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「ワラビスタン」と呼ばれている。蕨市とクルド人

「ワラビスタン」と呼ばれている。蕨市とクルド人

 JR京浜東北線蕨駅の周辺は飲食店を中心に人口規模に見合った商店街が広がっている。週末ともなるとそれなりの賑わいをみせるわけだが、蕨だけしかお目にかかれない光景がある。
 日本政府に政治亡命を求める一時滞在のクルド人たちが「屯している」光景である。「 」で囲ったのは日本的形容詞では、そうとしか捉えられない光景であるからだ。件のクルド人たちは友人知人たちと親交を深めているだけなのだが、行き交う日本人の目には「屯している」としか映らないだろう。とは言っても、茶髪の高校生のように便所座りでタバコをふかしているようなお行儀の悪さはない。人が通れば輪を崩して道を譲るし、険悪な視線であたりを睥睨しているわけでもない。ただ、まったく理解できない言葉が騒々しく……と大半の日本人は思っているらしい……飛び交っている小さな異空間はやはり目立つのである。そして、彼らの多くは貧しいから、街頭で「屯す」のだ。男たちの仕事は、たいてい日銭稼ぎの住宅などの解体である。首都圏で中東系の男たちがほこりまみれになって働いている光景をみたら、クルド人労働者と思ってまちがいない。言葉の不自由な彼にとってはありがたい仕事なのである。
 彼らはトルコ政府から迫害されているクルド人たちだ。蕨に在住後、不法滞在でトルコに送り返され拷問にあった少年がいた。その少年は面貌を変えて蕨に戻ってきた、と語った支援団体の日本人が証言した。
 トルコのEU加盟に難色を示すフランスやギリシャなどが人権問題を持ち出すとき、引き合いに出される被抑圧集団としてのクルド民族である。そのクルド人たちが日本の、関東の、埼玉の、蕨市に小さなコロニーを形成したのである。
 フランスはアルメニア系フランス人のロビー活動による「難色」だし、ギリシャは対トルコとのあいだにキプロス問題で係争しているからトルコのEU加盟に消極的なのだ。両国にとっての「クルド人問題」は純粋な博愛精神からでているわけではない。
 東京へ至近距離、都内より家賃が断然安い、と彼ら独自の情報網が家族親族友人知人を次つぎに呼び寄せていつの間にか小さなコロニーができあがった。彼らは蕨をいつしか「ワラビスタン」と呼ぶようになった。「スタン」は国、国家をあらわす名詞であって、日本でもっとも小さな市である蕨が「スタン」とは、と思うが、彼らにしてみれば、やっと東洋の一角に、たとえかりそめであっても安住の地を見出した蕨を「スタン」と呼びたいのだろう。世界最大の国家なき少数民族といわれるクルド人の「国家」願望はそんなところにあらわれているように思う。
 先日、家の近くの市民会館で「教育基本法改悪阻止、県民集会」というのがあった。「南京大虐殺はなかった」とか、「従軍慰安婦の強制連行はなかった」とか主張する歴史学者らが執筆した「扶桑社版歴史教科書」の監修者のひとりが埼玉県知事の指名で教育委員になった。中国の反日デモで指弾された「教科書」である。
 集会は、件の教育委員の罷免なども求めるものだった。この集会に、クルド人グループが亡命を認めない日本政府の非人権的状況を訴えるためにやってきた。アピールする場は無論、設けられた。クルド人グループはそれでは物足りないと思ったようで、主催者にクレームをつけていた。主催者は、集会の主旨と違うから、これ以上の協力は無理だと説得していたようだ。彼らの粘り強さは「生命」の危機感から生じていることは確かだろう。
 「屯し」ながら、「次の日曜日は○△集会でビラを配ろう」と相談することもあるのだろう。

*本稿は数年前に書いたものだが、クルド人を巡る蕨の状況はかわらないので、ここに採録することにした。  

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