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プエルトリコの独立問題と映画

プエルトリコの独立問題を扱った映画『テロリストを撃て!』(原題 A SHOW OF FORCE)

 プエルトリコの“良心の囚人”オスカル・ロペスのことを7月初旬に本ブログに掲載してから(原稿そのものは6月初旬記)、米国自治領の島国に少し関心をもつ人が増えたようだ。ラテン音楽ファンには、リッキー・マルティンを筆頭にたちまち両手の指がおれるほどの歌手を数えることができるだろう。往年のラテン音楽ファンならトリオ・ロス・パンチョスの創設メンバーにプエルトリコ出身者がいたことを想い出すかも知れない。
 数日後にノーベル平和賞の発表があるが、ロペスが受賞してもおかしくない。たぶん、候補者の一覧表に彼の名前も記載されているのだろう。
 ロペスのことを書いたり調べたりしている頃、プエルトリコの債務問題は緊急課題として俎上していた。そして、原稿が活字になるころには事実上のディフォルト(債務不履行)に陥った。米国にとっては地方自治政府の経済破綻となるが、財政援助を行なうことはないだろう。かつて自動車の“都”デトロイトが破産したときも連邦政府は助言はしたが救済措置はとらなかった。プエルトリコが州ではなく自治領であるため連邦破産法は適用されないから問題は深刻だ。そして、プエルトリコの独立派は、この経済危機という“好機”を利用して、その声を高くすることもできない。何故なら独立はさらなる経済負担を強いることになるのは明白だから、おいそれとはできない。独立しても、債務を支払う義務は消えないからだ。カリブの小国ハイチは、独立 と引き換えに巨額の債務をフランスに支払いつづけ、今世紀まで最貧国の汚名を強いられた。革命ロシア政府はロマノフ帝政時代の債務を西側諸国に返済しつづけていた。確実にいえることは、米国本土への出稼ぎ者がさらに増大するということだろう。観光も、キューバが米国と国交正常化の道を進むなかでビジネス規模は縮小していくだろうから、先行きは不透明だ。

 プエルトリコの経済問題を課題にするつもりはなかった。ここで書きたいのは、ロペスが活動していた時代のプエルトリコを描いた映画がアメリカで制作されているので、それを紹介することである。
 プエルトリコを舞台にした映画や、プエルトリコで制作された映画というのはけっこうあるが日本ではほとんど黙殺、というか関心をもたれない。
 数年前、ジョニー・デップ主演の『ラム・ダイアリー』という佳作があった。1960年代のプエルトリコを描いた映画で、デップは実在した新聞記者を演じた。プエルトリコの自然環境を破壊する米国企業の経済進出を糾弾した社会派作品だったが、これだってデップが主演していなければ日本で公開されることはなかっただろう、という映画だ。
 スペイン市民戦争後、共和派の人びと、そのシンパの多くがラテンアメリカ各地に亡命した。プエルトリコにもやってきた。市民戦争の勃発期にフランコ王党派に暗殺された詩人ガルシア・ロルカを描いた映画が、プエルトリコに亡命した両親のもとで育った青年の視点から撮られている。この日本公開も知名度のたかい詩人の物語だったから実現したのだろう。米国映画ではなくプエルトリコ映画として公開された。制作資金をプエルトリコの経済界が提供していたが、今回のディフォルトの影響をどれだけ受けただろうか。
 そして、もう一遍の映画がここにある。『テロリストを撃て!』。劇場公開はされなかったがVHSでは発売された。むろん日本ではDVD化されることはないだろう、とおもって急遽、紹介する気になった。オスカル・ロペスを理解する資料になるとおもったからだ。
テロリストを撃て
 1978年、プエルトリコ自治領制定記念式典の最中、独立を志向する3人の過激派が放送塔(プエルトリコでは「東京タワー」的存在)を襲撃・・・しかし、それは罠で、待ち伏せする警察隊によって過激派の2人が射殺される、という事件が起きた。
 この事件は、やがて現状維持派ないしは米国の州昇格を志向する自治州知事を再選させることになる。しかし、その仕組まれた“事件”は女性TVレポーター(エイミー・アーヴィング)の活動によって真相が暴かれてゆく。米国映画だが、立場は、明白に穏健独立派、ないしは自治州での権限を独立国なみに高めようと志向する立場に傾斜している。
 製作・脚本は米国人だが、監督はブラジルのブルーノ・パレット。本作の7年後、軍事独裁下のブラジルで起きたリオ・デ・ジャネイロ駐在の米国大使が過激派に誘拐された事件を取り上げた『クワトロ・ディアス』や、さらに日本でも評判になったリオのスラム街の少年ギャングたちの生と死を東映やくざ映画全盛期の深作欣二監督ばりの実録タッチで描いた『シティ・オブ・マッド』などを撮る才能だ。

 プエルトリコ事情が日本ではよく知られていないということで、劇場公開はなくVHSでの発売となったが、冷戦下のカリブ圏でキューバに近いプエルトリコに浸透するキューバの影響というものに米国、ないしはFBIは神経を尖らせていたか、といったことがよく伝わってくる映画だ。レポーターの上司に名優ロバート・デュパル、主都サン・ファンでFBIのエージェントとして働く、映画では悪役となる男に『ラ・バンバ』などチカーノ役をさまざまなキャラクターで演じきっているルー・ダイアモンド、そして人権派のプエルトリコ検察官にアンディ・ガルシアなどが配されている作品だから、常識的に考えてもB級映画ではありえない。つまり、米国でも1978年の事件は関心事の高いものだったということだ。
 その事件の文脈のなかでオスカル・ロペスたちの活動があるのだ。ということを知ってもらいたいために敢えてVHS版しかない『テロリストを撃て!』を記録しておきたいと思った。

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