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署名アラカルト 2 美輪明宏

その2
 幽冥的陶酔型 美輪明宏
美輪明宏

 初見の人はまずこの署名が誰のものか分からない。にわかに判読できない。著書への署名だから、これが美輪さんのものだと認識できるのだ。なるほど最初の「美」がそれらしくみえる。しかし、「輪」以下はぶどうの蔓から想起された文字といわれるコーカサスのグルジア、アルメニア文字のように絡みあって地表に落ちてゆうく感じだ。けっして気持ちのよい書体でないが、そこに何か隠喩があるのだと思う。

 美輪さんは「女優」で歌手としられるが、著述業といっても通じるぐらい多くの著書がある。その大半がいわゆるメンタルヘルスと分類されるエッセイ。あるいは美輪流“人生講話”である。そんな本に美輪さんは多く署名を記している。たぶん、そうした講演会があって、その会場で“信者”が署名を求めているのだろう。そういう美輪さんにはまったく関心ないが、「女優」、歌手としての類い稀な個性は日本芸能史に特筆すべきものだ。本名の丸山明宏で舞台に立っていた頃からひそかに注目させていただいている。一昨年のNHKの紅白で久しぶりに観た(聴いた)「ヨイトマケの唄」は昭和歌謡の傑作であることをあらためて認識させた。
 美輪さんが芸のなかに蓄積させている昭和の“傷”はわれわれ日本人が共有しなければいけないものだと思う。
 日本の今日の繁栄は敗戦直後、焦土と化し瓦礫のなかから蘇生したものだ。建築機材もことごとく破壊された時代、みな人力頼り、「ヨイトマケの唄」で自ら励まして道路一本整備していったものだ。美輪さんの歌は、そんな時代があったことを日本人に記憶させる証言の歌として、次代に遺贈されるべきだろう。
 美輪さんの署名を「幽冥的陶酔型」と書いてしまった。それを取り消すつもりはないが、すこし私観を加えたい。ナガサキの被爆者でもある美輪さんは、戦中・戦後、非業の死をみつめてきた。美輪さんの昭和とは累々とした無惨な死の記憶とともにあるだろう。不合理な死を受け入れることのできない死者たちの怨念、それを慰安しようと筆執り念じれば、こんな書体に導かれるだろう、ということだ。

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