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書評 『放浪の聖画家 ピロスマニ』 はらだたけひで著

書評 『放浪の聖画家 ピロスマニ』 
           はらだたけひで著
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 日本におけるピロスマニ受容は映画から始まる。
 まだグルジアがソ連邦の構成国であった頃、かの国で叙事詩的な評伝映画制作され岩波ホールで公開されてからだ。それ以前に、いわゆる素朴画家として、その分野では良く知られていたフランスのアンリ・ルソーなど
の傍系資料的に紹介されていた程度だったが、映画の公開でにわかに光を放ちはじめた。
 
 本書の著者はその映画の公開に岩波ホール職員として関わった。そして、絵本作家でもある著者が掌のなかであたため熟成させるように画家の生涯を描き出しのが本書である。
  
 名声を求めるのでもなく、コーカサス山系の山の民グルジア人として、同胞(はらかた)、生活を支える豊かな風土をただ描きたいように描いた民衆画家の足跡を自分が歩む道しるべのごとく豊富な作例をあげながら起伏の多いグルジアを旅して綴る。
 かの映画に触れて評者もピロスマニに惹かれた。彼の豊かな黒に惹かれた。墨に五彩あり、というが、その絵の世界にも同じような豊饒をみた。
 絵の黒に憂愁と、それに相反するような愛惜をみたのだ。その二律離反さが宿るもの確認したくて二度目のソ連旅行の際、グルジアの首都トビリシを訪れた。冬の孤独な一人旅だった。当時、外国人が宿泊できるホテル内の表記もぶどうの蔦から生まれた(?)といわれるグルジア語文字とロシアのキール文字しか併記されていない時代だった。
 ピロスマニの黒・・・それは映画を見たときから強い印象を受けたものだった。黒に憂愁と愛惜をみた。その黒が評者には謎だった。本書の著者がその黒に言及する。
 それはギャラリーでの鑑賞ではうかがい知れない部分だ。それが評伝を読む快楽でもあり、発見だ。一書にまとめるということは、そうした読者の疑問に答えることだ。著者は書く・・・。
 絵の具の黒ではなくグルジアでムシャンバと呼ばれる馬の背に敷く動物の皮、その地色と。何故、彼はこれをキャンバスにしたのだろう、と著者は筆を進める。そんな手法でピロスマニ芸術の特異性と風土に密着した世界を紐解いていく。  
 著者とともに小さな山国の穏やかな日々のなかで旅程を重ねたことを思いだしながら感慨にふけった。    (清士)
▽集英社新書・1200円

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