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コロ・ビクトリア公演  グァテマラ・マヤの大地の響き

コロ・ビクトリア公演  グァテマラ・マヤの大地の響き

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 *写真は、グァテマラの世界遺産都市アンティグア市内の一角。近くに、ラス・カサス司教が寄寓した修道院もあ。写真の石畳の車道は16世紀初頭の創建当時ままで現在もそのまま使われている。写真の左側は広い中庭をもつコロニア様式のホテルで、日に三回ほど専属のマリンバ合奏団が演奏を披露する。かつて6年ほど、筆者はこの道を日々、散歩していた。マリンバの音色を聴きながら。
 

 コロ coroとはスペイン語で「合唱」。中米グァテマラの「ビクトリア合唱団」公演印象記である。
 マヤ民族の国グァテマラはいつもマリンバの音色がこぼれている。喜びも哀しみも、抑圧や抵抗も質朴なマリンバで表象されている。大気にマリンバの音色がとけ込んでいる風土である。冷戦時代のラテンアメリカ諸国のなかにあって、36年という、もっとも長く陰惨な内戦を強いられた中米地峡の小国だがマリンバの音色だけは絶えることはなかった。そんなマリンバの国から珠玉の合唱団が来日した。男女各8人に、合唱団の創設者であり指揮者のフリオ・サントスを加えた9人編成であった。
 サントスは国立交響楽団の首席打楽器奏者でもある。ということは、この国では卓抜なマリンバ奏者であることを意味する。国立である以上、この国の音の主成分であるマリンバ曲を無視してはプログラムの彩りを欠く。この国のオーケストラの打楽器奏者は卓抜なマリンバ奏者であることを意味するのだ。
 というわけで合唱団公演のプログラムは、サントスの志向性かも知れないがマリンバの名曲として知られメキシコやエル・サルバドルでも演奏されるパコ・ペレスの「シェラフの月」、この曲はグァテマラの第二の国歌といわれるほど人口に膾炙したマリンバ曲で、シェラフとはこの国の第二の都市ケツァルテンナンゴのこと、スペイン征服軍が入ってくる前の古名である。作品そのものは20世紀の創作で、古き時代を哀悼するものだ。キチェ族の村を市場の賑わいを描写したような「チチカステナンゴ」も劇的な構成でおもしろかった。筆者自身、マリンバの演奏でしか聴いたことのない作品を混声合唱で聴いて新鮮な感銘を受けた。
 ドミニカのメレンゲや、ピアソラの「アディオス・ノニーノ」と彼らのレパートリーは汎ラテン圏に及ぶが、もっとも丁重に歌い込まれ、共感を呼ぶのはグァテマラの風土や歴史に根ざした作品であるのは当然だろう。
 楽器はいっさい使わず、パルマ、サパテアード、擬音・擬声、ときに形態模写も取り入れてパフォーマンスも卓抜で、筆者などはアパルトヘイトがまだ残存していた南アフリカのズールーランドで結成された「レ・ザルチスト・オンガジェ(社会参加する芸術家たち)」と呼ばれた演劇集団の活動などを思い出した。かつて、日本にも社会参与の姿勢を明確にしていた合唱団が地域、職場にたくさん活動していた時期があった。それが現在、ほとんど消えてしまった。気がつけば、人間関係がギスギスとした殺伐たる日常光景が広がっていた。しかし、コロ・ビクトリアの来日公演を支えたのは、地域に点在するアマチュア合唱団相互のネットワークでもあった。
 プログラムの前半3曲は先住民言語による歌が並んだ「タナフナリン」「ゆりかごのレクイエム」「包囲攻撃の歌」。いずれもホアキン・オレェジャーナの創作曲であるという。スペイン語歌詞ではなかった。プログラムの解説によれば、内戦の悲惨、暗部を真正面から取り上げた内容だ。終演後、指揮者のサントスとロビーで話す機会があった。その時、サントスは、「あの3曲の歌詞はキチェかカクチケル語か、あるいはマム語か」とグァテマラの主要先住民言語を挙げて聞くと、「いやあれは象徴的に言語処理した歌で、先住民言語の差異、むろんスペイン語しか使わない者にも理解できるような混合的な歌詞なのだ」という。意欲的な実験性に満ちた作品であったことを知った。
 1996年12月に内戦は終結したが長かった内戦の後遺症の傷口はいまだ完治していない。快癒まで相当な時間が必要だろう。その治療の過程には、こうしたコロ・ビクトリアの音楽が必要なのだとつくづく思う。彼らが、内戦の苦悩から立ち上がろうとしている民衆の声を背に受けて「ゆりかごのレクイエム」や「包囲攻撃の歌」を歌うとき、それは平和への絶対的な希求になってゆくものなのだ。
 (8月7日、東京・田端文士村記念館ホール。2005)

 *写真は、グァテマラの世界遺産都市アンティグア市内の一角。近くに、ラス・カサス司教が寄寓した修道院もあ。写真の石畳の車道は16世紀初頭の創建当時ままで現在もそのまま使われている。写真の左側は広い中庭をもつコロニア様式のホテルで、日に三回ほど専属のマリンバ合奏団が演奏を披露する。かつて6年ほど、筆者はこの道を日々、散歩していた。マリンバの音色を聴きながら。

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