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私的な歯痛体験もあって、気になるロードムービー  ~映画『エバースマイル・ニュージャージー』

私的な歯痛体験もあって、気になるロードムービー
 ~映画『エバースマイル・ニュージャージー』

 エバースマイル
 ダニエル・ディ=ルイス主演ということでラテンアメリカ映画の範疇で語ることを失念していた。台詞が英語で通されていることも勘違いの原因だが、これは紛うことなきアルゼンチン映画。まず舞台が大平原パタゴニア、監督も同国人なら撮影、脚本、助演陣みな達者な同国人だ。ただ英国系企業の資本で制作されたことでも錯覚したか……でもそんな情報はどうでも良い。この善意にあふれた、ドン・キホーテ的な時代錯誤感がほとんどわき見することなく真っ直ぐ語り尽くされる、ということで真にラテンアメリカ的ともいえる。
 主人公はアイランド出身でいまは米国ニュージャージー州に本部のある慈善団体「デュボワ歯科普及財団」から無医村ならぬ、無歯科医地域のパタゴニアに派遣され、歯の健康維持と治療をボランティア・オコーネル医師の物語。オコーネル、いかにもアイリシュ的な典型的な名である。
 エバースマイルとは、歯の健康にはよく磨く習慣が必要と、無償で配る歯ブラシに刻印された文字である。いかにもの命名である。そして、パタゴニアを疾駆するのはサイドカーに医療器具を載せたモーターサイクル。この映画から15年後、革命家以前のエルネスト・ゲバラの南米旅行を描いたロードムービー『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2004)が撮られている。アルゼンチン人はモーターサイクルで長躯の旅をする嗜好でもあるのかと思ってしまう。
 行く先々での人々との出逢い、そこで起きる日常的を善意で掻き乱される田舎の人びと。日本的な情感でいえばハレとケの交わりの物語だ。茫洋と退屈な時間が民衆に流れている。オコーネル医師の到来は、予期せぬ大道芸人の来演のようなものだ。それが治療行為という具体的な善行がともなうから人との関係性が濃密になってゆく。しかし一期一会。ローマ法王を輩出した国だけに、カトリック修道院の奥深く、歯痛を神から与えられた受難と受け止め治療を拒む老聖職者の姿なども描かれて興味深い。
 挿話のひとつにハイテク設備を積み込んだ日本製の歯科医療ワゴンカーというのがTVのニュースで紹介される場面がある。それを見ていて、そうかアルゼンチンでも日本の歯科医療器具の有能性が注目されているのかと感じ入った。というのは、筆者が中米ホンジュラスを旅しているとき、どうにも収まらない歯痛に耐え切れず、首都テグシガルパの歯科医に駆け込んだことがある。確か、日本大使館に電話して推薦できる歯科医はいませんかと尋ね、紹介してもらった歯科医であった。
 「あなたは日本人か?」と聞くから、「そうです。保険にも入っているので後で領収書を書いてください」と言い、ついでに「この治療台や器械類はまるで日本と同じですね」と言うと、「その通り、日本製ですよ」という。良く聞くと、日本の歯科医療器具は日進月歩で古くなると途上国に輸出されているのだそうだ。「日本の器械は世界一でしょう」とリップサービスか、そう強調したのだった。
 『エバースマイル~』のオコーネル医師が日本の治療ワゴン車を知って思わず目を見張るシーンで、テグシガルパで座った日本製治療椅子の感触を思い出したのだった。後で保険で返金された治療代だったが、これは筆者が保険に入っていること見越した金額だと思った。同国のフツーの人がとても払える金額ではない金を取られた。
 アルゼンチンに限らずラテンアメリカ諸国はオコーネル医師のようなボランティアが必要だ。たぶん、よほどの善政にでも恵まれない限りは、永続的に……。
 *カルロス・ソリン監督作品。アルゼンチン映画。

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