スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

 [ライナー・ノーツ] ナタリア・ラフォルカデ*21世紀の気流に乗って、天翔ける*その2

ナタリア・ラフォルカデ*21世紀の気流に乗って、天翔ける その2

◇TRES(3)
 メキシコの少女たちが等身大の親近感をもったアイドルを獲得するのは1982年、ティムビリチェという10歳前後の美少女・美少年7人のユニットがデビューして以降のことです。
 それ以前、『クリクリ』という幼児向け、あるいは小学校低学年向けに制作されていたテレビ番組がありましたが、「そんなの子どもぽっくて」という子たちはみない。そんな、おませな少女たちは、世代の空白があって、いきなりお姉さん、お兄さんたちが熱狂しているようなアイドルたちを共有するしかなかったのです。ですから、おませな少女たちを満足させる等身大のスターが要請されていたわけです。そこに登場したのがティムビリチェでした。
 このユニットから後年、いや現在、ラテン・ポップス界をにぎわしているスターたちが幾人も輩出します。まず、シャキーラ登場以前、もっとも勢いがあったのがタリア、いま、シャキーラを追ってパウリナ・ルビオが全力疾走しているように思います。その二人とともティムビリチェで活躍した人気者でした。そのふたりより先行して人気があったのがサーシャ、あるいは現在、連続TVドラマになくてはならない存在になっているエディツ・マルケスがいます。
 子どもをターゲットにした消費市場が拡大し、それにたずさわる労働者が増大するのは経済力の成熟度を示すものです。メキシコはそういう時代を迎えていたのです。
 ティムブリチェ、デビュー以前の数年間、メキシコ経済は年率8~9%という右肩あがりで経済成長をつづけていました。原油の生産、輸出の増大という背景がありました。
 中産階級が着実に増加し、子どもの衣食・教育費だけでなく、玩具や嗜好品にお金を使う、使える親たちが増えたのです。
 ところがティムビチェがデビューした82年は、それまでの高度経済成長がにわかにほころび、対外債務の増大、インフレ、通貨の大幅な切り下げが行なわれたのでした。当時、日本の新聞は、いまにもメキシコでクーデターが始まると物騒な記事を掲載したものです。また、国連の中南米経済委員会や、メキシコに巨額を投資していた先進諸国も独自の調査団を派遣、貸した金を取り戻せるか、と実態調査を行ないました。
 で、各国の調査団がメキシコでみたものは・・・経済の低成長に入ったおかげで公害は減少、消費ブームは去ったことは確かだけど、堅実な生活にギアチェンジした庶民の姿でした。
 メキシコに限らず中南米諸国の市民は、政府の経済政策をまぁ、はなから信用していない。だから、好景気の時期も稼いだ金、メキシコでは通貨ペソとなりますが、日本人のように貯めこまず、せっせと耐久財、不動産など資産価値のある商品を購入し、のこったペソはより安全な通貨として米ドルに換えていました。ですから、ペソが暴落してことによって資産が増えたという人たちがたくさん出たのが実情でした。むろん、米ドルにアクセスできない貧困層、特に先住民社会は不況の波をもろに被ったことは間違いありませんが・・・。
 ティムビリチェは、国の経済破綻を尻目に小金をもっている中産階級の子どもたちをターゲットにして輝くばかりの大成功。その人気ぶりを刺激され、柳の下のどじょう、と美少女・少年、タレント性豊かな子役発掘に血道をあげるレコード会社、芸能プロが出てきます。
 80年代のメキシコは雨後のタケノコのように小生意気な子どもユニットがたくさんデビューした時代でしたが、後発組の寿命はたいてい短かった。メキシコ最大のTVネット・テレビサが、小さな綺羅星をあつめ英才教育にたっぷり資金を出したティムビリチェに、促成栽培のユニットは太刀打ちできなかったということです。
 90年代に入るとティムビリチェのオリジナル・メンバーはほとんど脱退し、入れ替えが激しくなります。サナギから蝶へと羽ばたく者がつぎつぎと出てきたのです。そして、ティムビリチェそのものも停滞期に入ってしまいます。その間隙を縫って、新しいアイドルが登場してくるのは世の常。この時代、個性的な男女混合ユニットが数組、登場します。
 ガリバルディ、KABAH、そしてオンダ・バセリナといったグループです。なかでも、02年、自然消滅的に活動を停止したティム振りチェに変わって人気を獲得したのがオンダ・バセリナ、現在のOV7です。
 ナタリア・ラフォルカデのデビューをアルバムを手がけたプロデューサー、ロリス・セロニこそ、メキシコのローカル・アイドルであったオンダ・バセリナを汎ラテン圏の人気者にした練達の才人でした。OV7とほぼ同時期にナタリアの個性を引き出し、デビューさせたのです。

 ティムビリチェを脱退したタリアはメキシコ版「おしん」ともいえる連続TVドラマ(スペイン語圏ではテレノベラという)に主演し、遠くの東南アジアまで放映されることになり、フィリピンなどで絶大な人気を獲得しました。その当時、ルセロという正統派美女もアイドルの座にありましたが、そういうお嬢様タイプは合わないという少女たちの人気を獲得したのが、じゃじゃ馬タイプのグロリア・トレビでした。その後に、一時はルイス・ミゲルの連続公演・動員記録を塗り替えようか、という勢いもあった(すぐ失速しましたが)フェイ、というアイドルが彗星のごとく登場しました。
 ・・・と例にあげてきたアイドルは、いわば天然素材の美に、海千山千の芸能プロがあれこれと手を加えたところが多かったと思います。曲つくりから立ち上げ、自前で自己主張しようという意欲にかけていました。けれど、ナタリアは出足から違っていた。
 デビューアルバムすべて自前の作品で勝負に出た。旬な素材、柔軟な可塑体を名うてのプロたちが調理し、賞味し、盛り付けて食卓に並べた、それが本作でしょう。
 歌の素材は天然のナタリアのもの。それはある意味でオリナラの小箱にすっぽりおさまり切らない凹凸だらけ不ぞろいであったと思います。これを手際よく調理したプロデューサーの腕は無視できません。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

上野清士

Author:上野清士
店長の最新著書

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。