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バレエと映画 4 2本のバレエ映画『ボリショイ・バレエ』『バレエボーイズ』

 華やかに気品をそなえ、激しい跳梁と美しい静止の連鎖に満ちたバレエを、映像があますことなく追い表現できる技術が完成して以降、多くの映画が生まれた。そして、この分野の映画はまだまだ欧米偏重である。日本にダンス映画はあっても本格的なバレエ映画は生まれていない。伝統の力の差だろうが、といって日本のバレエ界が貧困というわけではない。むしろ、豊潤といっていいぐらいだ。邦楽の舞踊世界にそれは劣らないが、それはまたの機会として、最近、つづけて観た2本のバレエ映画を紹介しておきたい。

 すでに公開がはじまった『バレエボーイズ』は少年たちがバレエを通して成長する姿を描いたドキュメント。バレエ界では辺境ともいえるノルウェーから届いた佳作。
バレエボーイズ
 少年を主人公にしたバレエ主題の傑作は英国が先行した。サッチャー政権下、エネルギー政策の転換で多くの炭鉱が閉山した。その時代、炭鉱離職者問題は英国では大きな社会問題となった。映画『リトルダンサー』は職を失った炭鉱労働者を父にもつ少年が、父が期待するボクサーの道を外れ、しなやかな意志でバレエを学びはじめる話。社会性とバレエが見事に融合した作品だった。その少年はやがて名門ロンドン・ロイヤルバレエのプリンシパルとなる。
 『バレエボーイ』の3人の少年たちも名門からの声が掛かることを期待して13歳から16歳までを練習に励む日々をつづり、一人だけロイヤルバレエから声が掛かる。それまでの努力と研鑽の日々に容赦なく甲乙つけられてしまう世界。名門から声が掛かってもデビューを意味するわけではない。少年たちの成長物語のなかにバレエ、否、自己実現するための刻苦を冷徹にみつめた秀作だ。大戦後、バレエを革新的に牽引しているのは男性舞手たちだろう。シルヴィ・ギエムや、賛美者と批判者の声高いゆえに革新的といえるピナ・パウシゥの振り付けなどの活動は特筆すべきとしても、やはり男性舞手たちを先導者とすべきだろう。

 しかし、伝統的なロシア・バレエはやはり女性舞手にスポット浴びせる。といってロシアからはヌレエフ、バリシニコフはじめ多くのロシア男性舞手が西側に流出、亡命して大きな仕事をパリやニューヨークで行なった。
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『ボリショイ・バビロン』。いうまでもなくモスクワの中心に建つロシア・バレエの殿堂、そのボリショイで2年前、芸術監督が覆面の男に硫酸を掛けらるという事件が起きた。恋人を主役にしてもらえかった腹いせに犯行に及んだ、と言われた。事件は世界中に流れ、筆者も日本の新聞で読んだ。映画はその事件の真相を英国の映画陣が取材するという手法で舞台裏からボリショイを描いた貴重なフィルムだ。
 当時、筆者が贔屓にしていたニーナ・アナニアシヴィリはすでに後景に退いた。彼女のデビュー期、ボリショイで『ドン・キフォーテ』でその清楚な華やぎに魅せられている。
 ファッション界を俗に「綺麗な女たちの醜い世界」というが、バレエもまた優雅な舞台の醜悪な世界ともいえる過酷さがある。しかし、その舞台の袖から眺める、いや、記録上、カメラが捉えたステージはやはり完璧な美に満ちている。断片的に取られた舞台袖からのアングルから捉えたステージすら絵になってしまう。それがボリショイの力だと今更ながらに驚嘆する。
 ロシアは秋がいちばん美しい季節。“黄金の九月”という。そろそろボリショイの新しいシーズンがはじまる。その時期にあわせて公開される映画だ。
 
 余談になってしまうが、最近のバレエ映画の傑作といえば、『ブエナビスタ・ソシアルクラブ』で音楽映画の素晴らしさを造形したヴィンダース監督が撮った3Dの『Pina/ピナ』(2011)だったろう。しかし、ヴィンダースははたしてピナの世界をダンスのカテゴリーで撮っていたのだろうか?

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