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署名アラカルト №8 長野まゆみ 自作慈愛的創作型

署名アラカルト №8  
 長野まゆみ  自作慈愛的創作型 
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 現代の作家のなかで、長野まゆみさんほど自作を脱稿後も慈しんでいるひとはいないと思う。
 否、創作に携わる才能は皆それぞれのやりかたで愛でいるはずだろう。しかし、慈愛の発露には明白な相違がある。長野さんの場合はそれがより具体的なかたちで示す、象徴するという意味で右に出る作家はいないと思う。
 長野さんは一作毎にかならず自前で「雅印」を創作する。そして、その「雅印」を他著に流用しない。筆者がみた限り流用例は確認されていない。
 便宜上、「雅印」と書いたが、創作的な小口版画といえるものだと思う。
 それぞれの作品、物語の内容に即して、長野さんてづくりの「雅印」が刻まれる。
 それを二色以上の色を用いて捺(しる)す。二色というより、それなりに多くの本に捺すわけだから手間かけるのは大変。だから、長野さんが使用しているのはJC,JKのおんなの子たちのように品揃えの多い、おしゃれ文房具屋さんに行ってグラデーション型のスタンプ台をみつけ、それを使っている印象だ。それもメタリック顔料のものを使う。その色にあわせてローマ字筆記体で署名を記す。その意味では長野さんの新作が出るたびに、次はどんな工夫があるのかと楽しみなわけだが、彼女の描く世界にさほど共感を覚えないわが身であるから、ついでの際に確認するぐらいだ。
 写真の署名は、『千年王子』の扉にあるものだが、この作品も筆者はすんなり入っていけない世界。長野さんのファンタジーは人工的な機密空間、湿度の少ない乾いたセラミックの枠のなかで展開されているようで、そこに登場する「人物」もよくできたフェギアに人工頭脳が嵌め込まれた印象だ。ナチュラル感が希薄なのだ。本書の「王子」に敬意を表して、左の紋様が王家のエスクード(紋章)を象徴しているようだ。
 同時代のファンタジー作家といえば、筆者の好きな作家に上橋菜穂子さんがいる。上橋さんの世界には土の匂いがある。緑のそよぎがある。それがわたしには好ましい。そこでは人は傷つき、血の生臭い気配もあるし、傷は膿み、ただれることも受け入れる。 しかし、長野さんの人間は血を流しても、生臭い匂いは感じられず、膿も生じない、という感じだ。その意味では現実生活に疲れた読者には逃避のオアシスなのかも知れない。長野ワールドを溺愛する読者は現実からの遊離感を求める人たちなのかもしれない。読書しているあいだは異次元にワープしていられるだろう。日常的な重力のない世界を描けるというのも、また才能だ。
 地から浮かぶ遊離感に浸りたいと思う読者には至福の時間だろう。そして、そんな読者に支えられて長野さんは堅実な世界を次々と編んでゆく。それも小説のおおきな効用である。

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