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小澤真智子 アーバン・タンゴ・トリオ

 小澤真智子 アーバン・タンゴ・トリオ

小澤真智子

 都会的で乾いた、知的さと軽やかさが同居したようなピアソラを聴いた、というのが公演後、ホールから出て晩秋の冷たい風を足元に絡ませながら思った印象だ。
 ニューヨークのジュリアード音楽院を修了した小澤は仕事で一時帰国する以外は、生き馬の目を抜く多国籍都市で活動をつづける。履歴はそうとうなものだが、ここでは書かない。いまの活動が重要だ。ひと言、先に評言させてもらえば発展途上の才能だ、ということだ。
 今回、鎌倉と東京での二公演のために編成されたトリオは、小澤と、それを融通無碍にサポートするのがふたりのアルゼンチン奏者。ピアノのオクタービオ・ブルーネッティ、ベースのペドロ・ヒラウドである。前者はふだんからタンゴ奏者として活動し、後者はジャズ畑で仕事している。そんなカテゴリーを超えてトリオを組めたのはニューヨークという実験性にあふれた音楽風土だろうし、引き寄せる磁力はピアソラの音楽であった。公演のタイトルも「駆け抜ける タンゴ・ピアソラ」。先に「軽やかさ」と書いたが、心地よい疾走感もあった。
小澤自身は、ピアソラをタンゴ音楽と認識して楽譜を読んでいるのではなく、すぐれた現代音楽として知覚し読み込んでいるように思える。チェリストのヨーヨー・マにそのあたりは似ているのかも知れない。そうヨーヨー・マの「リベルタンゴ」を想い出しながら聴いていると、ヴァイオリンにふさわしい現代感覚となると、こうした「駆け抜ける」感じになるのかと納得される。「リベルタンゴ」はもとより、「アディオス・ノニーノ」など人口に膾炙した作品となれば解釈の領域は拡大限界まで来ている。小澤はそれをヴァイオリンの弓を走らせクレシェンドの妙技として魅せてくれた。実父の追悼といった「アディオス・ノニーノ」の来歴は無視され、現代音楽の優れた器楽曲として昇華した。解釈は楽器によって規定されるからこそ面白い、という言い方ができる。
 ウッドベースのヒラウドもおもしろい。技量のあるジャズ畑の才能だが、ピアソラを、タンゴを、弾きながら、強いてテイストとしてのタンゴに傾注しようといった安易さはない。アンサンブルは鄭重に分をわきまえながらこなすが、妥協とは無縁。ピアソラの「フラカナパ」ではジャズの即興演奏をぞんぶんに披露して違和感はまったくなかった。このヒラウドと小澤を連結して融合させているのがタンゴ・ピアノの堅実な演奏で司るブルーネッティということになる。
 アンコールも含め全18曲、うち10曲がN・Yの街路に似合うピアソラであった。むろん、トウキョウ風でもある。    
(10月24日 東京・大手町・日経ホール)

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