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TV『戦争と平和』からトルストイ閑話 *映画『執着駅』など

TV『戦争と平和』からトルストイ閑話 *映画『執着駅』など

  NHKで連続ドラマ『戦争と平和』を放映している。
 英国BBCが制作したTV用の大河ドラマだが、少し観てとても耐えられないと、視聴を止めた。その否定的な感情は人気絶頂期のオードリー・ヘプバーンがナターシャ役を演じた映画『戦争と平和』を観たときの感想と大同小異のものだ。オードリーの主演映画は『戦争と平和』と表題を与えるべきものではなく、『ナターシャ』とすべきアイドル映画。そのハリウッド映画を観せられたロシア映画人たちは国辱とも感じ、発奮し、あの大作『戦争と平和』を巨費と歳月を掛けて6時間半を超す大作を制作する機縁としたのだ。BBC制作のそれはロシア正教のスラブ魂を無視し、世界標準と勘違いしているプロテスタントの合理性が生み出した理解だ。
 それと同じことを先年、映画『終着駅』を観たときにも感じた。
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ジェイ・パリーニの同名の原作が非常に興味深いものだったので映画を観たわけだが、原作では妻ソフィア他、トルストイの晩年に親しく文豪に接した人びとがそれぞれ思い思いの立場からトルストイの人となりを語りながら晩年の文豪を描出するという多面的な批評小説といえるものだが、映画では妻ソフィア(ヘレン・ミレン)の演技が目立つ、というより彼女が主人公といってよい内容だった。オスカーに主演女優賞としてノミネートされたように、トルストイ役(クリストファー・プラマー)が主役ではなく、伯爵夫人としての気品、遺産に固執する俗物性がアラベスク模様のように織り成す演技力は説得力のあるものだった。
 原作は米国人作家だが、これをロシア語の脚本にしてロシアの地で撮影して欲しいと思った。映画はロシアでは“黄金の秋”といわれる自然が豊かに描き出されているのだが、しかし、そこに憂愁というものがない。BBCの映像にも憂愁がない。たとえばソ連邦末期、ニキータ・ミハルコフ監督は、19世紀のロシア貴族たちの黄昏を“黄金の秋”の憂愁と同化させて見事に映像化していた。秋がもっとも美しい国は、筆者が実感したなかでは、わがさまざまな色彩感を堪能できる日本、そして白い一色になってしまう前のいっときの至福を人に与えるスラブの“黄金”だと思う。ラフマニノフが米国へ亡命した後、創作活動に生彩を欠いてしまったのは、ロシアの憂愁の秋から切りはなされた民族性の毀損だと思う。
 しかし、トルストイのひ孫(ビクトリア・トルストイ)がスゥエーデンスでジャズ・シンガーとして成功する時代を迎え、19世紀のトルストイを憂愁を映像化することもロシアでも至難になっているのかも知れない。
 トルストイ……唐突にいま思い出したことがある。それは20世紀最大の環境破壊といわれたカザフスタンとウズベキスタンにまたがる大湖アラル海が枯渇しつつある現場を取材した際、干上がって、塩の塊が露出した元湖底に打ち捨てられた漁船の腹に「レフ・トルストイ」号を大書されていたことだ。ソビエト・ロシア人は周辺の小国の自然や人的資源を食い荒らし、連邦崩壊後、バルト三国、ジョージア(グルジア)、ウクライナ等々・・・多くの民族国家を敵対国家に変えてしまった。

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