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アルバロ・トーレスの歌  エル・サルバドル

アルバロ・トレスの歌  内戦下のエル・サルバドルで愛を歌いつづけて

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中米地峡の小国エル・サルバドルのアルバロ・トーレスの最新アルバム『ムイ・ペルソナル』がラテン・グラミーの(意訳すると)「カトリックの精神性を表現した歌唱」部門にノミネートされていることを見て、まだ健在で活動していること知って嬉しかった。主要部門でのノミネートではないがラテン・グラミー賞の性格を象徴する賞である。
 エル・サルバドルに限らず中米ではビックネームだが、日本まではその名は聞こえてこないのが、知って欲しい才能だ。
 1954年4月生れのトレスにとって、彼の最盛期は70年代後期から90年代だろう。その時期、彼の祖国エル・サルバドルは12年の内戦下、隣国グァテマラもニカラグアも内戦といった時代であった。トーレスの活動は当然、祖国でも中米の隣国でもおちついて活動はできず、グァテマラのリカルド・アルフォナがメキシコに出たようにメキシコ、あるいは米国南部に拠点を移しながら活動しなければならなかった。
 これまで32枚のアルバムを発表しているが、その大半が祖国の疲弊を横目にみながらの制作であった。おそらく平穏な時代であれば、中米でのセールスは飛躍的に伸びた実力者であったが、社会状況がそれをゆるさなかった。
 トーレスの歌に社会性はない。おだやかなポップスであり、基本的にボレロだ。内戦下のエル・サルバドルでは大衆は各地に拠点をかまえるクンビア・バンドのリズムに乗せて踊っていた。トーレスにもクンビアとかレゲェのテイストを取り込んだ歌がある。しかし、そうしたリズムを使いながらも、すべて、おだやかなトーレス節にしてしまう、そんな歌手だった。
 エル・サルバドルのクンビアは、ペルー・アマゾン地帯のイキトスから生まれたねちっこさも、テハーノたちのようないわゆるテクノ・クンビアなどとも無縁の、どこか軽めの熱帯高原に吹く風のようなポップスだった。首都サン・サルバドルの下町を歩けば国産クンビアにあふれていた。その一部は先年、日本でも公開されたエル・サルバドル内戦を描いた『イノセント・ボイス』のなかに象徴的に使われていた。そんなクンビア隆盛のなかにあって、トーレスの歌声は埃りぽい街路を縫って吹き抜ける清涼な風のように、いつも爽やかさを失うことはなかった。筆者などは、そのトーレスの声を聴くと、この国の心性はけっして険しいものではない、と当時、確信を与えられたものだった。
 歌手として時代に恵まれたなかったトーレスだが、一度も時代の不幸を自己れんびするようなことはしなかった。内戦のなかでも祖国愛を忘れなかった。
 いまラテン・グラミーの一部門にノミネートされ、いわば名誉賞的な意味合いもあると思うが、彼にとってはとても良いことだと思った。たぶん、小国エル・サルバドルからグラミー賞を手にするのはトーレスの後、しばらく人材はいないと思う。その意味でも是非、受賞して欲しいと思う。11月11日には結果が出る。 (2010年10月記)  

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