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楽天的になるほど未来は明るくない~劇団民藝『冬の時代』を観る

劇団民藝『冬の時代』公演 木下順二・作
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 アンガジュマンという言葉がある、、、あった、というべきか。「社会参与」と訳される。
 ’60~’70年代、盛んに使われたが何時の間に片隅に押しやられた。劇団民藝の『冬の時代』は久しく忘れていた、いまでははにかみの感傷すら誘うアンガジュマンの響きを思い出させた。しかし、劇団の想いは観客の胸に届いたであろうか。
 
 「春三月縊(くび)り残され花に舞う」…アナーキスト大杉栄の句。春爛漫の最中、刑期を終え出獄すれば同志の多くが大逆事件に連座して処刑されていた。大杉は事件当時、獄中にあったため生き延びた。しかし、数年後、伊藤野枝ともに関東大震災で虐殺されてしまう。民藝の舞台は、大逆事件後から関東大震災のあいだの言論封殺が常態となった“冬の時代”。
 筆者が大杉の自嘲的な諦観の句を知ったのは1970年代安保闘争の渦中。それも宮本研の書下ろし戯曲『美しきものの伝説』のとして知った、いや、もしかすると吉田喜重監督の映画『エロス+虐殺』のセリフとして聴いていたのかも知れない。民藝の芝居は、戦後演劇を牽引した木下順二のものだが、時代設定はほぼ同じ。宮本も木下もすでにこの世にいない。
 宮本の戯曲の初演の頃、寺山修司の「天井桟敷」、唐十郎の「状況劇場」は前衛だった。演劇が街頭に広場に解き放たれた活況期であった。つかこいへい、野田秀樹の舞台はまだ存在しない。政治的な高揚の季節、“冬の時代”ではなかった。70年安保闘争という気流のなかで皆、何かをひとそれぞれの感性をたように触覚を動かし、懸命に模索していた時代だった。三島由紀夫の代表的な戯曲もその頃、矢継ぎ早に書かれ上演されていた。その初演も観た。

 しかし、いまはそういう時代ではない。政治的テーマでは若者を呼べない時代だ。若者を呼べず、年金世代となった元安保世代が観客の大半を占めるなら、それこそ“冬の時代”であろう。
 『冬の時代』の初日の公演を観た。桜がほぼ散り、青葉が茂る4月半ば夜。客層といえば大半が知的好奇心の旺盛な年配者となる。約3時間のデスカション・ドラマといってもいい政治的修辞に満ちた舞台に付き合うにはそれなりの体力もいる。
 客層を眺めながら、たとえば全国に組織されている「9条の会」参加者の平均年齢を思い出した。いうまでもなく、現憲法を守護しようという横断的な市民組織だ。それが木下や宮本が“冬の時代”を書いてから半世紀後の光景だ。『冬の時代』をみせたい若者の多くは雇用の安定しない職場で働き、日当に匹敵、否、日当以上の入場料など出せるわけがない。
 3・11後、原発の再稼動を阻止しようという市民が国会を幾重にも取り巻いた。それが潮のように引いた後、街頭にヘイトスピーチが流れ出した。
 『冬の時代』が訴えていることは重要なことだ。たぶん、言論の自由ということで右も左もない。
 堺利彦をモデルとした「渋六」の台詞にそって語れば、「とにかく人間自然の感情を圧し殺す社会制度は必ず改革しなきゃならんということさ」、今日的状況でいえば3・11で大きな犠牲を払いながら得た教訓を無化しようとする原発再稼動の動き、沖縄の民意を無視する辺野古の自然を破壊する軍事基地建設問題などは渋六のいう「人間自然の感情」への攻撃だろう。「渋六」はつづける「そのために闘って行かねばならんということさ。それでわれわれが死んだら、また若いものがやってくれる。われわれと同じような体験をくり返しながら、しかしわれわれより少しずつ利口になりながらね」という希望を語る。が人間は「利口」になっただろうか ? 科学 は進歩し、国境を超えた人の行き来は拡張したが、民族の対立はより深刻化し残虐にすらなった。
 
 『冬の時代』を演出した丹野郁弓が書いている。
 「芝六」の楽天的な言葉は、「今の私たちに突きつけられている刃」だと。楽天的になるほど未来は明るくない、ということだ。楽天的な言葉に対し、今の若者は反射的に暗い未来、将来性のない自分を語たるはずだ。それこそ大正のそれよりく灰色の“冬の時代”ではないのか。物の豊かさではない。心の荒廃をいっている。舞台は観客の大半を占める年金生活者たちに、次代を継ぐ現在の若者たちの現状を観ろ、と問いかけているようにも思った。楽天の“刃”で。しかし、その観客の足取りは、「政治劇」という娯楽を知的に楽しんだスノビズムのそれではなかったか・・・。
 (東京新宿・紀伊国屋サザンシアターで)  

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