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SINSKE・マリンバ・プロジェクトⅠ~マリンバ世界一周

 SINSKE・マリンバ・プロジェクトⅠ~マリンバ世界一周
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 浅草、隅田川岸のアットホームなスペースで行なわれた若きマリンバ奏者SINSKEのコンサートは清涼感に満ち、気持ちのよいものだった。
 これまで彼のステージにはランドマークのようにエレクトリック・マレット・パーカッションと名づけられた創作楽器がおかれていた。マリンバ(木琴)というよりヴブラフォン(鉄琴)のイメージに近いコード付き楽器である。それが今回、消えていた。普通のコンサート用マリンバと、ステージの隅に置かれた南部アフリカの簡便な民俗楽器シロフォン、あるいはコギリと呼ばれるものだ。中米のマヤ系先住民の楽師たちは、それもマリンバと語って大型マリンバとの品格を区別しない。タイのラナートに連なる楽器でもある。
 SINSKEの演奏技術、創造性、そして意欲も旺盛であって、その力はあなどれない。本人もそのことは重々承知しているようで血気盛んな演奏もすれば、沈着冷静な精神性を追い求めることもある。彼の周囲もそんな個性に刺激され、ヤマハの技術スタッフは数千万を投じて彼の身の丈に合わせた楽器を製作したのだった。そして、新しい音楽世界を切り拓いたことは確かだけど、アコーステックなマリンバの普遍性にはいまだ遠い。いわば音楽が楽器を馴致していないのだ。
 マリンバという楽器は地球の自転に呼応して永遠にたゆたう気流と対話できる言霊を宿す、と思っている。さまざまな木片が太陽の熱によってゆっくり乾き、そこに小石がぶつかったり、禽獣に突かれてさまざまな音色を生み出す。その木片が組み合わされて至福の時を刻みはじめた。自然の摂理が生み出した楽器だと思う。
 アフリカ南西部に住むロビ族はシロフォンを奏でて民俗宗教を様式化していった。14鍵しかもたないコギリを叩いて大地の生々流転をあますところなく表現する名人も出てきたし、マヤの地ではイベリア半島から侵入してきたコンキスタドールとの戦いを叙事詩として詠ってきた。
 ライブの幕開けから休息までSINSKEは手探りつつ、確かな手応えを覚えるという行程だった。最初から快調だったとは思えない。第二部から終曲までは違った。観客の吐息を掴み取り、それをエネルギーとして吸収していった。ときに撥が交錯して擦過する。それは雑音でも装飾音でもなく緊迫の音であった。彼がほぼ没我の境地でマリンバと対話しているときの発熱が撥に意思を与えてしまうのだ。無から構築され、可変体として自在な造型美を宿してゆく様がありありと示された。セミクラッシックから民謡、アフリカの音、評者にはうれしいラテンの名曲など、「マリンバ世界一周」のサブタイトルに相応しいプログラムだった。その一つひとつをどうこう語る必要を覚えない。「世界一周」というコンサート全体の循環を織り成した、そのつらなりのマリンバの音色が実に良かった。  (10月21日、東京・浅草アサヒ・アートスクエアにて。2005?)

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