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花もつ女たち №57 マリア・カラス(ギリシャ ソプラノ歌手 1923~77)

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 歌劇『トスカ』の「歌に生き、恋に生きて」の詠唱(アリア)を息を殺して待ちかまえる・・・。
 同時代にステージに接することはできなかった者もいまはデジタル化された最良の音でマリア・カラスのソプラノを聴ける。至福のときが訪れる。「清らかな女神よ」(歌劇『ノルマ』)のアリア……名唱を恣意的に並べる贅沢を誰もが共有できる時代になった。

 偉大な価値を有する音楽も何時でも場所を選ばずイヤフォンで聴ける時代だ。数ヶ月、いや数週間しか鮮度をもたない安手のポップスにカラスの詠唱を混在させて聴くことを誰も咎めやしない。
 言い知れぬ義憤を覚える。
 カラスが最良の詠唱を聞かせるためのたくまざる努力、喉を維持するために控えたあまり にも大きな犠牲、そしてプリマドンナとして頂点を極めた芸術家の孤独。幸せだったとはとてもいえない結婚生活、船舶王オナシスとの悲恋。引退してから家政婦との二人で過ごしたパリでのながい仮寓(かぐう)・・・。
 米国ニューヨークでギリシャ移民の貧しい家庭に生まれ育ち、刻苦の末、自己実現をしたサクセスストーリーはすでに繰り返し書かれてきたし、今更、カラスの芸術の瑕疵(かし)を見つけようなどという下劣な者もいなくなった。

 カラスが支障なく歌いつづけた歳月は13年、大目にみても15年にすぎない。
 1959年以降、声は急速に衰える、と同時にカラスは国際社交界の花形として名声のなかに生きることになる。私たちがいま繰り返しカラスの詠唱を再生しているが大半が59年以前の録音だ。一時的に復活するけれど全盛期の残滓である。
 
 聴衆は何時の時代にも薄情 で酷 だ。全盛期を過ぎたカラスのステージを観(み)にゆく観衆は、「歌」よりカラスと劇場空間を共有することに大きな代価を支払ったに過ぎない。最良の「歌」は自宅のレコード棚に収まっているのだ。
 この世に歌劇が存在する限り、カラスの名声は毀損されない。人の声の美しさを天空まで届かせたディーヴァだったから。

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