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花もつ女たち №61 シュザンヌ・バラドン (モデル、画家 フランス 1865-1983)

シュザンヌ・バラドン (モデル、画家 フランス 1865-1983)
バラドン 自画像1927年

 バラドンの名は、自ら絵筆を執らなくてもルノアール、シャバンヌ、ロートレットの絵のなかで永遠の生命を持っている。バラドンはモデルとして一群の印象派の才能のまえで仕事をしてきた。フランスのモデル女としては、キキにならぶ逸材だった。
 ドガの仕事とも協働している。そのドガがバラドンに絵描きとしての天賦の才能を見い出した。ドガはバラドンがふと描きとめた馬の動態に瞠目(どうもく)した。馬の筋肉の動きまで描き出されたようなデッサンに、彼女の鋭い観察眼、そして、それを描きとめる線の確かさをみたのだ。
 「サーカス団で馬と暮らしていたから、そんな の描くの簡単よ」とバラドンはドガの前で言い放った。19歳の少女の言葉である。
 一枚のデッサンがきっかけでバラドンはドガのモデルをつづけながら本格的に絵を学ぶが、すでに他者に侵食されない固有の世界を彼女はもっていた。絵を習いはじめれば、それが仕事に結びつくような腕前になることはバラドンにとって重要なことだった。やがて、モデルとしての仕事も加齢とともに減っていくことは必然であったからだ。父不在であったバラドンにとって、生き抜くことが闘いだった。
 10歳で裁縫師見習いとして働き出し、子守り、ウェートレス、そしてサーカスの曲芸師に・・・・・・肉体が女として成長して以降、より見入りの良い仕事として裸体を晒すモデルとなった。娼婦であっ たという説もあるが、そんな若いバラドンにとって裸体を晒すことは、さほどの羞恥ではなかったのかも知れない。そこは芸術の“前衛”の都パリであった。
 勝気な少女は、世間の冷たい視線を撥ね返す強さをもっていた。そして、恋多き女。フランス文化史に名を遺す才能たちと浮き名を流す。
 18歳で男子を出産。父親の名は不明。バラドンが隠したわけではない。当時、DNA鑑定などできなかった時代、彼女自身、複数の男たちとの交渉を重ねていたため父親を特定できなかったのだ、と伝記作家は書く。ルノアールの子、という説もある。
 男の子は長じて、パリの街路を憂愁の気配をとどめた抒情で謳いあげる画家ユトリロである。

 ユトリロ30歳の肖像を、バラドン56歳が描いた。バ ラドン円熟期の傑作。絵の中のユトリロは髪も、口ひげの手入れもよく、なかなかおしゃれで神経質そうだが明晰な頭をもつ青年にみえる。伝記は、当時のユトリロは極度のアルコール中毒で暴力沙汰が絶えず、警察にやっかいになること日々だったと記す。母性愛は最愛の息子に、かくあれと「理想」を求めたのかもしれない。あふれる親密な気配はバラドンの絵の特徴である。
 ユトリロのパリの街路は、画家の心象光景だとすれば、いつも淋しい。寂寞と冷たい乾燥した風邪が吹いているようだ。けれどバラドンの描くパリの街路は石畳はいつも光を受け止めているように思う。
 バラドンが画家として多作だった時期は、息子ユトリロより3歳年下の画家ユッテルと同棲していた1909年前 後。そのユッテルに、「小学生でも描ける絵」とかつて酷評されたユトリロの絵が、はじめて公に認められた時代でもあった。

 *冒頭の絵はバラドンの自画像。60歳を過ぎてからの自画像だが、その像から彼女のおおなる覇気、前傾姿勢がみえる。バランドは今日も“ユトリロの母”と形容されがちだ。大正末期にはすでに日本でも紹介されていたユトリロに比べると、バラドンの本格的な紹介は1972年までまたなければならなかった。『バラドンとユトリロ展』という名で開催された企画はユトリロ人気もあって全国7都市で開催された。総数200点強という本格的なもので、ここではじめてバラドンの作品が80点以上、紹介されて認知度が高まったといえる。そこにはバラドンがモデルとして活躍していた20代の多数のデッサンも紹介されていた。そして、本文中に紹介したユトリロ30歳の肖像画も紹介された。

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