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映画 アフリカを描く 『ルムンバの叫び』

 映画『ルムンバの叫び ~暗殺前夜』ラウル・ペック監督(2000)
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 レオナルド・ディカプリオ主演の旧作『ブラッド・ダイヤモンド』評でも少し触れたベルギーのダイヤモンド市場とアフリカとの関係性を考えているときに思い出したのが本作だ。2000年、フランス=ベルギー=ドイツ=ハイチ合作映画。ドイツ以外、フランス語を公用語とする国のスタュフ、キャストが並んだ。そして、映画の舞台となったコンゴ民主共和国(後年、ザイールと国名を改めたこともある)の公用語もまたフランス語である。約80年間、ベルギーの苛烈な植民地支配を受けるなかで、遺制として公用語に残った。

 映画は、この国の“建国の父”といってよいパトリス・ルムンバの波乱に満ちた短い生涯を、独立前後の活動に象徴して描いた政治ドラマだ。監督は幼少期をコンゴ過ごしたハイチ人ラウル・ペック。
 約2時間という通常の映画時間のなかにコンゴ独立の叙事詩を語るにはルムンバに焦点があてられる。苦難の独立闘争を経て貧しい国の舵取りを任せられた30代前半のルムンバ。旧宗主国ベルギーの国益を守ろうという旧植民地官僚や軍人たちの壁、 冷戦下、資源の豊富な新興国を影響下におこうとする米国、ソ連などの思惑もからんで暗殺される若き英雄の栄誉と挫折を可能な限り描き出した労作として賞賛したい。
 (これだけの作品を撮りながら、ラウル・ペック監督の新作というのをまったく聞かない。この映画を撮るために、序章のようにルムンバの闘争を描いた記録映画を撮っている。その続篇といってよい作品である。)

 1960年を「アフリカの年」と形容される。アフリカ諸国17カ国が次々と独立の雄たけびを上げた。
 その時代、ルムンバの名は遠く日本にも聞こえ、評伝なども刊行された。その事蹟をよくしらないまでも現代アフリカ史にかならず登場する栄光の名として認識していた。しかし、ルムンバが独立初代の首相として実権をにぎっていたのはわずか2ヶ月に過ぎないのだ。暗殺された時、35歳とい う若さであった。映画はその2ヶ月に焦点を当てている。
  むろん、コンゴはおろかブラック・アフリカ諸国について無知であっても、それなりに理解できるような巧みな作劇があり、監督自身もかかわったシナリオも秀逸である。そして俳優たちも力を出し切っていると思う。
 映画の冒頭、スタッフ・キャストのクレジットの画面を利用して、そこに植民地時代のベルギー圧政を象徴する写真がモンタージュし、観客に予備知識を与える工夫は、歴史映画の常道であろうが、本作ではそれが成功している。
 
 独立前夜、高揚する政治的季節のなかで、独立後の覇権、経済的利害などを確保しようとする旧支配層の思惑などが渦を巻く。 西欧諸国のアフリカ支配はその地の伝統風俗を断絶し て行なうか、種族間の利害を巧みに利用して富の収奪を行なってきた。。その支配システムはそのまま独立後も機能した。いや、ベルギー当局は、銅をはじめとする鉱物資源のい豊かな州のみ分離独立させようとした。じっさいにカタンガ国という国際社会に認知されない“国”が数年存在した。
 分離主義者たちは、統一コンゴこそ貧しい国を強固にする最低の支柱と考えるルムンバを敵視した。独立後もコンゴに居座るベルギー軍はカタンガ国にてこ入れをした。そんななかでルムンバはソ連への傾斜を強めようとする。その動きを封じようと米国のケネディ大統領の政府も動く。そんな政治環境のなかでルムンバは殺される。ただ、殺されたのではない。コンゴ民衆の多くが英雄視するルム ンバの死後の影響力を恐れたベルギー軍は、彼の死体を解体し、燃やしたのだ。しかし、ルムンバは殺され殉教者となって今日でもコンゴ民衆の血となり肉となっているようだ。
 ルムンバ亡き後、コンゴは内戦状況に陥る、これを「コンゴ動乱」という。ルムンバ亡き後にコンゴを襲った現実であった。しかし、映画は動乱を予感させるところで終わる。

 現在もアフリカ各地から悲惨な民族対立、内戦が伝えられる。植民地時代から抱える地域対立が埋蔵資源の利権などと絡みあい、そして宗教的な齟齬が加わるとき惨劇となる。そうした国のことに想いいたすとき、その理解の一助となることが確かな一編として本作を推奨したい。
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 ルムンバを演 じたエリック・エブアニーという俳優について知るところは少ないが、郵便局員からビール会社の宣伝マンに、そして弁説を磨き、知識を蓄え、「独立」闘争のセールスマンとして頭角をあらわし、若き闘士としてコンゴ民衆を牽引する力を経て、独立期の権力を掌中におさめながら志なかばにして斃れた起伏の大きな男の短い生涯を好演していた。

 日本ではベルギーが植民地をもっていたことすらよく知られていない。しかし、そのコンゴに対する80年は他の西欧列強の支配より苛烈なものであったことは歴史が証明するところだ。
 独立の混乱期、植民者のベルギー人がコンゴ国軍によって多数、惨殺されている。ルムンバの意向に背いた軍部の独走であったが、それも動乱の火種だ。そうしたコンゴ人によるベルギー婦女子への弾圧も歴史的事実として語る必要もあるし、映画のなかでも語られている。書 き出しで紹介したダイヤモンド産出国シエラレオネを舞台にした映画『ブラッド・ダイヤモンド』で主役となったディカプリオの役は、コンゴ独立期、ベルギーからの植民者であった両親がコンゴ人に殺され孤児となり、南アフリカに渡った男という役柄であったことを付け加えておくべきだろう。

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