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聖鳥ガルーダを映像で“飼育”する野心*映画『ガルーダ』

聖鳥ガルーダを映像で“飼育”する野心*映画『ガルーダ』
  モントン・アラヤンク監督
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 ヒンドゥー教の聖典を解説した書物のなかで、ガルーダは聖なる鳥として次のように解かれる。
 〈その身体は人間の姿をし、頭とくちばし、翼とつめだけが鷲のそれに類似している。顔は白く、翼は赤く、身体は黄金に輝いている〉と。
 もっともインドの生誕地から離れ、遠く飛翔し、各民族の習俗と交わって土俗化していくなかで、ガルーダの姿態も変化した。映像のなかに造形されるとき、その習俗になじんだ姿態になるのは必然だろう。しかし、日本でゴジラを造形し、その卓抜なアイデアと破壊力で国際的に認知されたとき、ハリウッドですら日本版ゴジラを踏襲せざるえなくなる。先行してアイデアを特許化したようなものだ。タイ映画『ガルーダ』は南アジアにおける汎神であった“聖鳥”を先取りしてスーパーモンスターのヒーローに仕立てたことで、映像の特許権を獲得したようなものだ。その意味で神話のなかにガルーダが飛翔する地域で今後、ガルーダを主人公とするとき本作は無視できない先行例となってしまった。

 西欧の植民地支配を免れたタイは、大戦後は死者の出る政乱を繰り返し、少数民族との武力衝突があったにせよ域内では比較的穏やかに経済発展を遂げてきた。おそらくタイ民族を統合する象徴としての国王、王朝の悠久の歴史に対する畏敬の念が民衆のあいだに根付いているからだ。政治的な国論の対立が血を流しても膠着状態に陥ったとき、それを慰撫する言葉は国王から出される。そうして対立も融和されてきた。フランコ将軍の死によってながくつづいた軍事独裁から抜け出したスペインにあって、社民主義の社会労働党が選挙に勝利したとき、その政治的な混乱も沈めたのも国王の権威だった。

 社会生活の平穏は娯楽産業を発展させるのは必然だ。映画はその有力な担い手となる。
 東南アジアでは香港が巨大な中華民族をマーケットにすること映画産業を発展させたが、東南アジア諸国もそれなりに、国内向け産業として発展させてきた。
 本作『ガルーダ』を観て、タイの映画産業の充実ぶりを今更ながらに確認できた。アート性では東南アジアではフランスに大きな影響を受けたベトナム映画のほうが優位にあるだろうが、 娯楽性ではタイ映画だろう。そのタイ映画のテクニイカルな充実ぶりを証明したのが『ガルーダ』だった。

 ガルーダは古代インドの神話を始原とする。火炎のように輝き熱を発する神鳥である。ヒンドゥー教の伝播とともに東南アジア地域まで飛翔したガルーダはタイとインドネシアで国章となり、はるかモンゴルの首都ウランバートルの都市紋章となっている。つまりガルーダの破天荒な神通力はゴジラ並みのパニック映画の主人公として、東南アジアならどこでも使えるわけだ。ヒットすれば、ゴジラ並みにシリーズ化も可能なわけだ。それにタイ映画界は先行して成功した。CG多様のモンスター、パニック映画を散々な観てきた者にとって『ガルーダ』にさほど新味があるわけではないが、完成度は高い。その証拠に国際配給された。

 神話における秘儀性、民族の習俗との関わりなどをストーリーのなかに取り込めばよりアート性が高くなったと思うが、そこまでは到達していない。しかし、ヒンドゥー教の彫塑のなかで静止しているに過ぎなかったガルーダに運動性をあたえた独創、アイデア、デザイン力は映画スタッフの優秀性を証明するし、実写とCDとの合成も見事だし、音響、音楽も効果的だ。
 ストーリー的には、バンコクの地下に眠るガルーダが蘇生し、全貌が明らかにされるまでのミステリアスな前半は独創を感じるが、中盤以降はアクション映画の範疇のなかに収まってしまったのが惜しまれるが、そのアクションシーンは平凡というわけではない。
 ガルーダを取り巻く人間模様だが、主人公はフランス系タイ人女性。美人というより可愛い少壮考生物学者という設定で、このあたりにわかに在りえない、とは思うが、そこは娯楽映画、すなおに楽しんでしまおう。それにかなり魅力的だ。国際的に通用するエキゾチックな雰囲気もある。ただ、ハーフの主人公を主人公に据えてしまうと、彼女の血を遡るようなタイの歴史の奥深さを物語には盛り込むことは至難となってしまう。今後の課題だ。
 その少壮古生物学者リーナを演じたサラ・レッグは注目。

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