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文庫化されない本のために №014 秦恒平『猿の遠景』

 秦恒平『猿の遠景 ~絵とせとら文化論』 
     ~今上天皇、皇太子時代のある慧眼
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 明仁親王、今上天皇の皇太子時代のエピソード。南宋時代の画家・毛松の作と伝えられる『猿図』(現東京国立博物館蔵)をみて親王は即座に「日本猿ですね」と指摘した。その指摘をそばで聞いていた学友・徳川義宣が雑誌『淡交』にそのエピソードの顛末を書いた。
 親王の指摘を受けた博物館の学芸員は慌てて動物学者数人にコンタクト、すると皆、日本の固有種「日本猿」と鑑定した。そこで困ったのが南宋の名品と鑑定した美術史家や学芸員。日本固有種の猿をみたこともない南宋の画家がかくまで精妙に描写することはできない。であるなら「伝毛松」という美術史的鑑定は崩れる。そこで美術史家たちが 出した結論は、「日本からモデルの猿を中国に送って描いてもらった絵」とすることにした。徳川氏は、くだんのエピソードを紹介しながら美術学者の権威というものを皮肉ったのだと思う。
 ここで思うのは、著者は指摘していないが、親王の指摘だったから慌てて動物学者の知恵を動員することになったのだろう。これが、生物学を専攻する一学徒、いや動物学者の指摘であっても無視できただろう。やがて天皇に即位する親王の指摘であったから慌てたのだ。そして、本書も生まれた。
 本書は、重要文化財であった「永仁の壺」真贋論争ではないが、小説の名手でもある著者は、『猿図』の由来を求めて少々、粘着的に探求をはじめるが、それが推理小説を読むようなストリー性があって興味深く、楽しいのだ。おもわず惹かれて読み進めてしまう・・・しかし、著者の考察は枝葉に分け入り、やがて本筋から離れ、読者としてはどこか肩透かしをくらった感じになる。本書が著者の代表作となり得なかった欠点だろう。
 *紅書房版・平成9年3月初版・絶版。

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