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花もつ女たち №44  三岸節子 (画家

花もつ女たち №44
 三岸節子 (画家*1905~1999)
晩年の節子
 『火の山にて飛ぶ鳥』は三岸節子をモデルとした芝木好子の小説。『修羅の花』は新聞記者の林寛子が節子に〈聞き書き〉してまとめた自伝。『炎の画家』は吉武輝子による評伝。ともに強い個性の持ち主であった節子を象徴する。
 その個性が優れた絵を描かせるわけではない。むしろ、20世紀前半に絵筆一本で立つとうと目論んだ女性の個性はしばしば悲劇を誘発する鍵とすらなる。

 節子は、生まれつきの先天性股関節脱臼という障害と闘うなかで忍従と反骨を鍛えた。
 夭折した独創的で鋭敏な画家・三岸好太郎の才能と出合い結婚。好太郎の鋭利なハーモニーに触発されるように節子の創造世界は醸成されていった。好太郎亡き後も三岸の姓を捨てなかったのは、画家・好太郎への畏敬の念からだろう。

 節子が日本で繰り返し個展会場としていた東京・日本橋の某デパートがある。個人的な感想を率直に言わせて貰えば節子の絵にはまったくそぐわないせせこましいギャラリーだ。おそらく節子と某デパートの間に余人ではうかがい知れない取り決め、契約があって、それに拘束されているのだと思うが、まったく残念なことだ。そのギャラリーの空間は浮世絵あたりを並べてほど良い空間なのだが、節子の大振りな、それは必然なのだが、その絵に逼塞感を与えるような場であった。戦後の会場難という時代の悪しき余韻を遺すところだ。
 その仮設の回廊に押し込められた節子の絵はいかにも窮屈そうにしている。大きな絵も下がって、見どころを決めて鑑賞するとうわけにはいかない。下がれば人とぶつかり、片側の壁に並べた絵に当たってしまう。このあたり芸術とビジネスという問題が鬩ぎ合う場となるが、ここではあまり詮索するまい。一言、節子ほどの画家もそうした制約を受けていたということだ。

 幾度か同会場でみた回顧展のなかで、もう10年ほどまえになるか、1960年代後半から南フランスにアトリエを構えてからの成果、節子60代の気力が充実した一群の作品が並んだ、それは素晴らしかった。狭い回廊は色彩に燃え、明晰な陽光に匂い立っていた。

 好太郎と結婚して間もなく節子は和服姿でおかっぱの『自画像』を描いている。
 童女のようなたよりなげな佇まいのなかで視線だけが激しく意思的な力を秘めた絵。眼底に“未来”を湛えている。初期の代表作でもある。生き急ぐ天才・好太郎の存在はそこにはなく、自己だけを見つめている。節子は、「私の画壇デビュー作」と語っている。

 当時、好太郎は次々と斬新、奔放な個性あふれる作品を描きつづけ、画壇を席巻していた。しかし、生活は困窮していた。洋画のまったく売れない時代だった。和室ばかりの日本家屋のなかでは、洋画はおさまりが悪かった。
 節子は好太郎の才能を愛で、懸命に支えた。しかし、日本女性の資質が夫を支ええても、画家としての個性はそれを納得させない。近い将来、蓄えた熱力を沸騰させ解き放ち、描ききるのだ、という強い意思。そう自己主張しているのが、その『自画像』であった。
 その節子のマグマを火の山として眺める時代を迎えるのは戦後のことだった。しかし、一度流れ出した創作のマグマは大海に「節子」島を誕生させ年々歳々、島の面積を拡張した。そしてときどき、節子自身、火の山を飛翔して、その成果を眺めていた。その場が某デパートの個展会場だったわけだ。
節子 20の自画像
 節子の作品、そして節子自身の写真などを色々、みているとき20歳の自画像の面影が、晩年の節子のなかにそのまま、ある種の青春の輝き、そしてその世代の誰もがもっている漠然とした未来への限りない憂愁がそのまま生きていることに発見して驚いた。節子は老いてなおその色彩はあふれるばかりの自我の主張があったが、なるほどと思った。齢を重ねることの細胞の衰えはあったにしろ、それを克服しようという生命力に満ちていたのだろう。生命力の分子には、私は「不安」とか「懐疑」、自己への自信のなさ、それを隠そうとする横柄、無頼といったものがあると思う。節子はそうしたマイナス分子を抱えたまま、それを滋養とし、老いてますます闘った。

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