マチュー・カソヴィッツ監督談
 「ニューカレド二アでその事件が起きたとき私は18歳でした。当時のTV報道は、カナック族が人質にした警官たちを鉈で虐殺し、断頭処刑やレイプが横行していたというのがありました。だからフランス軍は正義を行ったのだ、と当時のシラク首相が演説していたのを覚えています。しかし、父から読むようにと渡された人権連盟の報告書にはまったく別のことが書かれていました。19人のカナック族が処刑され、その遺体には虐殺行為の痕が残っていたとか・・・。そして、他の報告書も読むなかで映画の主人公ルゴルジェ大尉のこと、交渉の不調と制圧作戦のことも詳しく知りました。
 私はルゴルジェ大尉の目線から映画が撮れると思い、ニューカレド二アで取材をしました。そのなかでカナック族の多く、特に事件で殺された独立派の遺族たちが大尉を「裏切り者」と思っていることを知りました。映画では彼の努力を追うことで事件の推移を描き、「裏切り者」ではないことを証明していますが、それで遺族の傷を癒すことはできないでしょう。
 映画のなかで「選挙中の政治家の言葉を信じるな」という台詞が出てきます。大統領選最中では大尉の努力も政治的取引に使われてしまうということです。」

フランスの海外領土
 ニューカレドニア もし独立すれば「カナキー」国旗となる。
 
 フランス政府は世界中に散在する植民地を「海外県」、あるいはフランス語でグランドテール「本土」とし、「海外領土」または「特別共同体」と言い換えているが、事実上の植民地である。カリブ海にはマルチニック、グアドループ、南米にはギアナ、など11の人の住む海外領土を現在も支配中だ。ニューカレド二アは1853年にフランスが領有宣言し植民地となった。1985年、先住民による社会主義カナック民族解放戦線が独立闘争を始め、やがて映画に描かれた武装蜂起へと発展した。2014年以降、独立の是非を問う住民投票が行なわれることになっているが、15年になっても実施される見通しは立っていないようだ。フランス政府の懐柔策が効を奏しているのだろうか。  (2014年記)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

上野清士

Author:上野清士
店長の最新著書

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。