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EUフィルムデーズ2016 『提督の艦隊』・『日本からの贈り物』

EUフィルムデーズ2016

 今年、14回目を迎えた「EUフィルムデーズ」。東京地区は京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターで約3週間にわたって開催される。毎回、欧州の最新作、とくに一般公開される機会の少ない旧東欧諸国、旧ソ連邦諸国の作品が観られるので、時間を見つけては通っている。今年もまた26ヵ国31作品が公開される。そのなかから印象にのこった2作をとりあえず紹介しておきたい。

*オランダ映画『提督の艦隊』 ロエル・レイネ監督 2015年
 提督の艦隊
 初日(6月18日)、今回の参加作品のなかでもっとも大作となるオランダ映画『提督の艦隊』を早速、観た。大きなスクリーンに17世紀、帆船時代の海戦が見事に描かれた歴史巨編。主人公は、EU紙幣採用前のオランダ100ギー紙幣に肖像が描かれていたことで了解できるようにオランダの海の英雄ミヒール・デ・ロイテル。当時の覇権国家英国、フランス、そしてオランダの経済的な利害関係、政治的な思惑、議会を飛び越えたところで裏取引される王室(貴族)たちの権謀まで描かれた、なかなか見ごたえのある作品で、いろいろと歴史のおさらいができて私には益とするところの大きな映画だった。
 繰り返し描かれる海戦シーンは見事。俯瞰、遠望などで巨大艦隊を描くシーンはむろんCGでの処理だし、激戦シーンもまたCGが多用されているが、その技術はなかなかのものだし、実写との融合も自然だ。潤沢な資金も用意されたのだろうセットもなかなか豪奢だ。ミヒール・デ・ロイテル提督は、海を熟知し、海底の深さ、気象条件も味方にして、常に海戦を勝利に導いた救国の英雄として描かれる。
 監督はこれまでハリウッドで手堅く小規模アクション映画でCDと実写との融合を学び、本作に取り掛かったという意欲がみえる労作となろうか。
 同時代に描かれたロイテル提督の肖像がたくさん残っているので、映画でもそれを逸脱して美男スターに主役を勤めさせるのはリアリティーを欠くだろう。本作では少々、粗野で、いかにも成り上がりの無骨な容貌、メタボな中年男優を起用している。その姿がロココ趣味が濃厚な貴族階級との差異を象徴する。日本ではなじみのない第一、第二、第三次英蘭戦争の背景なども理解できて面白い。また、英・仏両国から挟撃される“国難”を前にしてのオランダ議会の党派主義、共和派の首相兄弟を惨殺する貴族の暗躍、それに扇動される烏合の衆といった当時の暗部も描き出される。
 長崎・平戸にオランダ商館が開かれた時期の史劇として、当時の日本の状況を思いながら読み解いていくとなかなか興味深い。

*ルーマニア映画『日本からの贈り物』トゥドール・クリスチャン・ジュルギウ監督
 日本からの贈り物
 2013年9月、ルーマニア東部・モルダビア共和国と国境を接する広範囲な地域が約6時間、未曾有の豪雨にさらされた。同国の平均雨量の約2ヵ月分が降るという破壊的なものだった。このニュースは日本ではほとんど無視されただろう。寒村地帯であったため人的被害が「数」という集積では小さくみられたからだろうし、隣国がモルダビア、つまり旧ソ連邦に隣接する僻地ということもあって報道が遅れたこともある。
 映画の物語はこの大洪水に破壊された村に住む老農夫コスタチェを中心に動く。洪水で長年連れ添った老妻を家ごと奪われ、いまは政府から与えられた空き家でひっそりと暮らす。わずかな年金と、洪水の罹災者に与えらる給付金が頼りのようだ。
 映画の冒頭で泥水を被った被災地帯が俯瞰される。人馬が泥海のなかをはいずり回っているようにしか見えない。日本や先進国の被災地なら機能的な重機が動き回っているのだろうが、この国では人馬だ。おそらく、洪水の大きさを象徴するのに、たとえばニュース・フィルムあたりを使えば容易だろう。しかし、この映画の監督はあえて、そうしたシーンを制作した。ルーマニア農村の現実をそうやって象徴したかったのだろう。
 老農夫が持つ土地はかなり広いようだ。売れば相当な収入になる。よそ者の企業家が村に掛け合って、そうした被災地の土地を買いあさっているようだ。けれど、老農夫は売り渋っている。
 映画はこの老農夫の歩く速度にあわせたリズムで進む。洪水も運命、と慫慂と受け入れたようにみえる老農夫の背が印象にのこる。味わい深い名優の背での演技だ。その農夫を演じたのはヴィクター・レペンギウツという同国でよく知られているらしい男優ということだ。
 そんな老農夫のもとに、長年、日本に行ったきりとなって頼りも途絶えがちだった息子が洪水被害を知って、日本人の妻と8歳の長男をつれて帰郷する。そして、数日後に日本にもどるまでの静かな交流を描いただけの話だ。
 建築技師の息子は最初はなにもかも風習の違う日本でそうとう苦労したらしいが、現在は妻子とともに平穏に暮し、母国へ帰る気はないようだ。数年ぶりで再会した息子と父の気まずい対話、それをなごませるように動き回る孫、義父と夫の冷淡な雰囲気に大人の対応で和ませようとする日本人妻。それだけの話。まるで小津安二郎あたりが制作するような家族の諦観の物語で、人間の物語として普遍性をもつ。よい映画をみたと思った。
 日本人妻を演じたカナ・ハシモトはルーマニアで活動する女優さんとのこと。8歳の少年を演じた子役はルーマニア語と日本語のバイリンガル、貴重な存在だ。ふたりともどういう来歴の人かしらないが、日本とルーマニアの人的交流を象徴する存在であることは間違いないだろう。
 筆者自身、いきつけの髪切り屋さんでルーマニア人夫婦を知った。幼い娘さんは地元の幼稚園に通っていて、昨年だったか盆踊りのための浴衣の着付けを教えてくれないか、とお店に入ってきたことがある。また、ルーマニア人の大半が東方正教会の信徒だが、首都圏での精神的求心地は御茶ノ水駅近くのニコライ堂だ。クリスマス前、その教会内庭で毎年、バザールが開かれている。それぞれの出身国でブースを分けているよう で数年前、ルーマニアで制作された小さな聖母子像のイコンを購入したことがあった。
 在日ルーマニア人のことをいろいろ調べていると、2004年ごろには4000人を数えていたようで、その半数が飲食店などで働く女性だったらしい。現在は日本政府の興行ビザの制限などがあって2000人前後で推移しているようだが、日本人と結婚してルーマニア国籍を失った人も多いので、ルーマニア語族としては東欧系日本人として最大のコミニティーとなっているらしい。そんなことも映画に反映しているようだ。

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