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プーチン独裁下のロシア映画 3  『チェチェン・ウォー』 

プーチン独裁下のロシア映画 3 『チェチェン・ウォー』 
映画 チェチェイン・ウォー

 チェチェン紛争を描いたロシア映画のなかでは、もっともシナリオが練り上げられた作品が本作『チェチェン・ウォー』(アレクセイ・バラバノフ監督)だろう。この後に、ロシア映画におけるチェチェン紛争映画の微温的な姿勢を指弾するような映画『あの日の声を探して』(ミシェル・アザナビシウス監督/2014)が登場する。
 『あの日の声を探して』ではチェチェン語の音というはこういうものであったか、と親密感をもって語られている。
 ロシア映画のチェチェイ人はソ連邦の隷属の民という位置づけで、かつての公用語としてのロシア語に帰依しているというスタンスだった。その隷属から救ったのが『あの日の声~』であった。が、いまはまだ2002年のロシア映画を診断しなければならない。
 
 原 題は「戦争」。紛争とか内戦でなく「戦争」としている。この表題のつけ方は、プーチン政権が内政問題として欧米諸国からの批判を交わそうとした意図を明確に批判するものだ。『あの日の声~』の監督もチェチェンを国際戦争と位置づけている。
 プーチン政権は北京オリンピックの最中、世界が競技に夢中になっている時期にコーカサスの小国グルジアに武力侵攻した。その「戦争」を国境紛争と糊塗した。小国グルジアにとって国家存亡の危機だったが、大国ロシアにとっては国境紛争とみなそうとした。ロシアはこの後も、ウクライナ領のクリミア半島、東部国境地帯の強引な併合などもそうだ。だから、本作の監督が表題を「戦争」としたのは大きな意味があるし、その表題に「戦争」の醜さ、あるいは現代の「戦争」の特徴をシンボライズする意味で、そう命名したともいえるだろう。

 映画は、「人質」問題に集約されている。
 いうまでもなく今日の「イスラム国」は恐怖の常套手段として人質を残虐に処刑する。処刑執行者も仲間内での“肝試し”の通過儀礼のようにプログラマ化されている。
 小国、資金、兵員、装備に限界のある武装勢力が、大国、巨大な軍事組織に抵抗する手段として「人質」を確保し、それを担保にさまざまな作戦を取り、あるいは身代金を強奪する方法は軍事独裁政権が中南米諸国を覆っていた当時、反政府武装組織が繰り返し、有効な作戦として選択していたものだ。イスラム過激派の専売特許ではない。
 ただ、これまでの「人質」の処遇の仕方とはあきらかに違う。「イスラム国」は、人質の交換ということに興味を示していないかのように思える。だから、繰り返し、多くの人質を処刑し、その画像をネットで流しつづける。「国」ではないから、ジュネーブ協定の箍(たが)すら無視されている。

 閑話休題。映画に戻ろう。
 本作で人質となるのは、チェチェンの独立武装組織に拘束されたロシア軍のイワン軍曹(アレクセイ・ツアドブ)と、グルジアでシェークスピア劇上演のためグルジアで公演旅行中に拉致、拘束された英国人俳優の男女となる。この映画がロシアの検閲を通ったひとつにロシアと領土問題を抱えるグルジアとチェチェイン分離主義者たちとを結びつけていることもあっただろう。しかし、いうまでもなくグルジアはロシアと同じように東方正教会の教義を国教とするキリスト国であることは忘れてはならない。
 
 囚われたイワンと英国人男性ジョンは、武装勢力から身代金を調達するため解放される。もし、期限まで身代金が調達できなければ、ジョンとともに人質になった恋人の女優をレイプして殺害すると強迫される。イワンは英語が話せるためジョンが英国に出るまでの手助け要員として解放されたわけだ。
 映画はジョンが身代金調達に難渋するロンドンでの撮影も行なわれている。必然、ジョンは恋人の釈放をもとめて政府に掛け合うが、「テロ集団との駆け引きにはいっさい応じない」という立場を崩さない。そんなジョンに某テレビ局が、これからロシア、チェチェン入りしてからの行動をいっさいをビデオ撮影してくるなら、その身代金の一部を肩代わりしようと申し出る。これはリアリティーのある話だ。そして、ジョンの素人カメラのアングルはルポルタージュのリアリティーのある画像を映画に挿入することができた。この辺りの作劇もうまい。

 ジョンは200万ドルを確保することはできなかったが、ともかく期限までにゲリラたちの根拠地を戻らないといけないとロシア入りし、道案内のためにイワン軍曹の助力を求めて、彼の住むシベリアの辺境に旅をする情景も映し出される。映画がチェチェンの乾いた風土だけでなく国境をまたいで動くので退屈させない。季節のよいシベリアの光景は美しい。
 イワン軍曹は殺されず解放されたのはいいが、故郷にもどっても仕事があるわけでもなく、生きている充実感がない。そんな心の隙間にジョンの懇請が忍び込む。今度は死ぬことになるかも知れない。しかし、そこには現在(いま)生きているという実感があることをイワンは知っている。

 ゲリラの根拠地に侵入した二人、そして武装勢力に反感もつチェチェン人農民の青年たちの果敢の行動で人質となった女優を解放するところまでたどり着くも・・・その先は語るのは辞めよう、これから観る読者のために。
 

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