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水谷川優子の「鏡の中の鏡」

水谷川優子の「鏡の中の鏡」
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 日本とドイツに拠点をおいて活動するいま充実の季節を迎えているチェリスト水谷川優子さん。昨夜、私にとって3度目か4度目になるリサイタルを聴く。プログラムは、「バッハ ~響きの鏡像」というもので、前半をバッハの無伴奏チェロ組曲第2、第3番と、現在、イタリアで活動をつづける日本人作曲家・杉山洋一さんの新作「ベルリンのコラール『目覚めよろ呼ぶ声す」によるチェロ独奏のための」であった。しかし、昨夜は私にとっては後半の3曲にいたく感じ入ってしまった。特に最後の曲アルヴォ・ベルト「鏡の中の鏡」を。曲の途中で、このまま永遠にリフレインして欲しい、しばらく終わって欲しくない、この音のなかで瞑想していたいと思わせる演奏だった。たぶん、これを聴かなければ、これを書いてやしない。
 バルト三国のひとつエストニア共和国の作曲家アルヴォ・ベルトが1978年に発表した10分に満たない小曲だが、簡素ゆえの清涼感のただよい、それは尊厳なただずまいまである。ピアノの分散和音の流れにたゆたうようにチェロの弦が行きつ戻りつしながら限定した音数のなかで静寂を誘う。それは敬虔な宗教曲の味わいすらあった。フォーレの声楽曲にこれに似た感想をもった作品がったことなど思いだしながら、水谷川さんの弦に誘われた。水谷川さん自身、とても慈しんで弾いている、と思った。そんな掌の温かさに満ちた演奏だったのだ。
 場所は東京文化会館の小ホールである。長年の共演者・黒田亜樹さんのピアノとの呼吸もピッタリだったし、ホールの大きさ残響速度も見事に融和していたのだろう。名演だと思った。
 作曲家はこの作品を、いまだ母国がソ連支配下にあった時代にこれを書いている。多くの宗教曲を書いている現代作曲家だ。それゆえ、作曲家は当時のソ連楽壇の外縁での活動しかゆるされなかった。したがって、当時の国営レーベル・メロディメカに録音をゆるされず、西側にしられることなく“地方”楽壇で、その個性的な世界を育んでいた。多作家であった。
 現在、この「鏡の中の鏡」を前走者としてアルヴォ・ベルトの作品が少しづつだが、世界にしられるようになっている。
 昨夜、「鏡の中の鏡」から私のような印象をもった聴衆は多かったのではあるまいか? 
 

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