スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

英国、EU離脱 民主的手続きを経た排他性の承認 ~トランプ米大統領候補の同調

英国、EU離脱 民主的手続きを経た排他性の承認 
 とトランプ米大統領候補の同調

201606252033510000w.jpg

 EU離脱に賛成票を投じた英国の有権者を煽った重要なファクターは移民問題。離脱が決定した直後、スコットランドを訪問中だったドナルド・トランプ米大統領候補は記者会見で、いみじくも「英国民は国境を越えて侵入する移民に怒っている」と語り、離脱はそうした英国人の民意だと断言した。メキシコ国境に高い壁をつくって“犯罪者”の侵入を阻止し、イスラム教徒の入国を禁ずると主張し、「米国を再び偉大な国にする」と語った排他的民族主義と、英国の“民意”は通じると認めるのだ。英国のEU離脱派は、「大英帝国」の誇りを取り戻すと謳っていた。

 英国のEU離脱が決まったことで、欧州各国の右派政党も「国民投票」を求めるだろう。無論、彼らの主張の根底にあるのは排外主義だ。つける加えるなら自分たちに都合の悪い歴史を検証せず、反省しない偏頗な民族主義だ。
 いまEU諸国を揺るがせている移民問題の発端は内戦がつづくシリアからの難民に象徴されるが、それ以前から中東や東欧諸国からの難民流入に悩んでいたことは確かだ。英国をはじめ欧州各国の労働者は移民に「職を奪われる」「彼らは無料の医療や生活保護など社会保障にただ乗りしている」という不満、そして治安の悪化に対する危機感が強かった。米国でトランプ候補を支持した層もまたヒスパニック移民などに職を奪われるという危機感や、共和党の党是によって銃が野放しになっているにも関わらず治安の悪化を不法越境者に負わせる詭弁(きべん)に通じる。

 EUの発足理念は、大戦を繰り返してきた悲劇に終止符を打つという高邁な思想だ。
 ドイツでヒトラーが政権を握ったのは、いうまでもなくドイツ人(及び欧州全域)に燻るユダヤ人に対する偏見を沸騰させたところにあった。抽象的な政治理念より、大衆はみえる“敵”を与えられたとき具体的に行動する。ヒトラー政権の誕生は、当時の世界にあってもっとも進歩的で民主的といわれたワイマール憲法下での選挙を通じて行なわれたのだ。今回の英国の国民投票もまた、民主主義の反映として行なわれた。

 離脱を支持した英国人は「大英帝国」の誇りを掲げる。
 かつて、その「帝国」は七つの海を支配した。世界各地に植民都市を築き、広大な地域から富を奪って英国は繁栄した。石油と地政学的に重要だった中近東諸国を支配したのも英国とフランス、南の海の出口をもとめて南侵をつづけたロシア帝国であり、今日の中近東の“国境”はそこに生きる民族が求めたものではなく、当時の覇権国家の思惑から線引きされたものだ。それが今日の混乱の発端であり、シリア内戦の遠因である。

 米国へ南から多くの不法越境者が入って行くが、元をただせばメキシコ独立当時、同国北部州であった地域である。カリフォルニア、テキサス、ネバダなど西南部各州はすべてメキシコ領であった。現在のメキシコ国土にほぼ匹敵する広大な地域だ。この北部州を米国は、メキシコ独立期の混乱に乗じた侵略戦争によって事実上、強奪したのだ。メキシコの小中高の歴史教科書は繰り返し、民族の屈辱として、その史実を教えているし、首都メキシコには、侵略された歴史を中心に「メキシコ史」を展覧する博物館まである。米国へ越境するメキシコ人の多くは現在の法では確かに不法越境だと認識するも、罪の意識はない。もともと自分たちの土地だったという思いが強いからだ。

 トランプ候補は、米国史の暗部にあえて目を閉じる。EU離脱に賛成票を投じた英国人の多くも世界の海で海賊行為を繰り返した祖先の“犯罪”を正視しない。ビートルズ揺籃の地リバプールは、奴隷売買を中心に栄えた港湾都市であった。現在、タックスヘイブン(租税回避地)となっているカリブ島国の多くは英国の植民地であり、現在もケイマン諸島などを事実上支配している。

 EU離脱の決定を受け、スコットランドでは独立への機運がまた高まるだろうし、北アイルランドはアイルランドへの復帰を模索していくだろう。そうした動きは欧州各国で生まれても驚きに価いしない。
 一連の国民投票を巡る報道のなかで、英国に滞在する「移民」の声、生活、自分たちに投票権のない事態をどう見ていたのか、といったルポはなく、もっぱら市場の混乱という経済面に特化して報道されていたように思う。
 ポーランド移民の親睦団体の事務所が落書きされたり、イスラム系市民に向けたネット上の誹謗中傷など、国民投票で多数派というお墨付きをもらったことでヘイトクライムが急増した。
 大戦後、ドイツ人の多くは、ナチズム独裁下ではユダヤ人を排斥するしか方法がなかったと責任を回避しようとした。そのナチズムに政権を委ねた過去を忘れたように。
 
 英国のEU離脱に市場は多少、混乱するかも知れないが、それは持てる投資家や企業の問題であって、実際のところ庶民レベルにはさほどの影響はないはずだ。それより深刻なのは移民差別の是非が国民の手に委ねられ決定されたことだ。あるべき人権思想、倫理観が討議されず“民意”として象徴されたことだ。この結果は英国史に長く負の遺産となっていくのではないか・・・。 

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

上野清士

Author:上野清士
店長の最新著書

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。