スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ふぞろいの林檎

ふぞろいの林檎
 
1980~90年代、『ふぞろいの林檎たち』というテレビドラマがあった。パートⅠからⅣまで4話シリーズで脚本家、山田太一の代表作となったものだ。ウィキペディアの概要によれば、「とある架空の四流大学を舞台に、学歴が恋愛や進路に暗い影を落としながらも、それを懸命に乗り越えようとする若者の姿を描いた作品」とある。
 秋になるとスーパーの果物コーナーの主力になるのが林檎だが、いつも感心というか、思っていることに「なんてみんな形よく見映えが良いのだろう」とまず思い、つづいて、「見栄えは悪くても味は変わらないの」となる。形悪く見映えのよくないものはジャムとかジュースに加工されるのだろうが、数年前から形の悪い、大きさも均一でない林檎が生鮮野菜や果物も扱う100円ショップでも常時、ならぶようになった。種類も何種かあって選べるのが良い。
 形、見映えがよくない分、人の手が入っていず、農薬サービスも少ない、と思いたい。ワックスで磨かれていないのも良い。美人でもイケメンでもないけど、どっこい成長し、売りごろを迎えたよ、と主張しているようで、そかそか、と手に取ってしまう「ふぞろいの林檎」たちである。
 あのドラマ、おそらく山田が1960年代後半、テレビから映画にとヒットした『若者たち』を念頭においたシリーズであったことは明白。60年代はまだまだ「ふぞろいの林檎」が当たり前に店頭に並んでいたのが、70年代以降、急速に「そろった林檎」の時代になってしまい、バブル期は身の置きどころも失った。
 けれど、非正規社員が4割を超す時代になってから、また「ふぞろいの林檎」が店頭に並びだした。・・・とそんなことを思っていたら、そういえばメキシコ在住中、メキシコやグァテマラの林檎についてなにか書いていたなぁ、と記憶をたどって切り抜きを収納したファイルをごそごそやっていたら、下記のような雑文がでてきた。1998年10月頃に書いたものだが、彼の地の事情はいまも変わらない。

 *   *   *

 10月、メキシコでも自国産の林檎が出まわる。キロ当たり10円から15円といったところだ。形は大雑把にまとまっている、という程度で傷あり凸凹ありだ。
 昨年まで暮らしていた中米グァテマラでも同じ時期、自国産の林檎が出まわる。熱帯の林檎だが、この国は高地に寒冷地帯が多く、林檎を育て入る栽培適地はたくさんある。
 もともと見映えを気にしない土地柄。市場にいけば地べたに大きな籠をおいて、そこに放り込み、客はそこからゴソゴソと手を突っ込んで適当に選ぶ。ゴソゴソを繰り返していれば、林檎に傷がついたりするが、売り手さんもいっこうに気にする様子がない。メキシコ以上に不ぞろい、傷だらけだが皮が厚いのか、皮を剥いてみても実の痛みは少ない。
 そして、メキシコもグァテマラも甘さは薄い。
 日本のように甘い林檎は米国資本の大きなスーパーにいけばメキシコでもグァテマラでも手に入る。むろん輸入物だから高い。てかてかとワックス掛けも行き届き、農薬サービスをたっぷり受けて形も揃っている。
 というわけで、ここ数年、私はメキシコ・中米産の林檎しか食べていない。それで、たまに日本に帰り、林檎を食べようとスーパーに行くと、その形の均一さにあらためて感心する。それはまるで工場から出荷された「加工品」のようにみえる。
 (日本に復帰してから数年して、そういう林檎にすぐ馴れてしまった我輩=後日記)
 かくも統一され見事といえばオミゴトだが、とても自然のなかでのびのびと育った、とは思えなかった。
 林檎が周囲を見渡して、「みんな合わせて育ちましょう」と談合した結果か、と思ってしまう。
 ちなみにその林檎は「陸奥」という銘柄である。林檎みずから実を防護する皮を薄くすることはありえない。人の知恵で薄くなったものだ。
 太陽と土によって生かされる野生の名残りすらない。酸っぱい野性味あふれる林檎はどこへいったのか。

 日本で売られているレモンと中米産のレモンについて他紙に書いたことがある。日本では果汁がたくさん取れる皮薄のものばかりだで、こちらの皮が厚く硬いレモンとはまったく別物だ。ナイフでザックと刃をいれないと汁が溢れてこないのが野生に近いレモンなのだ。このレモンがグァテマラではただのように安い。安いから塩コショウのように気軽使う。
 乾季は節水、断水が日常的に起こるから、水変わりに、たとえばレモンを輪切りにしておいて、トイレから出た後に、その汁で手をゴシゴシすることもある。
 果物、野菜のふぞろいの話しを書いていけば切りがない。
 たしかに果物や野菜を等質にするのは栽培技術の進歩だろうし、収穫した後の選別で付加価値を高めるのも理解できる、が。
 「陸奥」は名からして青森の厳しい自然のなかで改良されたものだろう。しかし、爪が擦っただけで傷がつくような薄皮林檎を出荷する農家の苦労は大変だろう。おそらく、その出荷にかかるコストは価格に上乗せされているのだろう。

 (そして現在、100円ショップで「ふぞろいの林檎」が旬の味として並ぶようになった。甘味も薄い。でも、それは本来の味に近いのでは。そんな廉価な林檎をかじりながら、筆者はグァテマラやメキシコの日々を懐かしく思い出すのである=後日記)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

上野清士

Author:上野清士
店長の最新著書

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。