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世界で最も貧しい大統領の“威厳”  南米ウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領

世界で最も貧しい大統領の“威厳”
 南米ウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領
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 いま書店の児童書のコーナーで評判になっている絵本がある。『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』という。
 南米ウルグアイの前大統領ホセ・ムヒカ氏が2012年、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開かれたリオ会議(地球環境の未来を決める会議)における演説に感激した日本の絵本作家が作成したものだ。ムヒカ氏は社会民主主義者として国の舵取りをした。

 リオ会議での演説はそこに出席していた参加者を等しく感動させ、即各国語の字幕がつけられてインターネットで世界中に拡散した。ムヒカ氏の演説のキーポイントは、
 「貧乏なひととは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」で象徴されるだろう。現在のグローバリゼーションの弊害を要約している。
 「残酷な競争で成り立つ市場経済の仕組みを放置したまま、『世界を良くしていこう』、共存共栄が可能だという議論は可能なのか? ほんとうにできるのでしょうか?」とリオ会議そのものへの疑問も投げかけている。ここは地球環境の危機を議論し改善を模索するために世界の叡智があつまっているのかも知れないが、「われわれの前に立つ巨大な危機は環境の危機ではありません、現在の政治そのものが危機的な状況なのです」とも言い切っている。

 ムヒカ氏の演説は10分足らずの短いものだ。そして平易で小学生の高学年なら容易に理解できるものだ。つまりあらゆる言語に即、翻訳できる言葉であった。だから、たちまち世界中から感動の輪が広がった。日本では素敵な絵本が生まれたが、地球のどこかで同じような絵本が生まれているのかも知れない。
 「私の言っていることはとてもシンプルなものです。発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと」、それが人間本来の姿だと説く。それを阻害する消費経済を呑み込まれた現代社会の仕組を変えなければ、「環境」も破壊されつづけ、人間の幸福を育ている大地そのものが喪失すると語っているのだ。

 ムヒカ氏の言葉が平易で説得力をもったのは大統領任期中にそういう生き方を実践したことだろう。確信と自信に満ちた人の言葉はたいてい簡素なものだ。懐疑的なまま発せられる言葉ほど難渋に、ぬえのような言葉になるのが政治家の言葉だが、ムヒカ氏には無縁だ。
 ムヒカ氏は、晩年のトルストイが田舎に蟄居し求道者的に赤貧を求めたのではなく、てらいなく質素の身軽さ、生活の充実を楽しむ大統領であったからだ。そう、そうした生活を楽しんでいた、いや現在も満喫しているのだ。
 大統領職の給与のほとんどを寄付し月1000ドル前後で首都モンテビデオ郊外の小さな牧場に住み、中古のビートルを自ら運転して大統領官邸に通っていた。護衛もつけずに“通勤”できる大統領なんてそうそういない。それだけ国民に愛されていた証拠だ。
 大統領任期中は労働時間の短縮、食糧の輸出国として安定した経済運営を実践、域内の経済的な危機にも柔軟に対応した。またカトリックが国教である同国で人口妊娠中絶、同性結婚を合法化したことも特筆される。
 ムヒカ氏の政治活動の揺籃期は反政府武装組織の闘士であった。武器をもったアクティブな活動家であった。といっても当時のウルグアイは圧制的な軍事独裁下にあり、人権は政府軍によって圧殺されているなかでは武器を取って戦うしかなかった。当時のウルグアイの政治状況はサルサの歌手であり俳優のルベン・ブラデスが主演した映画が当時、日本でも公開されている。ムヒカ氏は軍事独裁下で獄中生活も体験している。そして不退転の闘士として民主化時代を迎え国会議員となった人だ。彼の資本主義批判は左翼ゲリラであった当事から揺れていない。しかし、現実政治家であった彼はベネズエラのチャベス大統領のようには極端な反米主義は採らず、市場経済の果実は活用しつつ、農業国としての生きつづける道を模索し食糧輸出国としての優位性を持続させた。
 
 ウルグアイでは大統領職の再選は認めていないので、この3月、惜しまれながら退職した。その退任の日、多くの市民が大統領官邸を去るムヒカ氏を称え、市民にもみくちゃにされながら街頭行進を行なった。その様子もまた世界中に発信された。

 ムヒカ氏をめぐる最新の情報は旧ユーゴスラビア時代から社会風刺性のある作品で世界から支持をあつめていたボスニア=ヘルツェゴビナのサラエボ出身の映画監督エミール・クストリッツァが、ムヒカ氏の生涯を映画化するという話題だ。父セルビア正教徒、母ボスニアのムスレムを両親にもった監督が左翼反政府武装組織の活動家として政治に関わり、大統領職に至ったムヒカ氏の心と思想を問う。クストリッツァ監督にはすでにアルゼンチン・サッカーの“国民的英雄”マラドーナを数年かけてルポしたドキュメンタリー映画『マラドーナ』(2008)がある。ラテンアメリカは親しい大地なのだ。そして、ウルグアイはサッカーW杯の発祥の地でもあり、その第一回大会に、ユーゴはヨーロッパ勢として参加した4カ国のひとつであった。

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