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[ライナー・ノーツ]  ナタリア・ラフォルカデ*21世紀の気流に乗って、天翔ける*その1

ナタリア・ラフォルカデ*21世紀の気流に乗って、天翔ける
  *ソニーミュージックEICP 254『ナタリア・ラフォルカデ』のライナーノーツ。2003年6月、メキシコ市において。
  **今年は2度、ナタリアについて本ブログで掲載しているので、ついでなのでデビューアルバムが日本で発売された際、メキシコから送ったライナーノーツがあるので、ここに掲載。筆者自身、12年ぶりに読み直すものだ。このライナー、いま引っ張り出して読んだら、やたらと長い。理由は、ソニーから、「日本ではメキシコのポップス事情がほとんど知られていないので、その辺り、出来たらアイドル事情などを取り込んで書いていただき」ということで序章、前置きが長くなったからだ。今でもメキシコ及びラテン・ポップス史として有効性があると思うので掲載しておきたいと思う。
 パートUNO(1)から、CINCO(5)まである。ながいので3回に分けて掲載。
NATARI.jpg

◇UNO(1)
メキシコにオリナラという精緻にして大胆、民族的で独創性あふれる意匠にみちた漆器があります。
太平洋沿岸に世界的なリゾート地アカプルコをもつゲレロ州、その山間の小さな町オリナラだけで創作されている手彫り手彩の漆器です。大小さまざまなお盆は外国人観光客が買い求める定番の民芸で、これに次ぐ売れ筋が小は宝石入れによく似合う小箱から、大は衣裳箱まで。基礎材にリナロエと呼ばれる香木をもちいます。
 ナタリア・ラフォルカデのデビュー・アルバムを一聴して、まず想い出したのはオリナラの小粋な小箱でした。17歳の女の子のタカラ物といえば、オトナには不可解なガラクタにしか見えなかったりするもの。たとえば原型を留めないほど破損した小物、安物アクセサリーや雑誌から切り取られたアイドルの写真あたり。少女17年の軌跡が、持ち主だけが知る大切な思い出となって小さな箱に満ちている。ナタリアの音楽の手箱はまさにオリナラの漆器だと思いました。
 全14曲そのものが、貴重な、かけがえのないタカラ物、ナタリアの音の小箱は17歳の少女の危うさと大胆、オトナと子どもの境いの不安定さと、身勝手、あるいは野心、小悪魔性も詰まっています。オリナラとは先住民言語で、「地霊」の意味。そう、ナタリアのデビュー作はメキシコ及びラテン・ポップス界ではちょっとした衝撃であったのです。
 ナタリア登場の華やかさは、南米コロンビアのシャキーラがローカル・スターからラテン世界に飛躍すべくメキシコのTVネットを使っていた時期を思い出します。
 シャキーラは母国でしっかり実績を積み、準備体操おこたりなくメジャー・デビューしたのですが、ナタリアの場合、大胆不敵、いきなりメキシコのへそ、中心ソカロ(憲法広場)の中央に立って巨大な国旗掲揚台に駆け上がり、ヒョイ! と跳躍してスターになってしまったという感じがするのです。いわば苦労知らず・・・。
 ナタリアに言わせれば、それなりの苦労も努力もしてきたのよ、曲づくりに苦心惨憺なんて他人に分かりませんよ、となるのかも知れません。ごもっとも、ごもっとも、です・・・モーツァルトを引き合いに出すのは、ちょっとためらいますが、ウィーンの放蕩児の音楽に努力や苦労の痕跡がほとんど見られず、天然自然に湧き出るインスピレーションに導かれるまま天上の旋律を描いたように、ナタリアもまた17歳の小生意気盛りの感性が受信した天上の声にこたえ、スラスラと曲を書いたというような印象を受けるのです。歌詞、曲とも彼女の手になります。名門メキシコ自治大学演劇科卒業の才媛で、ときに詩を書き、芭蕉をスペイン語訳もする女性にナタリアの歌詞を示したところ、「う~ん巧み」と感心するのでした。
 衝撃、と書きました。何故、「衝撃」かといえば、アイドルの質的変化を実現したように思うからです。時代の大気とともに生きるアイドルとは、その季節の若者たちの気分を象徴する存在でしょう。ナタリアは、21世紀初頭を飾るメキシコ及びラテンアメリカ世界の新種のアイドルとして登場したように思うのです。

◇DOS(2)
 メキシコはラテン世界を代表するアイドル量産国。量産の背景にはおおきな経済力が必要だ。ラテン世界でブラジルと拮抗する経済力を持っているメキシコは、ご存知のようにカナダ、USAともに北米自由貿易協定(NAFTA)を構成する大国です。
 アイドルが輝きつづけるためには、その輝きを旺盛に消費してくれる若者たち主導の文化が育っていることが必要でしょう。主導が大げさならば、メキシコでは小遣いにゆとりのある子どもたちが1970年代後半から増えてきて、比例して嗜好がうるさくなり独自の消費文化が発芽した、とでも記しましょう。
 メキシコが生んだアイドルとして、まず象徴的な例にリッキー・マルティンを取り上げます。プエルトリコのジャニーズ系アイドル・グループ、メヌードの最年少メンバーだったリッキーは、メキシコの芸能プロの手によって脱退が画策され、歌番組、歌謡映画などに出演を重ねてラテン圏全域に顔を売り、しっかり地盤を築いた後、グローバル市場に目指したタレントでした。ラテン歌謡の王道をゆくルイス・ミゲルも10代を見目麗しい美少年スターとして活躍をつづけた後、オトナの鑑賞にたえるボレロの世界に君臨することになったのです。
 アイドル少年の例は、アイドル少女とのバランス上、ちょっと書いただけ。ナタリアの登場以前のメキシコのアイドル少女たちの系譜をかんたんに紹介しておきたいと思います。
 ナタリアはいうかも知れませんね、「あたしは絶対、ミーハーではなかったわ」「そんなのに夢中になることなんて、なかったわよ」と、口を尖らせて否定するかも知れません。しかし、誰であろうと密室にこもっていない限り、時代の大気を吸って成長するものです。


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