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北欧フィンランドが対ソ連戦「冬戦争」を描く2本の映画

北欧フィンランドが対ソ連戦「冬戦争」を描く2本の映画
 『ウィンター・ウォー』、『4月の涙』

 ソ連邦の解体後、フィンランドでいまやっとわが民族の英雄たちの戦いを映像で追悼できると2本の映画が制作された。2本とも民族の威信が賭けられている、と思わせる熱さがあった。
 革命ロシア、正確に言えばスターリン独裁時代ということになるが、ソ連共産党政府というものがいかに他民族に対して排他的であり、かつ国境を接する小さな周辺国を貢国としかみなしていないコミュニズム帝国主義というべきものが柱となっていたことが分かる。
 ウィンター・ウォー
『ウィンター・ウォー(冬戦争)』(ペッカ・パリッカ監督)は1989年の制作だ。ベルリンの壁が崩壊(同年11月)前に企画・制作されていたことになる。つまりフィンランド映画人はゴルヴァチョフ政権が進めるペレストロイカによって加速するソ連邦の緩み、東欧諸国の激動、クレムリンの内部分裂等を定点観測しつつ長年、民族的な憤怒の歴史として心の奥底に秘めていたフィンランド民族史に真正面から白夜の光を照射しようとしたのだ。
 1939年~40年の「冬戦争」でフィンランドの多くの若者が雪原に斃れた。ソ連赤軍の侵略に対して戦い抜き、圧倒的な人海戦術で責める赤軍を身を挺して食い止めた「冬戦争」の叙事詩を描いたのは本作。日本で発売されたDVD版は125分だが、本国では195分の長尺版で公開されたということだ。
 侵略するソ連赤軍の総力は兵士50万、2千門の大砲、戦車2千500輌、300機の空軍も加勢というものだった。これに対して映画の冒頭で描かれるが、フィンランド軍というものは、徴集された兵士に行き渡る軍服すらなく、歩兵の平均装備はボルト式単発ライフル銃、戦車はわずか数十両、戦闘にまともに使える飛行機はわずか数十機でしかなかった。兵士に対する訓練すら、まったく不十分といった状況で、若者たちは前線に送り出された。そんな劣悪貧弱なフィンランド軍は赤軍の猛攻に耐え忍び独立を守った。赤軍はフィンランド軍の約10倍の犠牲を払ったという。
 映画に当時の戦争でフィンランド軍が捕獲した武器、戦車や戦闘機も含めて博物館などから引き出され、冬戦争当時の塗装をあらためて施して撮影に狩り出されたという意味において、この映画にフィンランド政府も深く関わっている。その意味でも国家の威信をかけた映画だということだ。それもソ連崩壊と同時に制作されたという意味でもフィンランド民族そのものが、長年、胸底に抱えてきたソ連=ロシアに対する憎悪を解放させた映画とみることができる。
 映画には突出したヒーローというものは登場しない。物語を進行させる語り部といった役を担当する予備役から狩り出された中年兵士が強いていえば主人公となるが、彼も塹壕から塹壕を這いつくばり、爆風に白衣の迷彩服もズタズタにされ、戦死したロシア兵のライフルから銃弾を抜き取り応戦するという地を這う一兵士に過ぎない。次々と斃れてゆく戦友のなかで最期まで戦い抜き、戦場のありようを証言できる数少ない証人として登場しているに過ぎないのだ。英雄とは、この戦争に参加したすべてのフィンランド兵士と監督は語りつづけているのだ。
 圧倒的な物量に対してフィンランド軍がよく抗し切れたのは国土を身を挺して守り抜くという気概、そして地形を把握して地勢をたくみ活用したゲリラ的戦法ということもできる。付け加えれば、赤軍のなかには命令とはいえ、この戦争が、弱小国に対する「侵略」の淀みがあることを感じているところもあったはずだ。それは士気を減じるものだ。映画のなかにもそういう心性をもった若い赤軍兵士を登場させている。
 戦争は、レニングラード(現サクトス・ペテルブルグ)の防衛のためにフィランド南方カレリア地方をソ連に譲渡しろ、というのがソ連政府の横柄な要求ではじまった。それを断固、拒絶したフィンランドに対して、懲罰的に侵攻した戦争であった。後年、ハンガリーやチェコで起こった民主化運動を戦車で押し潰した手法と変わりない。ソ連共産主義というものは、そういうものだった。
 その「冬戦争」の前哨戦というべきフィランド内戦を描いた映画に『4月の涙』(アク・ロウヒミエス監督)がある。
 4.jpg
北欧の小国フィンランドの近代史はスウェーデンから帝政ロシア領へと変移する屈従のものだ。1917年、ロシア革命によってロマノフ王朝が倒されるとフィンランドでは独立の気運が高まり、民族の悲願を達成する。しかし、独立後の政権をどのようにするかで対立した。ロシア革命の影響はフィランドの都市労働者たちは独立を維持したままソビエト連邦への参加を求め、資産階級はスウェーデン、ドイツへ助力を求めた。これによって武力衝突が置き、独立フィランドは内戦へ突入してしまった。この内戦を実相を双方に傾斜しないように描いた作品だ。近隣の大国に翻弄される小国の悲哀はよく描かれているし、日本人には知ることがなかった「内戦」を教えられた。
 ソ連軍の軍事侵攻ではじまった「冬戦争」だが、その時、クレムリンはフィンランドには「内戦」を闘った親ソ派がまだ根強く残存しているだろうという安易な思惑もあったのではないか。しかし、独立後の約20年のあいだに両国をめぐる国際情勢は変化し、フィンランドに民族精神が確立していた。それをクレムリンは軽視した。

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