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ラクビーW杯 インビクタス(屈服しない)者たちの勝利の時間差

インビクタス(屈服しない)者たちの勝利の時間差
 ~ラクビーW杯における南アフリカの1995年、そして20年経って

 今更、ここで繰り返すまでもなく実に感動的な試合だった。
 80分の終了間際、ゴール前でペナルティーを獲得、ここでPGを選択していれば同点で終了、引き分けに持ち込むことができた。しかし、PGを選択せず果敢にトライに挑戦、勝ちにこだわった。しかもロスタイムでのなかの選択、反則を犯せば、その時点で負け、となる薄氷のなかで挑戦、、、、後は書くまい、、、、

 この最後の3分はこの試合の凝縮、象徴そのものであった。事実は小説をより奇なりというが、それを衛星放送のテレビの画面、インターネットを通して世界同時体験をさせたといってよいだろう。まるでスポーツ映画のクライマックスそのものの展開であった。
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 ここで映画好きのラクビーファンなら誰だって2009年に制作されたクリント・イーストウッド監督の映画『インビクタス』を思すだろう。

 インビクタスとはラテン語で「征服されない」「屈服しない」という意味だが、日本代表のロスタイムの展開はまさに「屈服しない」者たちの勝利であった。
 そして、負けがきまった瞬間からはじまった南アフリカの選手、そして同国ラクビーファンは否応もなく1995年、ラクビーW杯をはじめて自国開催、W杯初出場、そして初優勝というミラクルを演じた、あの栄光が遠く去ったことを痛切に噛みしめたことだろう。

 今回、イングランド・ブライトンのスタジアムに翻った国旗は日章旗と、南アのレインボーフラッグだが、その南ア国旗は1995年のW杯の主催で世界に認識させたものだ。もう、アパルトヘイト時代の西欧の植民地であったことを思い出せる以前の国旗の存在など忘却の彼方だ。
 95年の南アの代表チームにアフロ系選手はたったのひとりしかいなかった。2015年、それが様変わりした。実力本意で選ばれたであろうというナチュナルな配分である。南ア・ラクビーの成熟であるともいえるだろう。

 95年、何故、ミラクルを演出することができたか、それはアパルトヘイトが撤廃され、25年の獄中生活から解放されたネルソン・マンデラが大統領に就任し新たな国家再建の事業、それは幾多の苦難を乗り越える民族和解の道を開拓することであった。その象徴的なイベントとしてマンデラはW杯に価値を見出だした。
 同国の人口構成をまったく反映しない代表チームに、国民は冷ややかだった。マンデラもそれを十分承知の上で代表チームを激励した。
 「きみたちが新国旗の下で国民の期待にこたえて勇敢に戦う姿こそ大義であり、民族融和の象徴となる」と。
 この時、選手たちはそれまで国のアパルトヘイト政策のため国際試合を禁じられモチベーションのあがらない状況で練習を積んできたことの弛緩を一挙に絞ることになる。しかし、基本的な実力がなければそうそう国際試合に勝てるものではない。それを後押ししたのが、試合を重ね勝利すごとに多数派のアフロ系ファンが声援を送るようになった。その声におされるように決勝戦まで勝ちすすんだ。
 マンデラの政権基盤づくりにラクビーW杯は大いに貢献したのだった。勝利を重ねるたびに世界は否応もなくうち振られる新国旗レンボーフラッグを認識するようになったからだ。

 それから20年、マンデラは故人となり、民族和解は進んでいるとはいえ、貧富の格差はいっこうに縮まらず、相変わらず白人層が国富の多くを占有する状態のなかで、アフロ系労働者の失業率は相変わらず高く、犯罪もここ数年増加の傾向にある。1995年、あたらしい南アの夜明けもすでに古色に染まりはじめている。

 経済政策で有効な手が打てず、といった状況のなかで、もはやラクビーが求心力となるほど南アの現実は甘くない。もう国民にはラクビーに甘い“夢”をみなくなった。今回、日本戦で最終盤で手痛い逆転を食ってしまったのは走りきった後の残余のエネルギーを再燃焼させる発火剤が南アになかったからだ。日本にはそれがあった。

 いま、南アの代表チームに必要なのは宿舎で映画『インビクタス』を観ることではないのか? そこには南ア・ラクビーの原点があるのだから。映画でマンデラを演じたハリウッドを代表するアフロ系男優モーガン・フリーマンは、マンデラ自身が、インタビュー記者に答えて名をあげたことで実現しているのだから。
 
 今、世界中のひとが20世紀の偉人としてネルソン・マンデラの闘争の生涯をしるだろう。しかし、現在の南アの大統領の名を知る者はかぎりなく少数派だろう。

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