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忘れてはいけない「パナマ文書」  ~見えてこない租税回避地の小国の民衆

忘れてはいけない「パナマ文書」
 ~見えてこない租税回避地の小国の民衆

 大衆は新しい事件、話題に目を奪われ翻弄される。それは無節操でもあり、倫理観の欠如と指弾されうるものだが、マスとしての大衆は自己責任にまったく無自覚だ。だから、芸能人のプライバシーに土足で踏み込むようなTVレポーターの横暴を許容してしまう。
 おのが暮しに直結する事件でも、真相究明が停滞するとたちまち関心も薄れ、いつの間にか忘却することを由とする。マスコミも視聴率が下降するとすでに賞味期限が切れたといわんばかりに切り捨てる。
 「パナマ文書」の衝撃が世界を駆け巡ったのはつい最近のことだが、ニュースのステージから完全に降りた印象だ。舛添前都知事の品のないセコイ話題が「文書」問題を隅に追いやった印象だ。
 政治家や富裕層の貪欲な資産隠しに大いなる義憤、そしてわが身に降りかかるしれない生命の危険を乗り越え「文書」を白日の下にさらしたといわれるIT技術者が、スイスで逮捕された。そのニュースすら大した話題になっていない。逮捕後の詳報もない。都知事問題が浮上したのは、日本の個人、企業約400件がペーパーカンパニーに関与していることが「文書」で明らかになった直後であった。  

 中米の小国パナマ。太平洋に面した港湾都市パナマが首都。海の大動脈パナマ運河の太平洋側の出入り口に位置する同市の夜の華やぎは眩しい。高層マンション、オフィスビルが林立するウォーターフロントのそばに郊外の空港に延びる中米で唯一の首都高速道路が走る。夜、海上から眺める景色は香港にそっくりだ。そんな光の下、熱帯の暑気と無縁な快適な本社オフィスを構えているのが「パナマ文書」の出所、モサック・フォンセカ法律事務所だ。
 パナマに一度も足を踏み入れたこともない世界の政治家や富豪が租税回避地(タックスヘイブン)を利用して「節税」する実態を暴露した「文書」によって、すでにアイスランドの首相が租税回避地をつかって巨額の投資をしたことが暴露され失脚した。
 40カ国以上に500人以上の従業員を抱え、取引き先は地球大で約30万社といわれる。パナマ市にはこうした事務所が実態不明のまま拠点を置く。不夜城のような光景は、麻薬密売でのマネーロンダリングのおこぼれ、虚栄の輝きだと囁かれる。

 フォンセカ事務所から漏洩した文書は1970年代から今年春までの厖大な資料だ。その解析は現在も80カ国のジャーナリスト400名の手によって分析が進められている 。その最初の報告で、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平総書記などの親族も関与していたとして世界中の注目を集めたのだ。これまで14カ国以上の政治家や、著名な俳優やスポーツ選手の名もあがっている。
 しかし、「パナマ文書」の調査において、これ以上、著名人の名は出てこないだろう。というのは、世界中のジャーナリストが手分けして調査する順番として現役の政治家、著名人たちからはじめたからだ。現在、企業活動の節税、資産隠しの解明という、あまりセンセーショナルなニュースとはならない部門に移行している。その過程で日本の個人、企業名が浮上し、その矢先に都知事問題がマスコミの最大の関心事となったのだ。

 「パナマ文書」によって著名人たちの資産隠しが注目される一方、まったく話題にのぼらないのは租税回避地となっている国、地域の実態だ。そこで暮らす小国のひとびとの暮しがまったく見えてこない。タックスヘイブンが話題になるたびに筆者はいつもそのことを不満に思う。パナマや中米・カリブ諸国を知る筆者には、それが歯がゆい。
 そうした小国の権力者たちは、長期的な展望に立たず、国民生活の安全、未来への大計ももたず、労せずして外貨が落ちる仕組みを作り、そこで得られる収入で権力の維持のために“資本投下”する。今回の「文書」問題でも同じことが繰り返されている。
 冒頭、パナマ市の夜景を形容したが、そのすぐ近く植民地時代の建物が遺る旧市街の周囲にはスラムが広がっている。パナマ運河のカリブ側、大西洋への出入り口の町コロンは、運河建設に携わった労働者たちの子孫といわれるアフロ系住民が多く住むスラム街がある。地方の産業は育成されず、この国に多い先住民共同体には電化もされず上下水道も敷設されていない地域がある。そういうことは一連の「文書」騒ぎのなかで一顧だにされていない。

 カリブ地域には人口規模の小さな島国が散在する。その多くが租税回避地として先進国の政治家や富豪に利用されている。それはカタチを変えた植民地の姿だ。実際、この地域にはいまだに西欧諸国の植民地、海外県が点在する。そうした実態も「文書」問題同様、告発されなければならいだろう。ジャーナリズムの“良心”は租税回避する政治家や富豪を批判しても、小国の貧困、そこで暮らす民衆の姿、制度的な矛盾まで告発していない。 

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